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二度目の初恋

作者: 昼月キオリ
掲載日:2026/04/15



水水ありさ(みずみありさ)(26)。

さくらのアパートの上の住人。

ポニーテールがよく似合う、どこかミステリアスな雰囲気が漂う女性。


東雲さくら(しののめ)(24)。

根暗で何の取り柄もない女性だが、好きなものに対する情熱は誰にも負けない。





♦︎

ああ、神様。こんなことってあるのかしら。


初恋を拗らせまくった私が最近好きになった相手は、

アニメの男の人だった。

しかも、そのキャラクターの完璧なコスプレをしていた人に、イベント会場でぶつかって一目惚れしてしまった。


「大丈夫?あれ、君は・・・。」


紳士的で、低めの優しい声。

その声が、どことなくアニメのキャラクターに似ていて、私の心が一気に沸点に達した。


「は、はい。大丈夫で・・・わああ!!その格好!! レイ・フランメルですよね!?」


「うん?そうだよ。」


「好きです!!もうめちゃくちゃ似合ってます!!

好き・・・てゆーか、好き!!」


「ありがとう・・・。」

(あまりの勢いに気押されている。)


イベントが終わった後、帰り道がやけに被っていた為、

気になって、つい後を付けてしまった。

すると、その人は私のアパートの上の階に住んでいる水水ありささん、女性だ。


確かに、私の好きなキャラクターは女顔で、 長い髪を高い位置で結んでいる。色は青だ。

友人達とは「配役を決めるなら女の人だよね!!」と話していたけど・・・。

まさか、本当にこんなことが起こるなんて。


なんて声を掛けたらいい?

そもそも、声なんて掛けたら後を付けていたことがバレてしまうのでは!?





♦︎

一方、水水ありさは気づいていた。


いつも暗い顔をして部屋を出ていくあの子と、今日ぶつかった。

あの子もレイ君が好きなのか。知らなかった。

それに「好きです」って言われた。マジか。


・・・いや、あれはレイ君のコスプレ姿の私が好きなだけで、本当の私が好きなわけじゃないよな。

気付いてないみたいだったし。

あれだけメイクが濃かったら無理もないか。



♦︎それから数日後の土曜日。


私は勇気を出して、水水さんの部屋のインターホンを鳴らした。


「あの、こんにちは。えと・・・この間のコスプレ衣装、水水さんですよね?」


「気付いてたの?」


「いえ・・・同じ方角だったので後を付けてみたら

まさかの同じアパートで・・・三階の水水さんだと気付きました。ごめんなさい。」


「いや、同じアパートなんだから、後を付けていたことにはならないよ。」


「ありがとうございます・・・。」


「それで、何か用事があって来たんじゃないの?」


「あ!そうなんです。私、あなたと仲良くなりたいんです!」


「私と?ああ、オタク仲間が欲しいってこと?」


「はい!」


目をキラキラさせながら言うさくらを見て、クスッと笑うとありさはすんなりOKを出した。


「いいよ。」






♦︎そして、何度か会った後。

 

「好きです!」


さくらの突然の告白に、ありさは目をまん丸くさせた。


「さくらは女の子が好きなの?」


「え?いえ、そういう訳では・・・女の人を好きになったのは初めての経験です。

あの、困りますよね。急に呼び出してしまってごめんなさい。

返事がノーなのは分かってますから。聞いてくれてありがとうございました。」


椅子に座ったままペコリとお辞儀をする。


「いや、私まだ何も言ってないんだけど。」

 

ありさが困ったように笑う。


「初めてなのに、どうして私を?やっぱりあのコスプレ?」


「きっかけは確かに・・・。」


「素直だね。そんなにあのコスプレ気に入ったの?」


「はい!そりゃあもう大大大好きです!!」


「そう。」


数秒の沈黙。


「あのー、ありささん・・・?」


さくらは不安気な声色でありさの名前を呼んだ。


「付き合おうか。」


ありさが片手で頬杖を付きながら顔を少し傾ける。


「ええ!?付き合うって、でも、そんな急に、え!?」


「はは、驚き過ぎじゃない?」


その瞬間、ありさの表情が柔らかくなる。

初めて見る笑顔に、さくらの胸がキュンと高鳴った。


「振られる予定だったので・・・。」


「予定って(笑)」


さくらはぷしゅ〜ッとゆでダコみたいに真っ赤になって俯いた。

ありさは、そんなさくらの頭を目を細めながら優しく撫でた。


さくらが顔を上げる。


「あの、よろしくお願いします。」


「そんなかしこまらないで、ラフにいこうよ。」


「は、はい・・・。」


「これからはタメ口でいいから。」


「う、うん。」


「あ、そうだ。」


「?」


キョトンとしているさくらに、ありさは小さく手招きをした。

さくらがテーブルに身を少し乗り出すと、耳元で囁いた。


「御所望なら・・・コスプレ姿見せてあげる。

この後、部屋においで。」


私は、涙で耳を押さえると体を元に戻した。


「可愛いなぁ♪」


東雲さくら。

私は今日、初めて女性の恋人ができました。


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