表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

林間学校の夜は長い

「もー、遅いよ葵。どこ行ってたの?」

 ハルに言われて。

「わりー、カブトムシが飛んでたから捕まえようとしたんだけど、全然捕まらなくって... 」

「小学生男子か、あんたは。もうカレー出来上がるよ。」

「はーい。」

 へらりと笑って返事してーー幽霊っぽいもの見たよ、と言おうかどうしようか少し迷い、やめた。

 絶対面白がられるだけだ。

 ちなみに勇と翔には、どう伝えようか考えた末、「この辺幽霊が出るらしいから気を付けて」とだけ伝えた。

 自分がそれらしきもの見ました、というのは、幽霊にびびって捜索辞退したのがバレたら嫌で、言うのをやめておいた。

 単に見違えかもしれないしねっ。


  

 カレーもご飯もなかなかの出来だった。

 片付けをして、皆でお風呂に入って、布団を敷いて。

 しばらく皆の恋バナとか聞いて過ごしていると、窓の方からコンコンと音がした。

「なっ、なんだ?」

 思わずビクッとしながらそちらを見ると、何やら人影が。

 一瞬怖かったがーー夕方見た女の子のような、あの存在感は感じない。

 窓の鍵を開けてみると。

「よ!」

「ーーなんだ、お前らか。」

 そこにいたのは、クラスの男子二人だった。

「うちのクラスの部屋みんな一階だから、おたがいこっそり行き来できちゃうぜ。先生たち、廊下しか見張ってねー。」

 声を落として、一人が言う。

「葵も探険しにいかね?」

 その響きに、正直心は動いたのだがーー

「ーーあたしはいいや。」

 脳裏によぎったのは、もちろん夕方の女の子で。

「なんだよー、お前はのってくれると思ったのにー。あ、他には誰か来るー?」

との誘いに、何人かの女子が行ってみることになった。

「アリバイ工作はしとくから。気を付けろよー?」

 同室の女子に手を振って窓を閉めると、

「意外ー。葵、ああいうの行きそうなタイプだと思ってた。」

と、ハル。

「うーん、探険は楽しそうだけど、夜はほら... 蚊も多そうだし。むしろ、出てったあいつらちょっと意外かも。」

「あの子達はねー、探険より好きな男子めあてかもねー。」

「え、そういうもんなの?」

「あんたはどうなのよー? 男子の部屋行ったらケンジが喜んだかもよー?」

「はぁ? ケンジ? なんのことだよ?」

 話しながら、せっせと荷物を空いた布団のなかにつめ、人がいるような形を作る。

 こんなもんか、と、ごろりと自分の布団に横になるなり、

「入るぞー、ちゃんと寝てるかー?」

と、先生の声。

「寝てまーす。」

「もう寝まーす。」

と、口々に言っていると、そっと廊下側のドアが開く。

「ちゃんとみんないるか?」

「いますよー。寝始めてまーす。」

 言いながら、あたしは布団の中から足で隣の布団の荷物をつつき、人が動いたように見せかけた。

「よーし、明日は登山だから、しっかり寝ろよー。」

「はーい。」

 良い子に返事をしながら、こりゃまずいなーとあたしは思った。

 ここはごまかせたけど、この調子だとそのうちどこかでバレるんだろうなぁ...



 案の定。

 一時間後ぐらいに男子部屋の一つで、部屋人数より人が多いのがばれたらしく、抜け出し組は全員捕まって説教コースとなったようだった。

 更にお調子者がペンライト片手に押し入れから天井裏にのぼり、説教部屋を偵察に行ったところ、天井板を踏み抜いて、今度はそいつが説教を受けたらしい。

 ... 忍者かお前は。ペンライト持ってきてた時点で何かしらやらかす気だったな?

 正直、天井から足が生えてくる様子は見たかったが、先生は最後半泣きで怒っていたらしいので、さすがに同情を感じずにはいられない。

 あまりに色々あったせいか、アリバイ作りで荷担した生徒は咎められることはなく、あたしは怒られている子達が戻ってくるのを待たず、眠りに落ちていた。

 勇と翔、オオカミちゃんは見つけられたかなぁ、と思いながら。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ