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UnderTheGround~地下への転落~

所謂第一話。


アニメで言えばCMに入る直前くらいまでのシーン。

†††††


 薄暗い路地裏。

 今日もフォレオスはゴミ箱を漁っていた。


「チッ。今日は不作だなァ。折角の誕生日だってェのによォ」


 事実、彼の覗き込むポリバケツには、碌に食料が入ってはいなかった。


「なんだなんだァ?モッタイナイオバケでも出たのかよ、この野郎ォ」


 ぼやきつつ漁り続けるフォレオスだが、ふと、顔を上げる。

そのまま路地の出口を睨み付け、首を傾げる。


「気のせェ、か?なんか爆発音みてェな音がしたような・・・・?」


 まァいいか、と次のポリバケツに手をかけた瞬間。


〈ドウン〉


「っ!?」


 今度ははっきりと聞こえた爆発音。

 それとともに、目の前の建物が炎上し始める。


「な、なんなんだコリャア!?」


 泡を食って路地から飛び出すと、目の前に広がるのはいつもの光景ではなかった。


 羨ましさを噛み殺し、眺めていたレストランも。

 いつか妹に着せてやりたいな、と夢想を膨らませた服屋も。

 たまにコッソリと食べ物を恵んでくれた、親切なおばさんの勤める中華飯店も。


 全てが焦土と化していた。


「ど、どォなってやがんだ」


 戸惑いつつ、視界の隅に映ったモノに目を向ける。


 走り去る機影。


 重火器の様相を呈する腕部。

 膝から下が一体となり、あたかもスキーでもしているかのように進むそれは・・・


「ゲイ、ヴス・・・」


 そして、フォレオスの双眸は、しかとその肩に刻まれたマークを捉えていた。


(“曉”・・・テロリストかッ!!)


 すぐさま近くの路地に駆け込むと、最も近いマンホールへのルートを駆ける。


(チイッ!統国連軍もたいしてアテになんねェが、平気で大量虐殺なんてしやがるテロリスト共よりは幾分マシだァなァ!)


 毎週一度はニュースに流れる、テロリストにより残虐に破壊される街の情報。

 やはり守りながらの戦闘は分が悪いらしく、統国連軍も守りきれないらしい。

 街の家電店の前を通った時に、何度も見たニュースだ。


(俺は死ぬワケにはいかねェ。モネが待ってるんだ!)


 必死に、駆ける。

 もっと速く。

 もっと疾く!


(よォし、この角を曲がれば・・・・ッ!?)


 飛び出しかけて、反射的に後方へ飛ぶ。


「な、なんだよ、コレァ」


 思わず、声が漏れる。

 人2人通るのが限界だった狭い路地。

 しかし今は、両側の建物が崩れ、見晴らしのよい大通りになってしまっていた。


(コレじゃァ、マンホールに入るまでに見つかっちまうじゃねェか・・・・ッ!)


 脚が震える。

 視界が霞む。


 絶望に打ち拉がれる脳裏に、妹の無邪気な笑顔が浮かぶ。


(イヤ・・・俺は帰る・・・・帰るんだ!!)


 脚の震えは止まった。

 視界も至って良好だ。


(あの大通りを走ってるテロリスト共のゲイヴスが見えなくなったら、スタートだ。成功率は7割ってトコ。命懸けってことを考えると、決して高い数字じゃあねェ)


 持っていた食料を投げ捨てる。勿体無いが、邪魔な物は極力無い方がいい。


(だがまァ・・・・)


 履き潰して最早その様相を呈していない靴も脱ぎ捨てる。


(悪くはねェギャンブルだ)


 その双眸は生へと伸びる蜘蛛の糸を見逃さないよう、しかと見開かれた。


 マンホールから20Mほど先には、難を逃れた倉庫のようなものが見える。

 最悪、一旦あそこに逃げ込めば・・・・


(イヤ)


 頭に浮かんだ考えに、即座に首を振る。


(滑り止めの策を考えるな。死ぬ気で本命にかからねェと、掛け値無しに死ねる)


 そして、


(3、2、1・・・)


 時は来た。




 駆ける。


 視界には丸い扉しか映らない。


 10M・・・・5M・・・1M!


 急ブレーキをかける。


 コンクリートに引っ掛かった足の爪が剥がれ落ちる。


 痛みに顔をしかめつつ、その扉に手をかけ――





『動くな』


 空気が固まった。


(バカな・・・ヤツらは確かに・・・・)


 ゆっくりと振り返ると、20Mほど後方に、2体のゲイヴスの姿。


(そんな・・・そんな・・・・ッ!!)


 視界がブラックアウトしそうな状況の中、その端にゲイヴスの肩に刻まれたマークが映った。


(UN・・C・・・・統国連かッ!助かった!!)


 そう、それは確かに統一国際連合軍の機動兵器だった。


 それは、間違いなかったのに。


「あ・・・その、俺、取り残されてしまっ」


『なーんだ、ホームレスのオッサンじゃねーか』


「・・・え?」


 何かが


『いやいや、声から察するに、ありゃあガキだぜ?』


『ん?ああ、確かによく見りゃそうだな』


 何かがおかしい。


(なん・・・・だ?)


『メンドクセェな・・・オレはあんな臭いガキ乗せたくねえぞ』


『それは同感だな』


(何を)


『どうする?』


『まあ、いつも通りっショ?』


(何を言ってるんだ?)


『どうせテロリストのせいになるんだし』


『殺っちまうか』


(一体誰なんだよ、コイツらは・・・・ッ!?)


 脳が現実を否定する。

 自分達を守る筈の統国連が、こんなことをするワケがないと・・・!!


『っ!?オイ、9時の方角に反応有り、テロリストだ』


『あぁん?』


 2体のゲイヴスが共にそのモノアイを左へ向ける。

 その瞬間。


『づぁ!?あのクソガキ!!』


 フォレオスは走り出していた。


 速く、速く。


(・・・んだ・・)


 疾く、疾く!


(・・るんだ!)


 駆け抜け、飛び込む。


(生きるんだァ!!)


 刹那、フォレオスが踏み切った地面が凶弾に砕かれ、同時にフォレオスは倉庫に逃げ込むことが出来た。


『あのガキィィィィイイイ!!ナメたマネしやがってェェエ!!』


『オイ、そんなガキに構ってる場合か!』


『ウルセエ!!』


 どうやら、1人はテロリストと交戦しているようだが、1人はキレてフォレオスを狙っているらしい。


 怒りに我を失い、倉庫手前の地面にばかり着弾する。


(コレなら!!)


 光明を見出したフォレオスだったが、無情にも


〈ガゴン〉


「なァ!?」


 下水道が縦横に走るこの街の地盤は保たなかったのだ。


「う、うぁぁぁぁあああ!!」


 フォレオスはそのまま、奈落へと墜ちて行った。


 そう。

 “奈落”へと――



†††††


〈ズン〉


 先刻から響き渡る轟音。


 下水道の中の少女、アネモネは頭を抱えながらしゃがみ込んでいた。


「いい、チュチュ。こうやって隠れてないとダメなんだよ?」


 懐に入れたネズミのチュチュに語り掛ける様子から、本人は隠れているつもりらしい。


 しかし、兄の言い付けを愚直にも守り、自らの『部屋』からは出ていない。


「にいちゃんが来るまでジッとしてよーね、チュチュ」


 兄を信頼しきった表情でチュチュに語り掛けた瞬間。


〈ガゴン〉


「!!」


 一際大きな音が響いた。


「にいちゃん・・・・?」


 少女の顔に、初めて不安が過ぎった。



†††††

連続投稿!


次話では遂に主人公が専用機と対面します。

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