20才の後悔
どこか見覚えのある公園。時間は夕方だろうか。少し肌寒い季節だと推測出来た。
「ここは・・・。確か・・。」
「わかりますか?恭一さん。ここは貴方の親友だった真也さんの家の近くの公園です。18年前の今日、貴方はここで親友だった真也さんと絶縁する事になります。理由は・・・わかりますよね?貴方は親友の大切な彼女を奪おうとするんですよ。ククク。」
恭一と真也は自他共に認める大親友だった。しかし真也の彼女が恭一を好きになってしまった事から急激に歯車が狂い出した。
「貴方は親友の彼女から呼び出され告白されましたよね。付き合って欲しいと。だが貴方は迷った。当時の貴方は女性達から大変人気があり複数の女性と交際していた。天狗だったんですね。ククク。親友よりも女。貴方はスリルが欲しかった。いけませんねぇ。親友を裏切るとは。もうすぐこの公園に真也さんがやって来ます。そこで貴方は堂々と真也さんに彼女と別れろと言うんですよ。真也さんは大切な親友でした。もし今も親友だったなら・・・。ねぇ。」
「真也・・・。」
恭一は高校生の時から真也と仲が良かった。
同じ野球部で同じ様に辛い練習を積んだ。恭一のミスで負けた最後の試合も真也だけが罵声から守ってくれた。
そんな親友を自分の一方的なわがままで失う事になったのだ。
「ダメだ・・真也だけは・・・合わす顔が無い・・」
「ククク。いいですよ。逃げても。今なら親友を無くさずに済みます。それも貴方の自由です。貴方は今から新たな人生を歩めばいいのですから。いや〜しかし人間ってわからないものですね。今の貴方を見てると親友を大切しなかったにとはとても思えない。」
恭一にはもう男の声は届いてなかった。もう一度同じ親友を失う。恭一は気が気でなかった。
すると一台のバイクが公園に停まった。
「恭一!ゴメン遅くなった!」
真也はあの時と同じように笑顔だった。
「どうしたんだ?何か相談か?」
「真也・・・。俺お前の彼女の事・・・好きになったんだ・・・」
「はぁ⁉おまえ何冗談いってんだよ⁉笑わせんなよ‼」
真也はあの時と同じで全く信用していなかった。
「いや・・・本当なんだ。お前の彼女とも付き合うって決めてる。あいつから告白してきたんだよ。あいつもお前と別れたいって。だからもうあいつとは潮時なんじゃないの?」
恭一はあの時の言葉を一言一句覚えていた。大切なものは無くして気付く。それほど後悔していたのだ。
「恭一、お前本気で言ってんのか?謝るなら今だぞ?」
「嘘じゃねーよ。彼女に聞いてみな。お前の事もう好きでもなんでもねーってよ。」
真也は無言でその場を去った。
その日から真也は恭一からのTELに一切出なくなった。真也の彼女とも連絡が取れなくなった。
恭一は後で真也の彼女の友達に偶然会って話を聞く事ができた。どうやら怒った真也に身の危険を感じた彼女が全部恭一が仕組んだ事にして事なきを得たらしい。弁解しようにも親友の彼女を奪おうとした当時の恭一の事など誰も信用してくれなかった。
「パチパチパチパチ」
男が拍手をしながら恭一に近づいてくる。
「よく出来ました恭一さん。どうです?同じ親友を二度裏切る気持ちは。貴方は根は素直な方なんでてっきり人生やり直すかと思いましたよ。これで比奈子さんにまた少し近づきましたねぇ。おめでとうございます。」
男の挑発にも恭一は同じ親友を二度失ったショックで呆然としていた。
「少し刺激が強すぎましたか。ククク。恭一さん、少し休憩しましょう。」
男がそう言うとまた眩い光が辺りを包んだ。