獣人と服と首輪
さて、どうしようか。
竜人のままでいるのはいろいろと支障が出るから種族を変えたいけど、獣人か犬か。普通に考えれば人型の獣人、けどこの街の獣人の扱いがどうなってるかはわからない。人間と同等の立場とは限らないからね。
いっそ人を殺すってのも選択肢の一つかもしれないけど、わざわざ騒ぎを起こすようなこともしたくないしね。
考えてても仕方ないな。結局のところ獣人しか選択ないみたいだし、多少のリスクは負わないとね。
というわけで、ジョーカーさんお願いします。
・・・ちょっといろいろ考えてなさすぎだったかな。
種族の変更って簡単に使えるもんじゃない。なにせ少しの間気絶してたっぽい。ほんの少しだけど安全なとこじゃないと無理だね。それ以外はペナルティはないみたいだけど。
そんなわけで危なげながらも種族の変更できましたよ。頭に耳とお尻のあたりに尻尾が生えてる。この尻尾結構自由に動かせるね。もともと自分になかった部位でも自然に使えるのはよく分かんないね。
あと、耳は見えないけど尻尾が猫みたいに細長い。
髪の毛の色は黒が基本で前髪に白が混ざってるようだ。尻尾は先っぽの方だけ白で他は黒。
体型は全然変わってないけど、これだけ変わればさすがに私だってわからないでしょう。白色が混じってるからバレるかもしれないけど。
あ、宿屋どうしよう。まあ、もう一度行ってバレれば何とか言い訳をして通そうかな。
まあ、それは置いといて。どうして私の首に首輪がついてるのかな?受取可能なはずの奴隷の首輪が受け取れないから、この首輪がそうっぽい。
しかもこれって奴隷用のはずだよね?なんで鈴がついてるのさ。奴隷=ペットって扱いなのかい。外そうとしても外れないから、ほっとくしかなさそうだな。奴隷からの解放を使えば何とかなるかもしれないし。
とりあえず服をどうにかしよう。このワンピース型の服じゃ尻尾との相性が悪い。なにより奴隷っぽさがあるからね。
そんなわけで大通りのほうまで来たけど、やっぱり快適だね。奴隷に対しての扱いがそこまで酷くないのか、私に対して基本無関心だ。獣人ってことも大丈夫そう。ゆっくりと周りを見ながら歩けるよ。
あそこの服屋とかいいんじゃないかな。そこそこ人も入ってるし、獣人の人も入ってたし。外から見えた服も可愛かったし。思い切って入ってしまおう。
・・・服屋に入った私は、いつの間にか着せ替え人形となっていました。何がどうしてこうなったと言いたいとこだけど、これは私にも原因がある。
私はあまりセンスがいいとは思わないし、この世界の普通の服ってのはよくわかんない。だから店員さんに声をかけたのさ。
「すみません。服一式を見繕ってもらえませんか?」
「ん?あなた奴隷みたいだけど、主人はどうしたの?」
「あ~、えっとですね・・・私のご、ご主人様は自由な方みたいでして、お金だけ渡されて一人で買いに来たんですよ」
「へー、変わった人ですね。奴隷一人にさせるだけならまだしも、こんなかわいい͡娘をそばに置いておかないなんて」
「へっ!?あの、えーと・・・」
「ああ、服一式ね。選んであげるからこっちにいらっしゃい」
「ん~・・・やっぱりこのきれいな髪にはこっちの服のほうが似合うかな」
と、いまだに悩んでいる店員さんに褒め殺されて、顔を真っ赤にしてる私が出来上がってる状態です。
私は途中で思考を放棄して、目の前にある姿見で「あ~、今の眼の色って赤色なんだ~」とぼんやりと考えてたりもました。
「よしっ、やっぱりこれが一番ね!。どう?あなたが動きやすい服でって言ったから、可愛くするのはそこそこになったけど」
気づけば選び終わったみたいで、私に感想を聞いてきた。
動きやすい服は冒険者っぽい服と解釈したのか、革製の丈夫そうな服でかなり動きやすい。ズボンには穴が開いてて、そこから私の尻尾が出てる。さっきまで履いてたサンダルの代わりに、しっかりとした靴がある。
「はい。動きやすくて良いですね。ありがとうございます」
「いいのよお礼なんて。私も久しぶりに楽しませてもらったし。で、値段なんだけど。今着てるのと下着が数着で、銀貨十五枚ね」
やっぱり服を買うと出費が痛いな。あの時もらったお金は大銀貨四枚と銀貨十枚だ。銀貨は十枚で大銀貨一枚分だから、大銀貨五枚分をもらっている。
まあ、これは必要経費と割り切って払おう。
「じゃあ、大銀貨二枚でお願い」
「大銀貨二枚ね。お釣りは銀貨五枚になるけどいいかしら」
そう言って私は、お釣りを受け取る。なんで細かく出さないかというと、さっきの店員さんの言葉みたいに、大銀貨をよりも銀貨の単位で売買するから銀貨のほうが使い勝手がいい。
「また来てねー」
そういう店員さんの言葉を聞きながら、私は服屋を出た。
ああ、一応前の服は持ってるよ。今の服は完全に獣人モード専用だから、人間になれた時にとりあえず着る用として。
私は新しい服が嬉しく、軽くスキップして首輪の鈴を鳴らしながら町の探索を再開した。