賽は投げられた
所謂プロローグです。
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「ゲイヴス―可変式汎用機動兵器、その頭文字を取ってGAVS。
前歴に於いて旧欧州諸国による合同開発で誕生した搭乗型の機動兵器。
その特性は可変機構にある。
頭胸部、腹部、脚部に大別され、火力を重視したモービル、機動力を重視したビースト、その丁度中間に位置するヒューマノイドの三形態への変形を可能としている。
そのため、単機で様々な局面に対応することが可能。
しかしその変形機構が仇となり、最大連続稼動時間は4800秒と長くはない。
また、現在では飛翔機構は開発されていない――」
「そろそろ本題に入ってはもらえないかな、Dr.ラット」
「・・・・無粋だねぇ。人が気持ち良く喋っているというのに」
薄暗い部屋。
その中央には円卓と、各々の席に座る8人のスーツ姿の影。
そして、その部屋の入口で逆光を浴びながら立つ白衣の男。
長々と弁舌を繋いでいた男を、円卓に座る男が遮っていた。
飄々と喋る白衣の男に気を悪くしたのか、円卓の数少ない女性、しかも年若い女性が声を荒げる。
「Dr.ドラクト・O・ラット、貴方が重要な話があると言って会議を中断させたのだ。我々に余計な時間をとらせず、簡潔に話すのが筋ではないか?」
「そんなに声を荒げては肌も荒れてしまうよ、アヤカ嬢」
「立場を弁えろ。一研究者でしかない貴方が私に対してどう接すべきかを」
「おやおや。なんのことやら」
「“Miss.”を付けろと言っているのだ」
「なんと。それでよろしいのですか!我が祖国、英国に於いてはその敬称は相手を侮辱する意味もありますので避けていたのですが・・・・いやはや、旧日本国の首相はお心が広いですねぇ、“Miss.”シシドウ」
「ぐ・・・ぬぅ・・貴様・・・」
「碌な語学もない小むす」
「そこまでにしてもらえないかドクター」
「・・・・ふむ。ミスターにそう言われては仕方ないですねぇ」
女性をやりこめる白衣の男を、薄暗いこの部屋でも鋭く眼光を光らせる男が止める。
それを受け、白衣の男は肩を竦めると、再度女性の方を向き頭を下げる。
「アヤカ嬢、申し訳ないことをした」
「謝罪などよい。本題に入っ」
「もうすでに入っているんだがねぇ」
「む?」
「まさか私があの程度で謝罪をするとでもお思いで?“Miss.”シシドウ」
「・・・っ!!貴様!!」
「もっと重要なことなのだよ」
白衣の男は不敵に嘲笑い、羞恥に頬を染める女性に喋り続ける。
「5年前、貴国で発見されたエネルギー源を知っているな?」
「・・・・アヴァドンのことか?父上の代で発見され、地下深くから発見されたため、“奈落”を意味する名前を付けたと聞くが・・・」
「そう!その通り!!あの素晴らしく美しい結晶体のことだ!!」
「・・・あれは目下研究中とのことだったと記憶するが」
「そう!報告書の上では!!」
「なにっ!?」
「前首相が倒れた際の騒ぎに乗じて情報の操作を行うのは思いの外簡単だった!」
「・・・・つまるところ、既に研究は終わったと。そう言いたいのかな、ドクター」
「その通りだよ、ミスター。そしてそれだけではない!」
両手を広げ、芝居がかった仕草で叫ぶ白衣の男。
「既に完成させたのだよ!奈落炉内蔵多様機動兵器を!!」
流れる沈黙。
耐えきれずに、先程の女性、アヤカ・シシドウが戸惑いがちに言葉を紡ぐ。
「う、うむ。それは良いことだな。貴方の地位もこれで確約されよう」
再び流れる沈黙。
次いで、ノンフレームの眼鏡をかけた男が喋り出す。
「状況から察するに、これは取引の場であるとの理解でいいかな?」
「取引?」
「そうだ。貴様はその機動兵器をテロリストに売りつけることも出来る状況。つまり、そちらがどのような無理難題をふっかけようと、我々には拒否するという選択肢は存在しない」
眼鏡の男が言葉を切ると、周囲の人間が顔を青ざめる。
(ふん。使える人間が2人だけとは、この首脳陣も大概だな)
心中でこの場の人間達を揶揄しつつ、歪んだ笑みを浮かべる白衣の男。
「残念ながら違う。この開発を渡すだけで既に一生遊んで暮らせるだけの資産は手に入るんだ。その取引には意味が無い」
「なるほど・・・では、真の用件はなんだ?宣戦布告か?」
「まあ、近いものかねぇ」
コツコツと音をたて、円卓の周りを歩く白衣の男。
「私は7体の機動兵器を作った。
彼らは己が搭乗者を自らで選択する。
そしてその彼らを世界中に放った!
彼らは各々、思い思いの場所で眠りに着いているだろう!」
その部屋に、男の声が響く。
「探すがいい!彼らの居場所を!」
「探すがいい!彼らに選ばれし者を!」
「そして手に入れるがいい!」
「奈落炉内蔵多様機動兵器、アルケイナムの!」
「アルケーの力を!!」
「いいか、よく聞け首脳陣よ!」
「より多くのアルケーを持つ者が力を持つ!」
「これは貴様らと!」
「テロリスト達と!」
「世界中全てを巻き込んだ!」
「大いなるゲームの始まりだ!!」
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こういうオリジナルのロボット系や、魔法系の物語の作成って浪漫がありますよねぇ。
小説は筆者の自己満足の塊というのが私の持論ですが、楽しんでもらえたら幸いです。
更新は亀になること必至です。
気長にお待ち下さい。






