レッツ捜索
あたしたちは翔の転移で人狼の世界とのゲートの前までやって来た。
幽霊のサキも一緒に転移できるか謎だったが、案ずるより産むが易し。できるもんだなぁ。
ちなみにケンジは何か諦めの境地な顔していた。
「一回バリアで閉じておいたんだけどーーじゃあ、開けるぞ。」
翔が、何もない空中に手を伸ばす。
「何やってんだ? あれ。」
「見えないけど、あそこに異世界とのゲートがあるんだって。」
ケンジに訊かれて答えていると、
「開いた。行くぞ。」
言って翔が、消える。
その後を、リューが尻尾振ってついていって、やはり消える。
「ほれ、行くで。」
最後尾の勇に追いたてられるように、あたし、ケンジ、サキが続いた。
地面の感触が変わった。
I山は腐葉土だったが、こちらは硬い地面。
木々は繁っているのだが、木の種類は異なるようだ。
向かって右手には岩肌。
「こっちだよー。」
自分の世界に戻れたのが嬉しいのか、無邪気な声でリューが言う。
「ここ... 来たことある... 」
不安そうに漂いながら言ったのはサキだ。
「ずっと同じような山だったのに、急に景色が変わって... でもやっぱり木ばっかりで... 」
「そっか... 」
それは本当にここにいるだろうってことでーーそれはそれで、気が重くもあり。
「いっぱい歩いて、疲れて、お腹減って、そしたら雨が降ってきて... 」
サキの独白を聞いているうちに、前方でリューが足を止めた。
洞窟の前だった。
「ボク、お父さんと薬草狩りに来てて... 一人でいっぱい先に行っちゃって、たまたまここの洞窟見つけて。それで入ってみたらーー」
リューはサキの方を、しょんぼりしたような表情で見つめ、続ける。
「人の骨が見えて。怖くてビックリして、走って逃げたら、いつの間にか見たことない山の中にいて... 。あのとき見た服、今サキちゃんが着てる服みたいだったと思う。ボクらの村じゃ見たことない模様だったから。」
サキの服は、英字が書かれたティーシャツにチェック模様のスカート。
「そう... 洞窟で雨宿りして、そのまま何日か誰かが助けに来てくれるのを待ってた。でも... 」
サキはふわふわと洞窟に近づいた。そして。
「ーー私だ... 」
ポロポロと涙をこぼすサキを、あたしはそっと抱き締めた。本当に抱き締めると腕が通り抜けちゃうので、サキの体の辺りで空間を作りながら。
洞窟の中には、すっかり色褪せ土ぼこりで色の変わったティーシャツとチェックのスカートを身につけた白骨が、横たわっていた。