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アタック・ザ・射手の櫓

「我が信者が三名もおれば、なかなか悪くないじゃろう!!」


 ご機嫌で顎を撫でる、古代神エービー。

 一見すると、十歳ちょっとくらいの女の子の姿なので、仕草に違和感がばりばり。


「でもエービー、一人はメイド……」


「頭数にはなるじゃろう!! いいかウニ! やられるなよ! おぬしがやられたらおしまいじゃからな! あと、シュモックもシジミもやられるでないぞ! まだ信者がたった三人なんじゃからな!? わし、また信者減るの嫌じゃぞ!!」


「うん、僕もそのつもり。だけど、こっちから攻めないことにはどうにもならないだろ? 今も、まともに戦えるのがシュモック一人だし」


「そうだな。俺だけでは心もとない。遠距離から戦えるやつがいれば……。そうだ、町に櫓が作られているはずだ。そこに、俺が相手をしたくない奴がいる」


「うへえ、シュモックが嫌がるような相手って」


「凄腕の射手でな……。だが、お前さんが奴を転向させれば、心強くなるぞ」


「なるほど……! それは仲間にしなくちゃね……! そこ行こう!」


「賛成です!」


「賛成じゃ!」


「じゃあ、みんなで気をつけながら行こう!」


 ということで、神官、戦士、メイド、あとオマケの古代神という僕たちの一行が小山を降りていくことになった。

 伏兵に気をつけて、少しずつ下っていく。

 ……なんだ、何か変なものがあるぞ。

 ほんの半日くらい離れていただけなのに、町の様子はすっかり変わってしまっていた。

 具体的には、見覚えのない建造物と、


「あれは厩舎だな。騎馬兵がいるぞ」


 僕の家より立派な神殿と、


「あれはマーダイの神殿だ。信者に加護を与え、強化する連中と、トップはお前さんと同じ転向魔法が使える」


 あとは町の入口に、背の高い木組みの建物……。


「あれが櫓だ。……どうやら、いるな。今から気が重いぜ……」


「いるって?」


「俺が相手をしたくないっていう射手だよ」


 僕はシュモックの言葉を聞きながら、目を細めた。

 確かに、櫓の上には人がいるような……。あれが射手?


「ウニ! ちなみにおぬしの転向魔法は、マーダイのそれよりも遥かに強いぞ! あの櫓も、時間があればわしの勢力として転向させられるじゃろう!」


「建物を転向!?」


「うむ! わしは、人のものはわしのもの、わしのものはわしのもの、という主義じゃからな! そういうのが得意なのじゃ!!」


「ろくでもない神様だってことは分かった。つまり、なんでも横取りできるんだね、この魔法」


「ってことはだ。あいつの攻撃を避けながら、なんとか櫓にとりついて転向できればいいってことじゃねえか! いける、いけるぜウニ!」


 シュモックに勝算あり!

 よし、どうせ避けられない勝負なら、挑んでやろうじゃないか。

 ここは手分けしようという話になり、僕が向かう本命、囮のシュモック、囮のエービー&シジミというルートで攻めることにした。


「行ってみよう!」


「ええ……、わしも行くの? ほんと? わし、神様なんだけど……」


「使えるものはうちの神様でも使うよ!!」


 有無をいわさず、作戦決行!

 僕はこそこそと茂みを掻き分けながら、匍匐前進していく。

 こうやって、体勢を低くして動き回ってれば、さっきみたいに見つからないで……。


 ビュッと風を切る音がした。

 僕の目の前に、矢が突き刺さる。

 一瞬頭が真っ白になった。


「う……うおおおおおおお!? やばい、やばいー!!」


 転がるようにして、僕は近くの木の陰に隠れた。

 その直後、僕が走った後にもう一本矢が突き刺さる。


「なんだよ、あいつ! 最初から僕を狙ってくるじゃん……!!」


 話が違う!

 いや、まさか、櫓の上にいる射手は、僕が神官だってことに気づいて狙ってきているんじゃ……?

 そう思うと、確かにシュモックが戦いたくない相手だって行った理由も分かる。

 腕利きの射手だ!

 初撃が外れたのは、幸運だったんだなあ。


「うぎゃぎゃぎゃ! 撃ってきたぞい!!」


「エービー盾になってよ!」


「なんじゃとー!! メイドが神様を盾にするのかーっ!!」


 あっ、狙われているところが変わった!

 今だ!

 僕は木陰から飛び出した。

 エービーの悲鳴がとても大きいので、聞こえている間は多分安全……!


「ぎょえー! 木の板に刺さったー!!」


 よし、まだ走れる!

 ばたばたと走っていると、また風切り音がした。

 矢が放たれて、今度は、僕の頭の上を飛び越えていく。


「うわ、まだいた! 櫓の上に二人以上いる!?」


 慌てて近くの木に隠れた。

 今度は、矢がぺしぺしと撃ち放たれてくるが、僕が走ったルートより外れた所に降り注ぐ。

 あれ?

 さっきの相手ほど腕が良くないみたいだぞ。

 もしかして、本当に怖い射手は一人なんだろうか?

 そうこうしているうちに、エービーの悲鳴が消えてしまった。

 まさか、やられたか……!

 そう考えて、視界の端に浮かんだ表示を確認した。


『古代神エービー信者数:3』


 よしよし。

 まだシジミは無事だな。

 エービーも多分無事だろう。

 ならば、ここから近づく作戦を立てないとな……。

 隠れた木の周りに放たれる矢の音を聞きながら、僕は考えを巡らせるのだった。

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