表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/8

第8話:「原初の記憶と孤独からの解放」

最終話の第8話完成しました!

1話から読んでくださっていた方、本当にありがとうございます!

読みづらいと思いますが、この物語はここで完結です。

 光が――玉座の間を包み込んでいた。それは優しいようでいて、痛いほど眩しい。

 ザバロスの魔力が、ノエルの小さな体を包み込む。

 その身を削るような儀式の光は、父の祈りそのものだった。

 ザバロス「ノエル……聞こえるか……パパだ……」その声が、光の中に溶けていった。

 ルカは、ノエルに広げたお絵描き帳を落とさぬよう、必死に声を張り上げ続けた。

  ルカ「ノエル! 頼む! 思い出してくれ! マグマクッキーの味を! お空の色を! 

 君が教えてくれた、世界で一番甘くて、優しい時間を!」


 ――ノエルの精神世界。

 そこは、無限に続く図書館のような空間だった。

 天井も壁もなく、果てしない本棚が闇の中へと消えている。

 ページのめくれる音だけが、静かに響いていた。

 ノエルは立ち尽くしていた。

「……ここ、どこ……?」

 返事の代わりに、声がした。

 幾重にも重なった、古びた響き。

「さあ、全てを受け入れよ。お前は我となるのだ。知識こそが、お前の居場所だ」

 黒い霧のような手が、本棚の間から伸びる。

 それは、ノエルの小さな腕を掴み、引きずり込もうとした。

「いやっ! いやぁああっ!」 「パパ!ママ!助けて……!」

 泣き叫ぶノエルに、亡霊は囁きかける。


 亡霊:「無駄だ。お前は誰からも求められていない。前世を見ろ! ブラック企業の薄暗いオフィスで、お前はたった一人で死んでいったではないか! 誰もお前の過労を気にも留めなかった! 孤独がお前の本質だ! 知識は裏切らない。お前を孤独から救う!」


 前世の記憶――

 徹夜明けの冷たいデスク、倒れこんだキーボードの感触がノエルの脳裏にフラッシュバックする。

 恐怖にノエルは身を縮こませた。

 その瞬間、遠くから、何かを叫ぶ声がこだました。

『お空の絵を!』 『世界一ノエルらしいクッキー!』

 ルカの必死な叫びが、知識の渦をわずかに切り裂く。

 ノエルが顔を上げる。

 闇の中に、淡い光が差し込んだ。

 光の中、ふわりと落ちてきたのは、一枚のクッキー。

 焦げて、少し欠けて、でもどこか懐かしい匂いがする。

「……これ……」

 パパの優しく、不器用な声が響いた。

  ザバロス「ノエル、パパだ。パパのクッキー……まずかったか……?

 でもな、お前が『おいしい!』って笑ってくれたから……パパは……」

 その声は、温かくて、涙が出るほど懐かしかった。

「パパ……!」

 ノエルの目から、涙がこぼれた。その瞬間、黒い霧が一歩、後ずさる。

 亡霊「何故だ!知識の喜びには勝てぬはず!」

 ノエルは、前世の孤独な記憶と、今目の前にある温かいクッキーの記憶を対比させる。

 ノエル「違う! 孤独なんかじゃない! わたしには、パパとママがいる!

  マズイけど、あったかいクッキーを焼いてくれるパパがいる!

  わたしを呼んでくれるルカくんがいる!」

 目の前に広がる記憶の光景。

 小さな厨房、粉だらけの床。

 大きな魔王が、不器用にボウルを混ぜていた。

 焼きすぎて真っ黒なクッキーを前に、途方に暮れる背中。

 けれど、その時のノエルは笑っていた。

「パパ、まっくろ! でもパパ!、これ、おいしいよっ!」

 ザバロスはぽかんとしたあと、泣き笑いのような顔をした。

 ――それが、ノエルの“原初の記憶”だった。

 ノエル「パパのクッキー、あたたかかったのです。 わたし、それが、だいすきだったのです……!」

 ノエルは、知識の渦に背を向け、光の中へと駆け出した。伸ばした手が、闇を切り裂く。

 ノエル「もう、わたしは誰にもなりたくない! わたしはノエル! パパの娘なのです!」


 現実世界。

 玉座の間で、黒い魔力が叫びを上げた。

 ノエルの身体から、影のような魂が引き剥がされ、空中で霧散していく。

 一瞬の閃光、そして静寂。

 ノエルは、ザバロスの腕の中に、ゆっくりと意識を戻した。

「……パパ……?」

「ノエル!!」

 ザバロスは、崩れ落ちたノエルを抱きしめる。

 儀式によって疲弊しきった彼の体からは、魔力がほとんど失われていた。

「ノエル、無事か!?」

 アストレアが駆け寄る。

  「……ママ……」

 ノエルは小さな手で、パパとママの顔に触れた。

「よかった……わたし、パパとママのこと、ぜんぶ覚えてるのですっ!」

 その時、ノエルは、床に座り込んで涙を拭っているルカに気づいた。

 ルカの手には、ボロボロのお絵描き帳。

「……ルカくん! どうしたの? そんなに泣いて!」

  「……っ! ノエル!」

 ルカは泣き笑いの顔で立ち上がり、ノエルに飛びついた。

  「よかった……よかったよ、ノエル!」


 エピローグ

 事件から数日後。

 魔王城には「スイーツ(チョコ)禁止令」が出され、

 ザバロスは仕方なく、ノエルと一緒にマグマクッキーを焼いていた。


「ノエルよ……世界征服はまだ諦めていないぞ……!」

「もう、パパってば、うるさいのですっ!」

 いつもの日常が戻ってきた。

 ノエル「ルカくん! このマグマクッキー、焦げてるけど、すっごくあったかいんだよ!」

  ルカ「へへ、知ってるよ。世界一、マズくて、世界一あったかいクッキーだもんな。」

 二人は笑い合った。

 ノエルは、もうパパに振り向いてもらうために『すごい知識』を探す必要はない。

 お絵描きとおやつ、そして大切な家族と友達がいるだけで、充分幸せなのだと知ったから。

 今日も、ノエルはルカとお空の絵を描いている。

 パパは相変わらず世界征服を唱えているが、その声は以前よりずっと小さく、優しい。


 ――魔王の娘に転生したけど、パパが世界征服しろってうるさいんです!

(それでも、わたしは世界征服より、パパのいる今が一番いいのですっ!)


 完


最後まで読んでいただいた方

ありがとうございました!

その後談を書くかもしれませんし

書かないかもしれません。

1話から読んでくださっていた方、読みづらいストーリーで申し訳ありません

と同時に、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ