EX06「はぐれエルフ 家に乗り込む」
「……ふむん。どうにも表情が暗いね」
「ちょっと、ショックなことがあってな」
合流場所にたどり着いた時、少女は木の椅子に座っていた。彼女は手に持っていた小さな本と椅子を虚空に仕舞うと、足元に追いてあった籠を持ち上げて差し出してくる。
「何があったのかは知らないけど、これでも食べて元気を出しなよ」
植物を編んで作ったらしい籠。
なんとなくそれ受け取ると、その中には四角に切られた物体があった。何やら具材が挟まっているので食べ物だとは分かるが……食い物かこれ。
道中彼女が食べていたものに似ていて興味をそそってくる。
朝食は食っていたが、嫌な気分を紛らわすためにも頂くことにするかね。
「……お?」
白いのはパンか。中には挟まれていた薄切りの肉と、シャキシャキとした青い野菜の触感がする。それらに挟まれていたらしい白いソースは、滑らかに調和して俺の舌をいとも容易く蹂躙してのける。
「う、美味すぎる……!」
はにかむ少女の前で、俺は残りにがっついた。
「手抜きだったんだけど。そっか。味覚もほとんど同じなんだったっけ」
これで手抜きとか、本気を出したらいったいどうなるんだ? しかも食ってみれば全部具が違っている。凝ってるだろこれ!
「お、これはなんだ?」
「ツナマヨだね」
「へぇぇツナマヨ……聞いたことが無いなぁ。あ、これは卵か」
「そんな慌てて食べなくてもいいよ。バイト中はボクが三食きっちり面倒をみて上げるつもりだからさ。その分しっかりと働いては貰うけど……いいよね?」
「こ、こんなのを毎日食えんのか?」
「うん? まぁ、そうなるかな」
なんでもない風に頷くテイハさんである。
俺は思わずゴクリと喉を鳴らした。道中で見たベントーやらお菓子やらも気になっていたのだ。だが真に驚くべきところはそこではなかった。
「てか、お前が作ったのかこれ!?」
「まーね。その代わり君たちには、アーティファクトのテストをやってもらうぜ」
よく分からないが、食事の心配はこれからしなくても良いようだ。
「というわけで準備だ。その悪魔を寄越したまえ」
「お、おう」
『妾、また強引に何かされてしまうのかのう?』
「仕様をちょっと変えるだけさ。術式をミスって死んでもボクは謝らないけど――って、やっぱり気のせいじゃない! まだ臭うぞ!」
剣を渡そうとしたところで鼻を摘まれた。
「え? ちゃんと汗を流してきたぞ」
「いいや臭う! これは適当に済ませる出不精な奴の匂いだ!」
おおう、適当なところは否定できないけど、地味にクるな。
今ならイシュタロッテの気持ちが分かりそうだぜ。
「もしかしてアレかな。風呂好きかそうでないかっていう文化の違いからくる奴。えーとフェロモンがどうたらだったっけ?」
「なんだか知らないけど、どこかの川で水浴びでもしてくればいいのか?」
「ばっかもーんお風呂に入れ! ええい、こうなったらそこから改善してやる!」
次の瞬間、俺は立っている感覚を失った。
気が付けば、俺は見知らぬ場所に居た。
一瞬、立っている感覚が消えたのでビビッたが、それよりも今自分が居る場所の方が恐ろしかった。初めは崖かと思って見下ろしたら、下に雲が見えたのだ。
振り返れば家が一軒だけ立っている。
なんぞこれ。
「空の上に家があるってなんなんだ」
混乱し、驚愕し、そしていつの間にか足が震えた。
偉い人というのは大抵高い場所に居るもんだ。
リスベルク様だって、よく見えるように玉座の上に居たりしたしな。それから考えるとだ。高すぎるほどに高い場所に家があるってのはとんでもないことじゃあないですかね?
『これはまたえげつないのう。地脈でも無いのに魔力にあふれておるし、馬鹿みたいな強度の結界で覆われておる。挙句の果てに家にはびっしりエンチャントとは……』
悪魔様が感嘆の声を上げなさる。その向こうでは、何か家の前で光る板みたいなのを弄っている少女が居た。
こっそりと近づいて見るが、やはり文字がさっぱり分からない。
「なにやってんだ」
「防犯システムをちょっとね。あ、ちなみに君の家も用意しておいたから」
なんとはなしに指を刺された方向を見ると、黄色いかまくらみたいな半円形の物体があった。ただし、そいつは何やらロープが地面に打ちつけられて固定されている。
家を見たせいか、そのサイズ差に言葉が出ない。
正直、家畜小屋の方がデカイだろこれ。
「なんだい。まさか女の子の家に止めさせろなんて言うつもりかい?」
「や、まぁ……野宿でもいいけどさ」
というか、あるばいととやらや住み込みの仕事なのか?
何にしても謎物体だ。これも検分しておくとしよう。
近づいてみるが益々分からん。触ってみるとやはり不可思議な感触がした。表面はツルツルだ。しかし雨露はしっかりと凌げそうな素材。ただし強度に不安がある。というか、布地が薄すぎる程に薄いのだ。一体何なんだこれは。
「テントの中にはちゃんと寝袋と毛布も用意してあるぜ」
「どれどれ」
何やらジッパーなるもので入り口を開閉できるそうだが……おお? 狭いけど確かに寝られそうだ。中には寝具らしき物体が用意されていて、すぐにでも寝られるようになっている。ははーん。昨日言ってた準備とやらはこれか。以外に気が利く奴だな。
「おっと、寝るのは夜にしてよ」
そうして、俺はテイハの家へと案内された。
ゴウン、ゴウンと奇妙な音が聞えてくる。
入り口のドアの向こうでは、洗濯機なる物体が煩く動いているのだ。
服を洗濯するためだそうだが、俺が想像する洗濯と同じなのかが激しく疑問だ。
しかし相手は自称神にして人。またぞろ俺を驚かせてくれるに違いない。
「……あいつと出会ってから、驚かない日がないな」
この家はおかしい。
あいつの存在も多分おかしいが、とにかくこの家にあるものすべてが狂っている。
何故、スイッチとやらを押すと明りが付く?
どうしてレバーとやらを上げれば、蛇口ってのから綺麗な水が出るんだ?
しかもレバーを弄ると場合によってはお湯まで出てしまう。
摩訶不思議の極みだ。
ロロマ帝国の宿や、森の家なんかとは比べ物にならない便利さだ。
いったい、あの少女は何なんだろうか。
本当に俺が知っている短い耳族<にんげん>と同じなのだろうか。
そもそも造物主的な神で人間って、その二つは両立するのか? もう本当に神様でいいんじゃないか。世界を作れるって言われても今なら信じられそうだぜ。
「湯加減はどうだい」
「あ、ああ。ちょっと熱いけど悪くないぞ」
無理矢理シャンプーやらボディソープやらを使わされたり、湯船に放り投げられた時はどうしたものかと思ったが悔しい。中々どうして気持ちいいじゃあないか。
それになんだか肌がスベスベする気がする。
これが風呂とやらの力なのか。
「着替えとタオルを置いておくから、適当なところで出てきなよ」
「ア、アッシュゥゥ! わ、妾はもうダメかもしれぬぅぅ!」
突然に湧く悪魔の悲痛な声。
「イ、イシュタロッテ? ちょ、大丈夫なのか本当に!」
「あ、まだ動いちゃダメだってば。やっつけ仕事だから危な――」
「もう嫌だ! 妾は故郷に帰らせてもらう!」
「だが断る! 貴重な実験サンプルを逃がすものかっ!」
そしてどたばたと音が聞こえた。
きっと必死の抵抗劇が繰り広げられているのだろうが、可哀想に相手が悪すぎるぜ。
「ひ、ひぃぃ! 離せ、離してくれい!」
「まったく、こうなったら一度に書き換えてやる!」
「ひぎゃぁぁぁ!!」
曇りガラスの扉の向こう、悪魔の断末魔の如き叫びが木霊した。
何をされているのかは分からないが、きっと碌でもないことに違いない。
あいつもあいつで裸に引ん剥かれて何かされてたからな。
「そういえば、後で俺に予防接種をするとか言ってたが……」
俺もあんな目にあうのだろうか。
脳裏を過ぎった嫌な予感は、当たらずとも遠からずであった。
風呂を出たあとに用意された服を着て出て行けば、髪を乾かされてすぐに腕に何かを当てられたのだ。そしたらプシュッと音がして、すぐに酷く気分が悪くなってしまった。
「……な、なんだこれ」
「免疫強化用のナノマシンだ。馴染むまでちょっとキモチワルイだろうけど耐えろ」
正直、これが噂の毒かと思ったんだぜ。床に寝転がった俺を、テイハさんはとびっきり真っ黒で透明な笑みを浮かべて見下ろしている。
分かった。
やっぱりそうだ、間違いない。
「お前、自己中だな!」
全部自分の思い通りにならないと気が済まない類の奴に違いないぜ!
「自己中……かな? ふむん。ボクはただ君たちに対しては徹底して無慈悲に行く方針なだけだけれど……んん。そっちからすると違わないかもしれないね」
「おおう、なんて面白くない方針!?」
とびっきりの笑顔で言いきられても困るしかない。
全然考慮する気が見えねぇ。どういう自我構造をしてやがるんだこいつは。
「ボクは区別しているだけだよ。故郷じゃさすがに男の子を浴槽に放り投げたりなんかしないし。あ、でも自称紳士共は蹴りまくってやったけどな! お代わりを要求された時はどうしようかと思ったぜ本当」
「蹴られて嬉しがる奴が居るのか?」
理解に苦しむ奴も居たもんだ。
蹴られたら痛いし心も痛くなるもんだがなぁ。
「ボクもそう思う。ただまぁ、この世界でボクに突っかかってくる奴はもれなくバーニンだ。文句は言わせない。それがボクの立場ってやつなんだから」
なんだそりゃ。
「本来はここまで長く下に降りる理由なんてなかったんだけど、ボクにも向上欲ってものはあるわけでさ。自分に足りないものを少しでも理解しようと思ってこうやってる。君たちは丁度いいサンプルになれそうだし。うん、期待しているぜ」
部屋の奥へと引っ込みながら黒髪をまとめて紐で纏めると、彼女は服の上から白い布を首から引っ掛ける。両目でそれを追った俺は、彼女が何やら大きな箱を開いて食材らしき物を取り出していくのを目にした。
「面倒だけど二人も三人も一緒だ。よーし、エルフと悪魔なら西洋風の料理にしてあげようじゃあないか」
ああ、やっぱりこいつは自己中だ。
全裸で転がされて白目を剥いている悪魔が居るのに、それを放置して鼻歌交じりで料理をしている時点で疑いようがない。
「……しっかし、こいつ生きてるのか? おーい」
声を掛けてみるが、悪魔は返事をしない。
屍かどうか確かめてみたいが、本当に死んでたら嫌だな。
一応息はしてるみたいだし……うん。大丈夫だろ多分。
ナノマシンとやらの気持ち悪さに耐えかねた俺は、目を瞑ると考えるのをやめた。
しばらく、包丁を繰る軽快な音が聞えていた。
ふと、昔の夢を見た。
これは……ああ、いつもの独り言のような村長のありがたいお話ではないようだ。
「アーク」
その日、村長が俺を呼んだ。
切れ長の眼をした、とても凄みのあるエルフの女性だ。
男衆が睨まれただけでヘコヘコするぐらいには怖い人で、剣や弓も上手らしい。
何のためかは知らなかったが、手に持っていた二本の木剣をみればなんとなく分かった。無言で放り投げられた木の剣を抱えると、俺は餓鬼ながらようやく教えてもらえるのかと期待したものだ。
何故か、俺は弓も剣も教えてはもらえない。
俺より小さい奴らは教えてもらっているのに、だ。
それどころか、俺をまともに名前で呼んでくれるのはこの人だけだった。
他の連中は何故か、俺のことを『灰色』と呼ぶ。
金髪なのに灰色だ。
今もそうだが、意味が分からない。
おかしな話だがそれがこの村の掟らしい。
村長だとてそうだった。人目が無い時しか名前を呼んではくれない。そうして、名前を呼ぶ度に何故か痛ましい顔をする。
「分かるな? これも掟だ」
理解はできない。だがその魔法の言葉は、偉い村長でさえも曲げられない絶対のものらしいことは理解した。苦渋だけがその顔にはあって、逆に俺には可哀想に見えた。
そうして、彼女は俺の前で剣を振るってみせてくれた。
ただし、それだけだ。
何かを口で伝えることもせず、相手になってくれるわけでもない。
少しだけ、いいやかなり残念だったが、それでも俺は見よう見まねで振るうことにした。こっそりと戦士たちに指導してもらっている連中を見た時と同じように、とりあえず適当に振り回す。
何が正しいのか、間違っているのかさえ分からない。
ただ、無性に初めのうちだけは嬉しかったことを覚えている。
「私には妹が居たが」
独り言のような話を、俺は剣を振りながらただ聞いた。
「お前もあの馬鹿のように剣はからっきしのようだな」
「ええっ!」
慰めてくれているのだろうか。
村長は眼つきは怖いがちょくちょく構ってくれる優しい人だし、飯も食わせてくれる。
ただ、これは少し妙な言い方じゃあないか?
これじゃあまるで――。
「――おい。起きんかアッシュ」
「んあ?」
「用意ができたようだぞ」
「……あ、おう」
立派な食器に盛り付けられた白いスープのような何か。それに野菜のサラダらしき物体が並んでいた。
「……これ、食って良いのか?」
「いいよ」
俺はすぐに夢のことなんて忘れてそれを食らった。
どれもこれも美味い。
なんか知ってるのと大分違うシチューとやらは具がたっぷりと入っているし、パンも柔らかい。イシュタロッテなんてお代わりまでしていた。
俺も負けじと喰らうが、その間にアルバイトとやらの説明をされる。
「てすとぷれいやー?」
「早い話しが、アーティファクトを使ったテストに付き合って欲しいってこと」
「振り回せばいいのか」
「うん。相手はまぁ、適当に危険そうな野生動物でいいよ。凶暴なクマとかどうだい?」
どうだと言われても返答に困る。
クマってアレだぞ?
剣一本で倒すには危険すぎるベアーな相手だぞ。
「大丈夫大丈夫。そっちの悪魔を改良して渡すからさ」
「な、なんじゃと!?」
「はっはっはー! 昼からはもっと酷いのを組み込んでやるぜ!」
「ま、まだ続ける……じゃと?」
スプーンをプルプルと震わせながら、イシュタロッテはせめてもの抵抗とばかりにこちらを見てくる。けれどテイハさんの機嫌を損ねるようなことは俺にはできない。だから、ついつい他人事のように応援しちゃうんだぜ。
「大丈夫。大人しく従っていればきっと優しくしてくれるさ」
「薄情者めぇぇ!」
こうして、俺は悪魔を犠牲になし崩し的にテストプレイヤーをやることになった。
「うう……ぐぅ……ううっ。ら、らめぇ……目覚めてしまうぅぅぅ!?」
悪魔の悲鳴に、何故か妙な艶が混じり始めた夕方。
家の散策に飽きていた俺は、外で空を見上げていた。
家の中の喧騒はともかくとして、それ以外は薄ら寒いぐらいに静かだった。
空を飛ぶ島。
それが、レイエン・テイハという少女の家だ。
静かなわけだ。
一軒しかない家には、彼女しか住んでいないのだ。たった一人のためだけにあるこの家は、贅沢な仕掛けが一杯で、生きていくために必要な何もかもがあるように見える。
けれど、何かが致命的に欠けていると思うのは俺の勘違いだろうか。
「そういえば、あいつも一人とか言ってたっけなぁ」
適当に置いてあった、ベッドだか椅子だかよく分からない中間の物体の上で呟く。
造物主という種類の神様のような人間様には、他人など必要ではないということなのだろうか。
確かに彼女は一人でも余裕で生きていけるだろう。
事実として俺にはそれが酷く羨ましい。
だが、そんな彼女に親近感を覚える部分があった。
あの黒瞳から、寂しさのようなものが見て取れる気がするからだ。
それは、俺もまた天涯孤独だったからか。
なんて妄想染みた同属意識だ。もしそうであったなら度し難い。
彼女が孤独であるというのなら、俺自身もまた孤独である。
それを哀れむというのなら、俺は俺自身を哀れんでいるってことだ。
「夕飯が出来たぞ」
「おーう」
側にやってきた少女を見上げる。
風に揺れる髪と服。
上から下まで真っ黒な少女は、特に何かの感情を表情に出しているというわけではない。ただ、あの路地裏でのそれと比べれば少しだけ楽しそうな感じがした。
「そういえばさ」
「ん?」
「なんで、お前は転移で俺の前から消えなかったんだ」
全力で逃げられたらどうしようもなかった。にもかかわらず、試すように諦めろというぐらいでそれ以上のことを彼女はしなかった。
「んー。強いて言えば、お約束の検証のためかな」
「お約束?」
「物語の主人公というのはね。大抵冒頭で異性か敵に出会うものらしいからね」
差し出してくる小さな手を掴むと、軽々と体を起こされる。
「君はあんなテンプレイベントで介入してきた挙句、どうにもボクに邪気を感じさせない。そこに何か特別な意味があるのだとしたら?」
「……出会ったのが運命だ、とでも言いたいんですかね」
「どうだろ。ボクは今、そんな訳があるかって否定している立場だ。ただ、彼らを理解する上での糸口にはなるかもしれないとは思ったんだ。これも勉強って奴だね」
「勉強ねぇ」
くるりと背を向け、家に向かう彼女を追う。
その横顔はまた少し寂しそうだった。
『彼ら』とやらのことを思い出したからかどうかは分からないが、俺が居るからといって孤独感が埋まるわけがないということだろう。
所詮、俺は他人だ。
側に居ても今はお互いに違和感しか感じられないだろう。
孤独とはそういうモノだ。
他人に抱く違和感が無くなったとき、ようやく孤独から開放されるんじゃないかと思うのは考えすぎだろうか。
「そっちも大変そうだな」
「ん?」
「俺は俺でエリート戦士に混ざっての諜報活動だ。お互い、適当に頑張ろうぜ」
「適当ねぇ」
「どうせ思い通りになんて現実は動いちゃくれないだろ。だったら適当でいいんだよ」
「それ、怠け者の台詞だと思うけど」
玄関のドアを開けながら彼女が振り返る。呆れたような表情だったが、どうしてか馬鹿にした風ではなかった。だから俺は柄にも無く一言付け足していた。
「違うぜ。怠け者は適当なんて言わない」
「ふむん。そりゃまたどうしてだい?」
「怠け者はそもそも仕事なんてしないだろ」
「……なるほど。一理あるかもしれないね」
「だろ? ところでだ」
俺は、玄関まで這い出したところで力尽きている銀髪全裸の悪魔を指差す。
「こいつ、これから毎日あんな調子か?」
「うん。術式の基礎設定を確定させるまではこんな感じ」
「……強く生きろよ相棒」
せめてもの情けだ。
俺は悪魔を抱き上げるとソファーとやらへと運んでやった。
しかし分からん。
何故、いちいち全裸にする必要があるんだろう?