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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

勇者に勝てない魔王

作者: 月夜 梨花

 (……我は魔王である。世界を我が物にするのが、我の野望だ。

我が復活すると数ヶ月後、必ず勇者が攻め込んでくる。邪魔でしかない、あのにっくき勇者め。

我は死んでも、1年すれば復活し、その度に勇者に殺される日々。戦績は覚えてないがかなり敗北した。

……何故だ!? 何故負ける!? 我は1億をも魔物を従える魔王で、勇者どもは、たった4人のパーティなんだぞ!? いつもいつも、あの伝説の装備やら武器やらで殺されて……そうか! アレがあるから、我は敗北するのだ! アレさえなければ、我は完全勝利、間違いないぞ!! そうなれば、我が復活する前に策略を練っておかねば……)

 

☆★☆


 ──そして、半年前に殺された魔王は復活の時を待ちながら、闇の奥深くで策略を練った。勇者を殺して、世界征服をするために。


「魔王! ふっかーーーつ! ふはははははは!」


 魔王は復活し、意気揚々と闇の城に帰ってきた。

(今回は負けぬぞ! 何故なら、伝説の武器、防具を壊すのだからな!)

 ご機嫌で、両手で大きな扉を力いっぱい押し開けた。大きな破壊音をたて、扉は崩れ去った。

 その音に驚く様子もなく1人の人物が開いた本を片手にこちらを振り向いた。

 二本の角を生やし、全身は黒い毛に覆われ、見た目は羊。四角いスクエア型のメガネをかけている。人間と同じように立って、魔王を見るなり本を閉じ深々と頭を下げた。


「お久しゅうございます。魔王様」

「おお! バフォメット! 久しいな、元気にしておったか?」

「ええ、元気にしておりましたよ。それよりも扉の破壊はやめてください。経費がいくらかかるとお思いで?」


 はぁ……と、バフォメットはため息をつきながらメガネを左手でかけなおした。


「まぁ、そんな堅苦しいことは言うな! それよりも喜べ! 勇者共に勝てる方法を見つけたぞ!!」

「そう言って何度負けたのか覚えてらっしゃらないのですか?」


 魔王は、ドヤ顔で答えた。


「覚えておらん!!」

「はぁ……19.999戦中19.999敗ですよ」

「おお! それは惜しいな。わざと負けて2万敗にするか!」


 ふはははははは!と高笑いする魔王に対して冷静にバフォメットは言う。


「しないでください。……で、方法とは?」

「伝説の武器、防具を破壊する!!」


 バフォメットは、頭を抱え、はぁー……と深くため息をついた後


「馬鹿ですか貴方は」

「魔王に対して馬鹿とはなんだ! 馬鹿とは!!」

「我らでは壊せず触れられない。毎度隠し場所が代わり、情報は限られた人物しかおらず行方不明。それをどう探すと言うのですか?」

「それには策がある!」

「ほう? 愚蒙(ぐもう)な魔王様に策があるとは思いませんでしたよ」

「ぐもう? うまいのか?」

「それはそれはとても美味しいですよ」


 バフォメットは微笑んだ。


「そうか! 今度それを食事に出せ!」

「畏まりました。……で、策というのはなんでしょうか?」

「それはだな、我が冒険者の酒場へ行き、仲間を引き連れて探し出し、回収するのだ!」

「なるほど、では参りましょうか」

「うむ!!」


 魔王は、意気揚々と歩いて行く。

バフォメットは、そんな後ろ姿を見ながら小さな声で言った。


「……魔王様に人間の仲間が出来るとは思いませんが……」

「何か言ったか?」


 純粋な顔でくるりと振り向く魔王。

バフォメットは、ニコリと笑う。


「いいえ、魔王様、何でもありませんよ」

「そうか!」


 ご機嫌で魔王はまた歩き出した。


☆★☆


 2人は、古びた酒場に着いた。

掃除は行き届いているが、机やカウンターが古い。

ダンディな男が店を切り盛りしているらしく、古臭いものの、良い味がある店だ。

 魔王はバーン!!と勢いよくドアを開けた。

今回は、加減したらしくドアは壊れないものの音が騒がしい為に

冒険者たちが一斉にドアの方へ視線を向けた。


 ドヤ顔の魔王。

冒険者たちは『なんだこいつ』と思い目を逸らし、酒を飲み食べ、いつも通りの雰囲気に戻った。


 魔王は冒険者が同じ丸い机に座っているのを見つけ、ドカドカと音を立て、その場へ向かった。

 魔王と冒険者3人組の目があった。

 冒険者たちは思った。『あ、これ面倒なことに巻き込まれそう』と。


「おい! お前ら! 我の仲間になれ!!」


 冒険者たちは思った。『いきなり何言ってんだこいつ』と。


「は?」

「何度も言わせるな! 仲間になれと言っているだろう!」

「お断りします」

「我の命令が聞けぬというのか!?」


 冒険者たちは『めんどくせー……』と思いながら

その場を離れて行った。


「おい!? 待て!! おい!!」


 バフォメットは予想通りだったようで、とても楽しそうに笑っている。


「バフォメット?」

「おっと、魔王様、失礼しました」


 魔王はバフォメットを睨みつけ、バフォメット笑うのを止めた。

 周囲を見渡す。他の冒険者たちは、さっと目を逸らした。


「……」


 普段察しない性格の魔王が流石に察した。

『あ、これ、何か間違ったんじゃないか?』と。


「……バフォメット」

「はい」

「……行くぞ」

「畏まりました」


 違う酒場へ行こうと決め去る魔王。

その後に着いて行く途中で、カウンターにいるマスターに


「お騒がせしました。お詫びにお受け取り下さい」


 と、バフォメットは、面白いものが見れたと嬉しそうにお金を置いて酒場を後にした。

 クックックと意地悪そうに笑うバフォメット。

 自分の欲求が通らず、子供のように不機嫌な顔をしている魔王。


「人間は信用できん!!! もういい!!! 根絶やしにしてくれるわ!!!」

「戦争ですか?」

「それしかないに決まっておるだろうが!!」

「畏まりました」


 戦争宣言をし、魔物達が世紀末のように暴れ回る。そんな折にとある神々に愛されし少年が仲間を引き連れやってきた。

 ──伝説の武器、防具を着て、とても勇敢そうに。


「クックック、よく来たな勇者よ。貴様らの墓場はここだ!!!」


☆★☆


「倒したぞー! これで平和が訪れる! みんな帰るぞ!」

「「「おー!」」」


 勇者たちは喜んで去っていった。

うつ伏せで横たわる魔王。自身の血の水溜りに浸かっており、全身の痛みと徐々に意識が薄れていく感覚。

 ──ああ……また我は……死ぬのか……。


「…………」


 無言の魔王に対し、姿が見えなかったバフォメットの足元がかすんで見えた。

バフォメットはしゃがみ込み、意地悪そうな笑みを浮かべ口を開く。


「魔王様、とても無様で素敵ですよ。クックック……またお会いできる事を楽しみにしております」


 ──最後のかけられる言葉は必ずそうだった気がするが、もういい。こいつの性格の悪さはよく知っている。忌々しい勇者共、覚えていろ。必ず貴様らを地獄へ叩き落してくれようぞ……。

RPGでよくいる魔王が何を考えているのか?を考えた結果がこれでした。魔王バカなんじゃないですか?(クスクス)あれ……?こんな夜更けにチャイムが鳴って……(死亡フラグ)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 魔王が死に戻りを繰り返し、強くなるというのは…… 案外、誰も目をつけなかったアイディアなのではないでしょうか。
2016/09/13 19:33 退会済み
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