UnderTheGround~地下から来たヒーロー~
所謂第一話。
アニメで言えばCM直後からのシーン。
†††††
イメージ。
深い海の中を漂うイメージ。
(この街の下水道はそれなりに深い)
漂いながら、思考を重ねる。
(なのに痛みは欠片もない。つまり)
それは、当然の帰結。
(死んだ、のか)
溢れるのはただひたすらに後悔のみ。
ふと、耳に響く小さな声。
『にいちゃん・・・・?』
(アネモネ)
(可愛い、俺の妹)
(愚直なまでに俺を信じる、妹)
(愚かで)
(真っ直ぐな)
(俺の妹)
(アネモネは死んでしまう)
(俺が戻るのを、死ぬまで待ち続けてしまう)
(モネ・・・・アネモネ)
(あァ、そうだ)
(アイツを残して俺が・・・・・)
†††††
「死ねるワケ、ねェよなァ」
堅い地面から、フォレオスはゆっくりと起き上がった。
そのまま、頭をフル回転させる。
(俺は墜ちた)
(確かに墜ちた)
(しかし怪我一つない)
(そもそも)
目の前をジッと見詰める。
(ここは何処なんだ?)
もっとじっくり考えたい所だが、今は時間が無い。
立ち上がり、急いで踵を返した。
「なッ・・・?」
が、再び静止せざるを得なかった。
目の前に聳える巨大な影。
よく見ると、自分はその掌に乗っているではないか。
「これは・・・・ゲイヴス・・・・・?」
言いつつ、違うと分かっている。
片膝を着き、騎士が如く頭を垂れるその機械人形。
ゲイヴスなら、その構造上片膝を着くなんてことは出来ない。
フォレオスは導かれるように、その開かれた胸元へと入って行った。
†††††
『くっ、地下に逃げ込んだは良いけど、ヤツらしつこ過ぎない!?』
『しゃーねーだろ。ヤツら、俺っち達を殲滅するためなら住民の生命も捨てるからな』
下水道を疾駆する2体のゲイヴス。その肩には、“曉”の文字が刻まれていた。
『ま、最悪俺っちのコイツで時間を稼ぐさ』
大盾を背負ったゲイヴスに乗ったパイロットが、誇らしげに言う。
『冗談じゃない』
しかし、肩に2門の砲門を持つゲイヴスのパイロットに切り捨てられる。
『皆で、生きて帰るのよ』
『・・・了解でありますよ、伍長殿』
彼らは生き延びねばならない。
人数も統国連軍に劣る曉にとって、重要なのは勝利ではなく生存なのだ。
『え?あれ?』
『ん?どしたぁ?』
『あそこ!』
『つっ!?女の子!?』
彼らが見つけたのは、頑張って隠れている(つもりの)アネモネだった。
『いくわよ!!』
『あぁ!ここに居ても統国連に殺されるのがオチだ!!』
素早く近付き、胸部ハッチを開く。
「お嬢ちゃん、早く乗りなさい!!」
「ぅ・・・?」
ゆっくりと、顔を上げるアネモネ。
「にいちゃんは・・・?」
(お兄さん!?くっ、外はもう・・・てことはこの娘のお兄さんも・・・っ)
心中をひた隠しに、優しい笑みを浮かべる女性パイロット。
「大丈夫。お兄ちゃんは先に行ってるから、アナタも乗りなさい?」
少女を助ける為とはいえ、不甲斐なさに拳を固く握る。
「・・・・ヤ」
「え・・・?」
一瞬、少女の言葉が理解出来ない。
「にいちゃんと約束したもん!にいちゃんが帰って来るまで待ってるって!!」
しかし、瞬間、理解した。
嗚呼、この娘は絶対に動かない。
この少女を連れて逃げることは叶わない。
それなら――
『ガント、少し辛抱して』
『はいはい、了解ですよ!』
遂に視界に現れた統国連軍のゲイヴスに向かい、大盾を構える。
『悪いわね、付き合わせて』
『なに、考えてることは一緒でしょ』
ここで少女を見捨てれば、十中八九自分達は逃げ切れる。しかし――
『『それじゃあ、一生後悔するに決まってんだろぉぉぉおお!!』』
†††††
2畳ほどのスペース。そこにあるイスにフォレオスは座っていた。
(なんだ・・・?俺は何をやってるんだ?)
自問自答しつつ、眼前の操縦桿を握る。
〈ブゥン〉
瞬間、暗かったスペースが明るくなる。
「ん?なんだ・・・・アル、ケイナム・・・・?」
モニターにアルファベットの羅列が表示され始める。
[Ready-to-ARCANUM
pirot-name_Foleoth
humanoid_HERMIT
green
beast_TOWER
green
mobile_WORLD
green
system_all_GREEN
set-up_completed
standing-by
NUM-006[HOWLD] ]
「ハウ・・・ルド・・・・」
何故か、単語がスラスラと口をついて出る。
「アウェイクン!」
フォレオスの言葉と共に、機動兵器の外部カメラが光を放つ。
「は・・・ははは・・・・」
呆気にとられながらも、やるべきことは分かっている。
「最ッ高の誕生日プレゼントだぜェ!」
〈ドゥン〉
右腕の砲門が火を噴き、天井の穴が広がる。
その穴から飛び出すと、ハウルドは走り出した。
『待ってろ!アネモネェェエ!!』
†††††
『おい、そろそろ弾も尽きるぞ!!』
『分かってる!』
大盾を統国連軍に投擲した隙に、ヒューマノイドからモービルに変形した2人。
この狭い下水道では、機動力は必要無いと見たのだ。
事実、現在まで弾幕を張り、足止めに成功している。
だが、その弾幕も切れようとしていた。
『仕方ない、俺っちが囮になるから、無理矢理あの娘連れて逃げてくれ!』
『そんな!!』
『それしかないんだって!』
『くぅ・・・分かったわ』
『スリーカウントだ。いいな?』
『・・・ええ』
『スリー』
『トゥー』
『『ワン!』』
『今だ!行っ』
〈ズガン〉
『なっ!?』
女性パイロットのゲイヴスが素早くビーストに変形した瞬間、少女の後方の天井が落ちてきたのだ。
鋭角的なフォルムを持つ、機動兵器と共に。
『な、何よアレ!』
『分かんねえよ!統国連の新型か!?』
『くっ、マズい!!』
女性パイロットがゲイヴスを進めようとしたその時。
〈ウィーン〉
鋭角的なフォルムのゲイヴスの胸部ハッチが開く。
そこから顔を出したのは・・・・
「にいちゃん!」
†††††
主人公がホームレスという変な始まりですが、主人公機の登場はとっても王道ですねf^_^;
妹にとって、兄は家族であり、保護者であり、ヒーローなんですねぇ。
はてさて、遂に主人公機登場です。
言葉による外見の説明は非常に難しく、また理解の齟齬もあるため、敢えて細かい描写は避けました。
また、テロリスト集団、曉の2体のゲイヴスはカスタム機で、大盾を装備した防御特化の機体と、両肩に対機動兵器ミサイルを積んだ火力特化の機体です。






