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 招木猫は確かにいた。

 胡坐をかいた膝の上に肘をのせて頬杖をつき、見えない壁に凭れ掛っていた。

 地面に招木猫を囲むような光の円が引かれているが、これは何かのスキルだろうか。


 濃い橙色の短い猫耳ヘア。

 腕まくりしたデストロイ加工の紺Tシャツにデストロイ加工の白ダボパン。

 足下はデストロイ加工の橙スニーカー。


 いや、これ本当に加工か?

 デストロイ過ぎて背中ざっくり開いてるんだが?

 しかもブラジャーが見えない。


 ノーブラ?

 こいつ、ノーブラなの?


 それにしても、相変わらずのミニサイズで、同学年とは思えない。

 多分身長は130cm台だと思われる。

 顔も幼猫顔だから、知らなければ中学生…小学生と言われてもわからないかもしれない。

 まあ、やや後ろからの横顔までしか見えないから、記憶の中の招木猫って話だが。


 真に残念な事に、俺はロリコンではないので、ざっくり開いた背中とノーブラ疑惑があっても、少しも色気を感じない。

 ロリコンおじさん垂涎の仕上がりだとしてもな。


「にゃんにゃん!おーい、にゃんにゃーん!」


 東雲鈴音が声を掛けるも、招木猫は気付かない。

 どうやら見えない壁は音も通さない性質らしい。

 若しくは、あの光の円が関係している?


 気付いて貰おうと、見えない壁にほっぺたを押し付けて必死に呼び掛ける東雲鈴音。

 これでは美人が台無し…にならないのが、東雲鈴音の顔面偏差値の高さなのだが、内面も含めると残念この上ない以外の感想が出てこない。


 おもしれー女と残念な女を分けるのは、受け手の価値観であると知った、18歳の夏の午後であった―――。


 招木猫が東雲鈴音に気付いたのは、凡そ10分の後だった。

 光の円は既に消えている。


 ぽりぽりと背中を掻いて、くああと欠伸をして、首だけで何となく左後ろを振り向いたところ。

 壁にへばりつくような東雲鈴音を見て、飛び上がって驚いていた。


 本当に飛び上がって、荒くなった息を整えて、「びっくりしたにゃ」と口にしたのは、読唇術の心得が無い俺でも理解した。


 東雲鈴音がIDのコピーを見せると、招木猫は察し良くウインドウを操作してフレンド登録を済ませた。

 それから東雲鈴音との音声通話で、俺のIDも出してくれと言って、俺と招木猫もフレンドになった。

 フレンドになる際、手入力の場合は、『招木猫からフレンド申請が届きました。承認しますか?承認/拒否』とメッセージが表示されて、承認を選ぶと完了となった。


 予想通り壁に隔てられていても、こちらもあちらも見る事は可能。

 それはIDも同様だった訳だ。


 ピリリ ピリリ ピリリ ピリリ


 招木猫からの音声通話を受信した。

 どうやら複数人で繋いで通話をする事も可能みたいだな。


『にゃあ、にゃあ、聞こえるにゃ?』


「ああ、聞こえるよ。ID打ち込み397」


『あたしらの仲にゃ、気にしなくて良いにゃ。フレンド39にゃ。それから、リンリンと友達になってくれてありがとにゃ。ナルキンが友達になってくれてちょっぴり安心したにゃ』


 うーん、うん。

 やっぱり招木猫はわかりやすく奇人変人だよな。

 この喋り方、ゲーム用のロールプレイでも何でもなく、普段からこうだからな。

 リンリンってのは、東雲()音の渾名だろう。


 小っちゃくて、可愛くて、人懐っこい。

 かなり風変わりな性格だが、ロリコン中心に男子の人気は高い。

 しかし東雲鈴音とは別の意味で距離を縮められないタイプ。

 何せ飽きっぽいし、誰かと深い仲になるのを毛嫌いするからだ。


 だから東雲鈴音とこんなに仲が良いとは意外だったんだ。


「安心とは?私はにゃんにゃんに心配される覚えはないぞ?」


 東雲鈴音はこう言っているが、招木猫でっかい溜息を吐いて…。


『リンリンは誰かが見てなきゃ心配になるからにゃぁ…。これであたしの心労も少しは軽くなるにゃ…』


 あの気紛れ猫娘に気掛かりだから目を掛けてあげなきゃと思わせる東雲鈴音。


 俺の見立てでは東雲鈴音の人物像はこうだ。


「わかる…。まだ付き合いは短いけど、精神年齢5歳児だよな」


『その通りにゃ!お菓子くれるおじさんについてっちゃいそうで危ういにゃ!目を離せないにゃ!』


「酷くないか!?私は立派な成人なのに!」


 これでわかった。

 どうやら招木猫は母猫的な目線で東雲鈴音を見ているのだ。

 傍から見たら逆だろうとしか思えないが、招木猫の内面は案外成熟しているのかもしれない。


「っと、無駄話はこの辺にして。取り敢えず情報交換でもするか?NGワードになりそうな話題は現実の方でするとして、取り敢えず俺の持ってる情報を伝えておくよ」


「いいね、無駄話。私の友達同士が私について話しているなんて感動的だよ。もっとしてくれても良いんだよ?私を題材にした無駄話」


『そうするにゃ。おっと、そろそろ時間にゃ。話は顔を見ながらじゃなくても良いかにゃ』


「それは構わないけれど、何かあるのか?」


「さあ、成木原君、にゃんにゃん。私の話をもっとしてくれ!」


『魔物が活性化します。各エリアに魔物が出現しました』


『3時間に1度の狩りの時間にゃ』


 招木猫は舌なめずりして、右方に出現したブラザーラビットLRを見据えた―――。

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