いざ、尋常に勝負
すっげえヤル気満々に見えるスケルトンではあったが、あたしは一応チャレンジしてみた。
「そうやって歩けるなら、とりあえず一緒に日本に帰ろうぜ? あっちで供養してもらえるように段取りしてやるから。」
がしゃり、がしゃり、がしゃり。
完全に、槍や刀をこっちに向けて構えている。
うーん。
「まぁ、さっきやりおうたばかりやしなぁ。」
「ダメかー。自分で歩いてくれるなら便利だと思ったんどけどなぁ。」
仕方なく、身構える。
がしゃり、がしゃり、がしゃり。
「あの刀とか槍とかさぁ、斬れると思う?」
「何百年手入れしてへんとはいえ、斬れんでも鉄の棒やからな。当たったらあかんで。」
「じゃあ、間合いに入る前に。」
あたしは、手に貯めたエネルギー波をスケルトンに向かって放った。
さっきやられたのを覚えているのか、スケルトンは各自散り散りに避ける。避けきれなかった一体が当たり、骨が崩れ落ちた。
避けたところを勇が狙い打ち、更に二体撃破。
そうこうしているうちに、槍を振りかぶった先陣が迫る。
武器の間合いなんて知らない。
あれは後ろに退いて避けきれるものだろうか。
いやーー
あたしは両手をクロスして、前方に飛び込んだ。
拳に込めたエネルギーが槍を振りかぶっていたスケルトンの体にぶち当たり、粉砕する。
そのまま飛び込み前転の要領で転がって受け身をとると、両側から別のスケルトンが刀を振り上げる。ーーそのままもう二回転前転。
しかし、あたしが前転して避けるまでもなくその二体は勇の援護射撃ではぜ飛んでいた。
あたしの視界の外でも勇が何体か倒していたらしく、立ち上がって見ると残りはあたしの右手前方に二体、左手前方に一体。
あたしと勇に挟まれた形で、彼らには動揺して隙が生まれた。
あたしが視線を右に動かすと、勇は左の一体に手を伸ばす。
あたしが右の二体を薙ぐようにエネルギー波を撃ったのと、勇が左の一体を粉砕したのはほぼ同時だった。
ふぅ、と息をつき、あたしは手近にあった陣笠を拾い上げてあたりを見回した。
もともと風化しかけだったのか、あたしたちの攻撃を受けた骨はひどく脆く、粉々になっていた。
そのなかで小石ほどの大きさをとどめた物を、いくつか拾い上げて裏返した陣笠に貯めていく。
「何しとるん?」
勇が怪訝そうに尋ねる。
「いや... 一部でも、元の世界に帰してあげようかなって。」
全員分拾えるかわかんないし、自己満だけど。
「... なるほど。」
言って、勇はあたしがまだ拾っていない辺りの骨の欠片をいくつか拾い上げ、あたしの抱えた陣笠に入れた。
「さんきゅ。」
「埋めるんやったら、土掘る用に刀も一振り持っていくか。」
ひょいと刀を拾い上げて歩く勇に続いて、翔たちの所に戻ると。
「お前らさ。」
翔が冷めた目であたしたちに言った。
「うん?」
「全員外に出て来るまで悠長に見てねーで、洞窟の中にいているうちに攻撃しちゃえば早かったんじゃねーの?」
... ...
確かに!とも思ったが。
合理的過ぎる奴は可愛くない。けっ。
そこへ。
いくつかの足音が近づいてきて、あたしたちは明かりに照らされた。
「ーーリュー!?」
明かりを持った人影の一つが声をあげ。
「お父さん!!」
弾かれたような勢いでリューがその腕の中に飛び込んだ。