二度目の別れ
「ママ⁉ママ‼どうしたの⁉パパ‼ママはなんで起きないの⁉」
奈緒子が動揺する。騒ぎに恭花も目を覚ましたが流石に状況を把握出来ないでいた。
「奈緒子‼ママは大丈夫だから‼落ち着け‼すぐに救急車がくる。大丈夫だから。」
もう後には引けない。恭一の人生の歴史はすでに違ったものになっている。
元の人生と比べると比奈子が意識を失ってから病院に運ばれるまでの時間は遥かに短い筈だ。恭一は祈るしかなかった。
救急車が到着し、あっという間に比奈子は救急車に乗せられて病院に運ばれた。
処置室の前で待つ恭一達。奈緒子はボロボロと涙を流しながら恭一に寄り添っていた。
「パパ・・・ママ・・どうなるの?大丈夫だよね?」
「ああ・・・。きっと大丈夫だよ。ママは大丈夫。あんな・・・あんなママが・・・優しいママが・・いなくなるわけ・・・ないよ・・・・・。」
子供達の前で我慢していた涙だがボロボロと溢れだす。
それを見て奈緒子は恭花を抱き寄せ震えながら泣いた。
どのぐらいの時間がたったのか。しばらくすると比奈子の処置を担当したであろう医師が処置室のドアから出てきた。
そして恭一の前に立った。
「ご主人ですか?」
「え・・・はい・・・。」
「ちょっとこちらへ・・・」
医師は少しだけ恭一を子供達から遠ざけた。
「先生‼比奈子は⁉比奈子は大丈夫なんですか⁉」
「ご主人、奥様はかなり危険な状態にあります。応急処置は施しましたがこれ以上の処置は・・・。」
恭一は慌てて処置室に向かった。
「比奈子ぉ‼比奈子ぉぉぉ‼」
恭一は比奈子の左手を握った。奈緒子と恭花は右手を握った。
「ママ‼ママ〜‼」
「比奈子・・・ごめんなぁ・・比奈子が元気になったらさ・・今度は俺が比奈子を支えていくから・・いっぱい話して・・いっぱい家族で出掛けて・・いっぱい助けるから・・・。だから戻ってきてくれよ・・・お願いだから・・・・」
恭一には比奈子の顔が幸せそうに笑っている様に見えた。それはまるで全く後悔のない人生を全うしたかの様な安らかな顔だった。