表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
手を繋ごう  作者: akira
3/10

キツネの「き」根っこの「ね」

グーをして親指だけ出す、これが「あ」

 


グーをして小指だけ立てる、これが「い」



グーをして人差し指と中指を立てる、これが「う」




、、、







お風呂の時間を使って、彼女に少しずつ教えてもらったが

今思えば特に難しくもない「く」と「け」、「ね」と「む」を覚えるのに苦労した。






指文字のいいところは、聴こえない相手に自分の話をできること。

悪いところは、話したい文字数が多いと大変なところだ。




それも教えてもらって気づいた。








付き合い始めてすぐの頃、同じように教えてもらったことがある。





それは「耳の機械」






バッテリーで動くその「耳」は音量や感度の調節ができ

バッテリーが消耗すると、音を鳴らして知らせたりするらしい。





周りの環境で、バッテリーの減り具合が変わり

彼女は毎晩、「耳」を充電器に差して寝る。








まるで、100万円する高級なアクセサリーのように。









話は変わるが、彼女と話していてよく思うことがある。






例えば、どこかでご飯を食べているとき、電車に乗っているとき

買い物をしているとき、何気なく生活をしているなかで、ふと人の顔を見て





ん?あの人耳に何か付けてる。補聴器かな?でも、そんなお年寄りじゃないし、、、






そんなとき、



すみません。その耳に付けてるの何ですか?



とは聞きにくい。





それが、彼女と付き合い始めてすぐ

彼女の「耳」はどんな作りをしているのか疑問で仕方なかったので聞いてみた。






その耳のやつ、どうなってるの?





彼女は一瞬、不意をつかれたような顔をして詳しく教えてくれた。






違うんだ。

「耳」にも興味があるけど、その「耳」をつけてる彼女の世界観が好きなんだ。






お風呂が無音、パチンコ屋が無音、夜中に時計の針が進む音が聞こえない

そういう世界を僕は知らない。









そして、夜。





彼女は真っ暗な世界にいる。





夜盲で、何も見えていない彼女の瞳は、澄んでいてとても綺麗。






好きな人を助けたい。




俺はそうじゃない。




好きな人と生きていきたい。




そのために、彼女が驚くくらい勉強をしてみせる。






この、目の難病の厄介なところは視野が狭くなっていくところ。




それも少しずつ。






この前ねー!溝に落ちたのー!



今日ねー!車にひかれそうになったんだよー!びっくりしたー!





いやいや、死なれちゃ困る。





一緒にいて、いろんな世界を感じさせてくれる本当に楽しい彼女だ。









次回に続く

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ