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後悔の先

「こ・・・ここは・・・。」


光が消えるとそこは男の、いや鬼を祀ってある小さな神社の前だった。


「恭一さん。前にも言いましたが私はね、比奈子さんが大好きなんですよ・・・。優しい比奈子さんが。貴方に比奈子さんの事をもっと思いやる気持ちがあれば身体の異常ももっともっと早くわかっていたはずです。私は貴方が大嫌いです。でもね、恭一さん。比奈子さんは忙しい貴方のためにずっとここでお参りをしていたんです。身体を壊さない様に、仕事がうまくいく様に、毎週毎週貴方の事ばかり。でも・・・貴方と子供達を想い、そして支えることが比奈子さんの幸せなんだとわかりました・・・。私には比奈子さんの死期もわかっていました・・・。自分の事は常に後回しですよ⁉あまりにも可哀想でしょう⁉そう思いませんか恭一さん⁉恭一さん‼」


男は今までに見せたことのない表情で声を荒げた。恭一にはその目が潤んでいる様にも見えた。


「私は比奈子さんには幸せになって欲しい。でも貴方でないとそれが出来ないんですよ・・・・私は・・・人間ではありませんからね・・・貴方じゃないと出来ない事なんですよ・・・でも今の貴方なら比奈子さんを幸せにする事ができるはずです・・・さぁそろそろ時間ですかね。恭一さん。今日は二年前の貴方の誕生日です。ちょうど比奈子さんの身体が病に蝕まれはじめたのもこの頃です。今なら比奈子さんは必ず助かるでしょう。必ず・・・必ず比奈子さんを幸せにして下さいね、恭一さん・・・・・・ほら、誰か来ましたよ。」



「パパだ〜‼パパ〜‼」


聞き覚えのある声が聞こえる。振り返ると少し小さくなった懐かしい奈緒子が恭一に向かって手を振っていた。


辺りを見渡したが男の姿はもうそこにはなかった。


「パパなんでいるの?あ〜先におじいちゃんとこに来て驚かそうも思ったんでしょ?」


「えっ⁉・・・ああ・・・」


奈緒子にかなり遅れて誰かがこっちに近づいてくる。


「あれ?パパ⁉」


そこには三歳になったばかりの恭花を連れた比奈子がいた。


「どうしたの?今日は仕事もう終わったの?」


「比奈子・・・。明日病院に行こう。一緒に行こう。身体が良くなったらみんなで色んな所に旅行に行こう。それから家の事ももっともっと手伝わせて欲しい・・・これは・・・強制だからな・・・・命令だ・・・。」


恭一はそう言いながら比奈子を優しく抱きしめた。


「パパ・・・。」


比奈子は既に自分の身体の異変には気付いていた。


「パパ・・・ありがとう・・・・」


「パパ‼ママはパパのママじゃないよ‼奈緒子と恭花のママなんだよ‼」


抱きしめた事に奈緒子がヤキモチを焼いていた。


「ハハハ。そうだな。」


「フフフ。さぁ今日はみんなで鬼さんのお家をお掃除しましょうか。」



「はーい‼あっ、そうだ‼パパ、今日はパパの誕生日だから奈緒子がおいしいハンバーグ作ってあげるからね‼おっきなやつ‼」


「おっ‼今日のメニューはハンバーグかぁ‼楽しみだなぁ‼」







恭一はふと思った。その昔、この村を襲った流行り病から村人を守ったのは間違いなくこの鬼だと・・・きっと守りたい人がいたんだろう・・・・と。



社の雑草を刈り、恭一は日本酒を供え手を合わせて誓った。





三回目の後悔はしない。本当に、本当にありがとう・・・・・と。










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