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ルール解説と投石戦士

「いいか? 山の中ってのは、数が多いほうが有利とは限らないんだ」


 僕たちの仲間になったシュモックは、体勢を低くするわけではなく、小山の中に点在する木々を遮蔽に使いながら歩いて行く。


「シュモックはさっきまで、マーダイの勢力だったでしょ? それの振りをしながら、不意打ちってできないのかな」


「それは出来ないのじゃ!」


「へ? なんでだよエービー」


「誰が敵で味方か、俺たちはすぐ分かるようになってるんだ。正しくは、ゴッド・ストラテジーが始まると胸の紋章で相手がどちらの勢力に属しているか分かるようになる。これを見れば、どっちの勢力下は一目瞭然。後は、手で隠してみな」


「あ、うん」


 僕は、胸に浮かんでいるエビの紋章を手で隠してみた。

 すると、手の甲を透かして、紋章が輝いたではないか。


「そう、そういう風に、紋章は隠すことができない。こうやって遮蔽物ごしであれば相手には見えないが、向かい合った瞬間、誰が敵なのか味方なのか、確実に分かるようになってるってことだ」


「怖いなあ。じゃあ、暗闇に隠れてても無駄じゃないか!」


「そういうことだ。だが、ちょっと見てろ。俺が離れてみる」


 そう言うと、シュモックは慎重に後ろに下がっていった。

 ある程度離れたら、胸の紋章の光が全く見えなくなる。

 彼は戻ってきた。


「な? 見えなくなっただろ。この紋章が見える範囲というのがあるんだ。これはそいつのクラスによって違う」


「クラス?」


「俺なら戦士。お前なら……えーと、名前なんだっけ」


「ウニ。こっちはエービー」


「ああ、古代神様のことは分かるんだ。了解、ウニ。お前が俺にとっての隊長ということになる。で、クラスは神官だな。エービー様の神官は、信者を増やす力があるようだ。お陰で俺はそっちの味方になった」


「これが転向魔法なんだね」


「ああ。間違いなく勝利の鍵は、その力だな。それから……と、おい古代神様よ。俺にばかり説明させるなよ」


 シュモックは、一見して革鎧を着たいかつい大男なのだけれど、説明も上手いし頭がいいみたいだ。

 でも、流石に説明し疲れたみたいで、横でサボっていたエービーに愚痴を言った。


「よーし、じゃあわしも説明をしちゃおうかな」


 エービーが偉そうにふんぞり返って、口を開いた。

 すると、どこからかヒュッと石が飛んできて、彼女の頭を掠めて行った。


「ヒェーッ」


 うちの神様が、真っ青になってしゃがみ込む。


「い、い、今わしを狙っておったじゃろ!? あれが当たったら死ぬ! いや神じゃから死なんが痛い! 死ぬほど痛い! 痛いのは嫌じゃー!!」


「案の定、おびき出されて来やがったな。エービー様を囮にしてて正解だったぜ」


 そう言えば、シュモックはさっきからずっと、木に体を隠すように動き回っている。

 無防備に突っ立っていたのはエービーだけだ。


「投石タイプの戦士だ。奴らは遠くからもこっちの紋章が見える。手強いぞ! だが、攻撃の手数が少ない。近寄っちまえばこっちのもんだ」


 シュモックが動き出した。

 木を遮蔽にしながら、石が飛んできた方向に動く。

 時々姿を見せて、サッと隠れる。

 前に進むわけじゃない。

 横に動いている。

 それで、何回か射撃をやり過ごした後、どうやら投石戦士のいる場所に目星をつけたようだ。


「よし、行くぞ。あっちだ」


「え? 僕も?」


「当たり前だろうが。見たところ相手は一人、ここは数の力で攻めるぞ」


 僕が隊長なんじゃなかったのか?

 だけど、勝つためだから仕方がない。

 僕は怖いのをこらえつつ、気休めで体勢を低くし、茂みや木々に隠れながら示された方向に近づいていく。


 ビュンッと頭上を通り過ぎていく音が聞こえる。


「あてっ!?」


 あっ、エービーを狙ったのか。

 当たったっぽい?

 確か、撃つまでに時間がかかるんだったっけ。

 この隙に、僕は全力で這い進む。

 どれくらいの距離を進めばいいんだろう。

 茂みからそっと顔をあげると、遠くにぼんやり光るものが見えた。

 あれが紋章……!

 と思ったら、紋章が動いた。

 やばい!

 僕が見えるってことは、相手からも見えるってことじゃないか!

 慌てて僕は横っ飛びに跳んだ。

 さっきまでいた場所を、石が穿つ。


「でかした!」


 そうしたら、シュモックが雄叫びを上げて突っ込んでいくところだった。

 向こうの光が動揺して、動く。

 遠ざかっていく!

 逃げているんだ。

 追いかけているのは、エビの紋章。

 シュモックの方が移動が速い!


「おらあっ!」


「ぐはっ」


 相手を棍棒で殴る音が何度か響き、やがて静かになった。

 僕は恐る恐る、シュモックと投石戦士がもみ合っていた場所まで向かう。

 そこでは、獣の皮で作った投石機を持ったまま、細身の男が倒れていた。

 胸からは紋章が消えている。


「死んだの?」


「いや、ゴッド・ストラテジーにはルールがあってな。人間ってのは信者になり、神様の力を増す存在だから、殺さないんだ。ってことで、こうやって倒されたら……ほれ」


 スーッと投石戦士の姿が消えていく。


「脱落したユニットは、こうしてゲームから排除され、戦場の外に行く」


「ユニット?」


「神々の駒って意味だよ。投石戦士でよかったな。こいつらは小回りは利くが、射手ほどの射程がない。あいつらは厄介だぞ……!」


 シュモックはそう言いながら棍棒を担ぐのだった。

 ともかく、また一つ、ヒョーモンの戦力を削ったことになる。

 先は長いけれど、頑張ろう。

 そう思った矢先だった。


「ウニー!!」


 僕を呼ぶ声がする。

 そこには、エービーを連れたアサリがいた。


「ウニ、あたしも戦う!! だって、これはあたしのための戦いだもん!!」


 そんな事を言ったのだ!

 うわあ、なんだか話がややこしくなってきたぞ……!

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