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「ククククク。」


何処からかあの男の笑い声が聞こえてきた。


すると奈緒子や恭花、それに医師や看護師の姿がいつの間にか消えていた。ただ比奈子だけはそのままだった。


「いやいや。頑張りましたねぇ。恭一さん。お疲れ様でした。ククク」


絶望感と深い悲しみに打ちひしがれた恭一には男の声が届かない。


「聞こえてますか?恭一さん?ゲームオーバーですよ。いや、野球好きのあなたにはゲームセットのほうが相応しいですかね?ククク」


「もう・・・ほっといてくれ・・・。」


「そういう訳にはいきません。それにしても比奈子さん、安らかなお顔ですねぇ。よほど幸せだったんでしょう。」


「もう消えてくれ・・・もう俺に用はないだろ・・・。」


「いいんですか?私が消えても。ゲームは恭一さんの勝ちだというのに。じゃあ本当に帰っちゃいますよ?ククク。」


「ん・・・えっ⁉なんて⁉今なんて言った⁉」


「ククク。恭一さん。ゲームは私の負けです。非常に楽しめましたよ。恭一さんの必死な顔ったらねぇ。ククククク。」


「なんで⁉俺は比奈子を助けようと・・・自分の人生をやり直そうとしたんだぞ⁉」


「ククク。貴方は自分が後悔している事もわからないんですか?貴方はね、ちゃんと同じ後悔を経験しましたよ。際どいタイミングでしたけどね。ククク。」


「えっ⁉」


「恭一さん。貴方が後悔していた事は、具合の悪い比奈子さんを病院にも連れて行かず家を出たという事なんですよ。比奈子さんを助けられなかったという漠然とした事よりも貴方は家を出たという具体的な事を激しく後悔しているんです。思い返して見て下さい。貴方が過去にした後悔って具体的に印象に残ってませんか?」


「・・・・」


恭一は突然の事て状況があまり理解出来ずにいたが悪い知らせでない事だけはわかった。


「あの重く硬い玄関のドア。よく開けたと思います。あの重さに貴方の気持ちが負けていればゲームは私の逆転サヨナラ‼・・・という場面だったんですけどねぇ。ククク。残念。でもまぁ楽しめましたからね。恭一さん。約束・・・何でしたっけ?ククク。」


恭一は言葉が出なかった。そしてさっきまでとは全く違う熱い熱い涙が恭一の目からボロボロとこぼれた。


「場所を変えましょうか・・・。恭一さん。」


男は急に真剣な顔をしていた。


きっと男も今の比奈子を見るのは心苦しいのだろう。


間も無く眩しくも暖かい光が辺りを包んだ。






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