黒モヤの正体
見つかって良かったという気持ちと、やっぱり亡くなっていたことへのショックと。
複雑な気持ちで、あたしたちはしばらくサキが泣いているのを黙って見ていた。
サキ本人はどうなんだろう。
しばらくして、口を開いたのは勇だった。
「さて、どうやって連れて帰ったらええんやろ?」
「I山に連れて帰って適当な所に置いて、葵達が偶然見つけたってする... とか。」
翔が口元に手をあてて答える。
「一つ一つ拾う... ?」
それは、なんか、怖いっていうか... いや、でもサキのためなら...
「アイテムボックスでどうにかならないかな。下手に触って壊したら大変だし。」
翔がブレスレットを操作しながら洞窟の中に入って行ってーー
「うわっ!」
「どうした!?」
あたしと勇は洞窟に駆け込んだ。
翔は、サキの体の更に奥にいた。
まだ地下へと続くその洞窟の奥には、十数体はあろうかという人骨が転がっていた。
「... 陣笠?」
勇が、朽ちかけた円錐形のものを拾う。
「日本刀もあるな... 」
そう。
それらの人骨は、胴当てなどの鎧を身につけ、日本刀や槍を装備した、戦国武者のような出で立ちだった。
「足軽あたりか。本隊からはぐれてゲートに迷い混んだんかな。」
「そんな昔にも... ?」
「じーさんが言うててん。あの山とこの人狼の世界は、繋がりやすい磁場らしいて。」
今と、二十年くらい前と、そして何百年か前と。
... とりあえずどうしようこれ。
なんかちょっと事態が大きくなりすぎて呆然としていると。
「葵っ!」
洞窟の外で待っていたケンジが、声をあげた。
しまった、戦えるのが二人ともこっちに来てしまった。
慌てて洞窟から飛び出す。
「サキがーー」
リューを抱き上げたケンジが、サキから距離をとっていた。
そのサキからにじみ出て来ているのは、あの黒いモヤ。
「何か負オーラなことあった!?」
「いや、何もないのに突然... !」
ぶわっと、黒モヤがサキから離れて洞窟へ飛んだ。
ワレラノ カラダ...
「ーーあいつら、あの足軽小隊かっ。」
言った翔が足を止めて振り返り、サキの体に向き合い、そしてすぐ戻ってくる。
「しまえた?」
「たぶんな!」
訊いたあたしに、翔はアイテムボックスを示して見せた。
サキの体が写っている。
黒モヤが全部出ていったサキは、へたりと地面に座り込んでいた。
「大丈夫!?」
「大丈夫... あの人たち、私の中にいたんだ... 」
「それが、体がどうとか言って出ていったってことはーー」
あたしは洞窟の方へ振り向いた。
嫌な予感しかしない。
がしゃり、と、洞窟の奥から音がした。
「翔、ケンジたちを頼む。」
「言われなくても。」
がしゃり、と、それは姿を現した。
「和製スケルトン... 」
既に張られたバリアの向こうで、ケンジが息を呑む。
あたしと勇は、十数体の武装したスケルトンと対峙した。