⑱
「よし、今日の所はこんなもんかな」
「お疲れ様だね」
『おつかれにゃ』
初日終了。
ウインドウに『10分後に睡眠状態に入ります』と表示され、カウントダウンが始まっている。
1日NOT THE GAMEをプレイしてみての感想だが。
現状コンテンツは少ないものの、かなりの作り込みとリアリティがあって、魔物が存在する現実世界を疑似体験出来る面白いゲームだった。
魔物を倒すと確率で扉が出現。
扉で各種アイテムや装備を獲得出来るってシステムも、ありきたりだが楽しい。
武器を強化するオーブに個体差があり、厳選する事で高みを目指せるってのもモチベーションになる。
スキルや特性を組み合わせて、最高のビルドを作り上げるってのが、恐らくNOT THE GAMEの肝なのだろう。
現状の流れとしては、狩り2時間の睡眠1時間で進めるのが最高効率だろう。
睡眠状態から復帰して、安全地帯が解除されるまでの時間が5分あるので、正確には狩り1時間55分の睡眠1時間5分になるか。
時間ギリギリの戦闘で扉を引き当てたりすると、時間が後ろにずれ込むので、完璧にこのタイムスケジュールで動くのは不可能ではあるが。
魔物は、今のところ遭遇した敵に厄介なのはいなかった。
ヤバかったのは最初のスライムと、東雲鈴音が2対1で苦戦してたブラザーラビットLRだけだったな。
スライムは俺の迂闊さが招いた悲劇だし、兎ズは2人で戦えばどうって事もない。
吸血鼠5体の群れにも遭遇したが、東雲鈴音の剣術が素晴らしく、俺も銃の扱いに慣れてきて危なげなく撃破した。
組み合わせの妙もあるけれど、東雲鈴音の存在は、少しばかりチートな気がする。
扉の出現率は、大凡20%。
上振れか下振れかは不明だが、招木猫はもっと高確率で引いている印象だった。
名前の時点で招木猫だからね。
運は絶対的に良さそうだからね。
因みに1体の魔物を1人で撃破した場合、パーティメンバーにも優先入場権は与えられる。
これは【魔物との距離が近いと戦闘参加と見做される】って可能性も0ではないが、そんな簡単に横取り可能な仕様にはしないだろう。
恐らくは与ダメージ(被ダメージも?)を伴う戦闘参加またはパーティメンバーって条件があるのだろうと予想する。
エリア内を練り歩いている中で、幾人かのNPCにも遭遇した。
顔見知り、ご近所さん、赤の他人。
普通に世間話は可能で、誰もがAIではなく、実際にいる人間のように会話が可能だった。
NPCは武器を持たず、魔物に襲われている所を助けたりもした。
東雲鈴音は危機と見るや全速力で駆け出して救いに行くからだ。
精神年齢5歳児な残念美女だが、心根が優しい善人なのだろう。
善人じゃない俺は下心あって、お礼にアイテムでも貰えないかと期待した。
何もなかった―――。
感謝はされるので、悪い気分ではなかったけどな。
「最後にステータスでも発表するか?把握しておいた方が今後の役に立つかもしれないし」
「素敵な提案だ。もっと私の事を知って欲しいからね」
『賛成にゃ。言い出しっぺのナルキンからにゃ』
「えーと、俺のステータスは…」
名前:成木原裕哉
年齢:18歳
所属:埼玉30エリア
状態:非常に良い
活力:38
力:11
耐力:10(+27)
技力:23(+5)
速力:18(±0)
知力:21
適性武器:銃
武器:鉄の銃(威力5+4 射程5+6 青橙属性)
強化オーブ:青のオーブ(威力+2 射程+3) 緑のオーブ(威力+2 射程+3 速力+2) 橙のオーブ(威力+3 命中補正)
装備:空色のスカーフ(速力+2 特性:小浮遊) 革のジャケット(耐力+15 速力-2) 白地のTシャツ(耐力+1) スタッズベルト(技力+3) ミリタリーパンツ(耐力+11 技力+2 存在感△)
スキル:命中補正
特性:存在感△ 小浮遊
「次は私だな。私のステータスは…」
名前:東雲鈴音
年齢:18歳
所属:埼玉30エリア
状態:非常に良い
活力:30
力:18(+15)
耐力:24(+23)
技力:38(+6)
速力:25(+10)
知力:12(-7)
武器適性:刀
武器:鉄の刀(威力5+5 鋭利5+2 青緑属性)
強化オーブ:青のオーブ(威力+3 耐力+5) 緑のオーブ(威力+5 鋭利+2)
装備:錫の髪留め(技力+6) 絹の羽織り(耐力+10 速力+5) NO KING Tシャツ(力+10 知力-5 一押し〇) 粗末な肘当て(力+5 耐力+3) 絹の腰巻(耐力+5 技力+3) わんわんソックス(速力+5 知力-2)
スキル:無し
特性:詰め〇
「東雲さんは初期ステータスが高いんだな。というか、この頓珍漢なキャラって知力が影響してるのか?」
『リンリンは普段からこんなもんにゃ』
「頓珍漢…。私にそんな一面があると気付かせてくれるなんて。やっぱり友達って素晴らしいね」
『最後にあたしのステータスにゃ』
名前:招木猫
年齢:17歳
所属:埼玉28エリア
状態:非常に良い
活力:58(+76)
力:10(+11)
耐力:13(+10)
技力:15(+13)
速力:38(+15)
知力:28
武器適性:子槌
武器:木の小槌(威力5+9 幸運5+8 赤青緑橙属性)
強化オーブ:赤のオーブ(威力+1 焼き印) 青のオーブ(威力+5 幸運+5) 緑のオーブ(威力+3 耐力低下) 橙のオーブ(幸運+3 速力低下)
装備:白猫のヘアピン(速力+8 気紛れ) デストロイジャケット(活力+15 力+8) デストロイTシャツ(活力+18 力+3 耐力-2) 虹色のミサンガ(技力+10) 皮の手袋(耐力+6 技力+3) 布のベルト(耐力+3) デストロイパンツ(活力+13 耐力-2) 羽毛靴(耐力+5 速力+7)
セット効果:3デストロイ(活力+30 貫通打)
スキル: 焼き印 耐力低下 速力低下 貫通打
特性:気紛れ
「つっよ!招木さん最強かな!?」
「そうだろう、そうだろう。にゃんにゃんの可愛さは最強なのだ」
『にゃはは。運が良かったにゃ。リンリンは人の話を聞いて空気読むにゃ』
「す、すまない。トークテーマから外れていただろうか」
『今はステータスの話にゃ。あんまり関係無い話をぶっこむと、話聞いてないと思われて嫌われるにゃ。あたしとナルキンなら大丈夫だけどにゃ』
「そ、そうなのか?成木原君は、本当に大丈夫だったかい?」
「ああ、俺は全く問題ないかな」
平凡よりかはぶっ飛んでる方が好きだからな。
面白くて退屈しないし、面倒な時はスルーすれば良いだけだし。
『あたしはもう時間にゃ。最後に、ナルキンはあたしを呼ぶ時に招木さんは止すにゃ。よそよそしいにゃ…』
「ああ…俺もにゃんにゃんって呼べば良いのか?」
東雲鈴音に呼ばせてるぐらいだし、にゃんにゃんって渾名がお気に入りなのだろうから。
『それは任せるにゃ。にゃんにゃんはあたしが呼ばせてるんじゃないからにゃ…』
「私が付けた渾名なのだ。可愛いだろう?」
にゃんにゃん付けたのお前かい。
「何も思い付かないからにゃんにゃんで」
『把握にゃ…くあぁ…。もう寝るにゃ…。おやすみにゃ…』
「また明日な」
「おやすみ、にゃんにゃん」
招木猫との通話が切れた。
どうやら睡眠状態に入ったらしい。
「俺もあと30秒だな」
「私もだ」
「今日は楽しかったよ」
「明日もまた一緒にプレイしくれるかい?」
「東雲さんさえ良ければ、是非」
「ありがとう。成木原君という友達が出来て、今日は最高に素敵な一日だった」
安全地帯の関係で少しばかり距離はあるが、こちらを向いて俺の横顔を見つめているのはわかる。
東雲鈴音は、何と言うか純粋で、恥ずかしい言葉を恥ずかしげもなく言ってくるからばつが悪い。
純粋じゃない俺は、どんな言葉を返せば良いかわからなくなるんだよ。
「そろそろ時間だ…」
「うん、そうだね…」
「また明日…」
「また明日…。次は…現実世界で…あ…」
こうしてNOT THE GAMEの1日目は終了した―――。




