ゲーム再開
「恭一さん。そろそろ来る頃だと思ってましたよ。ククク。でもまさか私のいる所まで来てお参りしてくれるとはねぇ。なかなか滑稽でしたよ。」
「やっと出てきやがったか。待ってたよ。」
「冷静ですねぇ〜。私の正体がわかって安心しましたか?恭一さん、もしかして貴方私が実はいい奴なんだとか思ってません?」
「えっ⁉どういう事なんだ?」
「貴方の考えてる事を当ててあげましょうかか?この鬼は悪戯はするが本当は優しい鬼で最終的には人間を助けてくれるいい奴なんだ、と思ってますよねぇ。わかりますよ〜。あんな言い伝えを聞けばねぇ。」
「えっ⁉それじゃあの言い伝えは・・・?」
「言い伝えなんて美化されるものなんですよ。ククク。500年も昔の話の話ですからねぇ。それでは特別にあの言い伝えの真実をお話してあげましょう。特別ですよ?ククク。」
「・・・」
「あの言い伝えでは私が流行り病から救ったという事でしたが実際は私は何もしていませんよ。ククク。残念ですが。私がした事は恭一さん、今の貴方にしている事と同じ事です。そう、村人に過去の後悔をやり直すチャンスを与えただけです。つまり私とゲームをしただけなんですよ。」
「・・・まさかその・・その時のお前が負けた時の約束が流行り病から村を救う事・・・か?」
「正解で〜す‼さすが恭一さん‼鋭い‼・・・ですが、この時遊んだ方は五人。一人も私に勝つことが出来ずにサヨナラしちゃいましたよ〜。ククク。あの時は楽しかったですね〜。今でも鮮明に覚えてますよ。」
何か男のテンションがおかしい。恭一には男が少し酒に酔っているようにも見て取れた。
「じゃあ、流行り病から村を救ったのは・・・誰なんだ?」
「そこなんです。ですが・・・私にもわからないんですよ。ってか別に興味がないだけなんですけどねぇ。ククククク。」
「なんだよ‼じゃあなんで村の人はお前を祀ったりしたんだ⁉」
「私が鬼だからですよ。昔の人はいい事があっても悪い事があってもそれを何か不思議な力によってもたらされたものだと信じたいんです。昔の人もよく言ってましたよ。実はいい鬼だったんだってね。ククククク。」
恭一は言葉を無くした。言い伝えを聞いた恭一はこの鬼のことが神様にすら思えていたからだ。ただ悪戯をしているだけだと。このゲームに例え負けたとしても比奈子には会える、この男はそんな酷い奴じゃないと。その期待は見事に打ち壊された。
「今日は気分がいいんです。何しろ比奈子さんにそっくりな貴方の娘の奈緒子さん。本当に昔の比奈子さんにそっくりです。その奈緒子さんが美味しいお酒をお供えしてくれたのですから。ついつい飲み過ぎてしまいましたよ。」
「お前、約束は必ず守るんだよな・・・。」
「えっ?あぁ、もちろんですとも。ちゃんと貴方に苦しむ覚悟があればですけどね。クククク。」
期待を裏切られた恭一だったがそれでもこの男が嘘をついてるとはどうしても思えなかった。
「ゲームに勝つしかねぇな・・・。」
「おっ⁉やる気ですね〜。私も気分がいいのでこの勢いで行っちゃいましょ〜‼」
男がそう言うと見慣れた眩い光が辺りを包んだ。