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超短編2

テストのあとのこの気持ち。

作者: しおん

「あーもうできなかった、くやしー」


 手をバタバタと動かし感情が行動として露になっている様子から、言葉と感情が一致していることがよくわかる。何をそんなに悔しがっているのかって?それは夏休みと言う極楽を邪魔するテストの出来についてだ。冒頭の言葉は友人の紗江(さえ)のもの。私の結果も紗江と大差ないものであるのだが、不思議と悔しさは感じられなかった。


美夜(みや)はどうだった?」


 美夜、それは私の名前である。


「どうもないよ。いつも通り全然ダメ」


 そう、だめだった。

 ダメダメだった。

 なのにどうしてか悔しくはないんだ。


「えーうっそだー。余裕そうなんてすけどー?」


 不満を垂れる紗江には申し訳ないけれど、できていないのは事実だ。だから嘘なんてついていない。


「いやー、出来なかったんだけどさ悔しくはないんだよね。何故か分からないんだけど」


 私自身、自分の感情に驚いているのだからどうしようもないだろう。こんなに悔しくないのは初めてだ。


「悔しくないなら、なんなのさ」


 紗江の言葉にはっとする。

 悔しくないなら?いつもと違うこの感情は悔しさでも、悲しさでも、怒りでもなくて......。


 羞恥。


 どうしようもなく恥ずかしいのだ、できなかったことが。なぜ。どうして。今回に限ってこんなにも恥ずかしいのだろう。感情を自覚してしまった今、顔はきっと赤く染まっている。


「みやー?」


 急に黙ってしまった私を不審に思ったのか紗江は声をかけてくる。だが今の私には紗江にあわせる顔なんて持ち合わせてはいなかった。だから言葉を返すことすらまともにできない。


 だって恥ずかしいのだ。

 悔しがることすらできない私のテストへの努力が。悔しいって思えるほど本気で取り組んでいなかった私自身が。



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