閑話:5
前回からだいぶ間が空いてしまいました。すいません
もし、読んでいただけていたら幸いです。
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はぁはぁ。肩で息をするとはよく言ったものだ。
リバーナに連れてこられたのは、見知らぬ小さな小屋だった。ぱっと見、いつ倒れてもおかしくない木造の小屋。三匹の子豚に出てきたら一発で狼に食べられるそんな小屋。
目的地に到着してからはずっと。。
はぁはぁ。
ぜぇぜぇ。。
足りなくなった酸素を口から、これでもかと言うくらい大きく吸って吐いてを繰り返している。
もともと、体力に自信はある方だったのだが目的地を知らないためペース配分もままならないまま、小一時間走り続けた。それに、途中顔から盛大にコケた所為で、走る振動が傷に響いて痛かった。
「 おい、リバーナ、お前全然呼吸乱れないのな。てか、汗すらかいてないじゃんか」
俺は大玉の汗を額にびっしりとかき、それを袖で拭ってみせる。脇なんて、まるで滝にでも打たれたかの様な有様だ。むしろ、脇が滝に見えるくらいだ。
「ふん、俺はお前とは作り…いや、鍛え方が違うからな。こんくらい余裕だ」
本当に余裕な様で、腕立て伏せでもしてやろうかと得意げに笑ってみせ、小屋へと入る。
暑苦しいからやめてくれ。それに、喋り方は男の様でも、見た目は華奢な女の子なのだ、ギャップについて行けない。
「そんな事よりよ、そろそろ本題入ろうぜ。」
「お前は何者で、ここはどこなんだ」「俺は現実に戻せって言ったのにこりゃ、どうなってんだ」
「質問が多いな〜」
リバーナは気だるさそうに、俺を見ながら、それでも丁寧に質問一つ一つに回答していく。
「まず、俺が誰かは教えられない。とりあえず、リバーナと呼んでくれ。」
「そして、二つ目と三つ目の解答は簡単だ。」
「ここが、現実だよ。」
「それとここは、俺の家。」
なんもねぇけど好きにくつろいでくれ。そう言いながら、リバーナは俺の顔の前までやってきた。
話し方は男勝りだが、見た目は可愛い女の子。今の今まで、呼吸に夢中で気づかなかったが、部屋の至る所から女の子の香りがする。木造のボロ小屋なのに。
思い返せば、女の子の部屋に入ったのは小学生の頃以来だった。いや、入ったと行っても玄関で宿題プリントを渡したり、更に言えば、その女の子は幼馴染みのユーカだったりして新鮮味がなかった。
くつろぐも何も、目の前に謎の少女がいて落ち着けるわけがない。それに見れば見る程、整った顔立ちをしている。二重が際立ち、まつ毛がクルリと円を描く様にカールしている。それに、瞳の色も左右で違う。右目は紅く左目は紫?そんな色をしている。
シドは目の前の少女をずっと凝視していた事に気付き、急に顔が赤くなる。平静を取り繕おうとキョロキョロと部屋の物色を始めた。
目の前のリバーナと目が合わないよう、辺りを見渡し、小屋の外見はボロかったのに対し、内装は綺麗に纏まっていることに驚いた。
広さは八畳程しかないものの、部屋の真ん中には机があり、花も飾られている。壁には小人が靴を作っている一風変わった絵が飾られていて、部屋全体を見渡した限り程よく生活感のある雰囲気が伺えた。
リバーナから意識を逸らすのに夢中になっていると、走っている時にコケた傷が痛む事に気付き、シドは顔をしかめる。
「傷痛むのか?」「見せてみな」
俺が痛みに耐えている事に気付いたリバーナは、顔の傷に手を添えて優しく撫で出した。
「いやいや、流石にそれは照れるからやめてくれ。」
急な事だったのでたじろぎながら、彼女の手を解こうとする。
しかし、彼女はそんな事お構いなしに目を閉じ、何か唱え出した。
その途端、どうだろうか顔中擦り傷や打撲だらけだった俺の顔があっという間に治っていく。
そして最後には、痛みではなく痒みだけが残った。