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財閥令嬢と伯爵令嬢の魂の入れ替わり  作者: ヴァンドール


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41話(幸せな報告)

 月が明け、お父様とお母様がこちらの国にやって来た。空港にお兄様と一緒にお出迎えに行って待っていると、まもなくお二人が揃って現れた。そして私に向かい

「美優、元気そうで安心したわ」

 とお母様が言うと、今度はお父様が

「暫く見ない間に益々綺麗になったな」

 と仰った。私は照れながら

「はい、私は元気です。お父様とお母様もお元気そうで良かったです」

 と返した。

 すると今度はお兄様が

「お父さん、お母さん、暫くぶりです」

 と挨拶された。そしてお父様は

「一馬のお陰でこちらの会社も随分と業績が伸びていると聞いているぞ」

 と仰って、お兄様を労った。そうして私たちは住まいへと四人で向かいながら、車の中でたわいのない話をした。

 住まいに着くと、まずお母様が

「まあ! よくこのピアノがお部屋に入ったわね」

 と、真っ先にピアノが目に入り驚かれていた。するとお兄様が

「実はこのピアノのほとんどは中で組み立てることができるのです」

 と言うと、お父様が

「今は色々と考えて作られているのだな」

 と感心なさっていた。そしてマーサーにお茶を入れてもらいながら、また、たわいのない話が続き、お母様に突然

「美優、せっかくだからこのピアノの音色を聴かせてちょうだい」

 とお願いされた。私は

「では、曲は私にお任せください」

 と言ってピアノに向かった。そしてこちらに来て初めて弾いた曲を選び、弾き始めると、お父様とお母様は驚いたお顔をなさりながら静かに聴いていた。そして私が弾き終わると、お兄様も一緒に拍手をしてくださった。

「美優、こんな曲も弾くようになったのね」

 とお母様が言うと

「前によく弾いていた曲も良かったが、これはこれでクラシカルでいいな」

 とお父様が仰った。するとお兄様が

「私も最初こちらに来た時に聴いて驚いたんですが、美優は前に弾いていた曲は思い出せないと言って、最近ではこの曲調ばかりなのです」

 と教えた。すると二人とも不思議なお顔をなさりながら

「いつ覚えたのかしら?」

 と考えていたが

「まあいいわ、こうして美優が楽しそうに暮らしているのなら」

 と言って下さった。

 そしてその夜は、この部屋のある建物の中のレストランで食事をすることになっている。そこは私が初めてここへ来た時にお兄様が連れていってくれたお店だった。

 夜になり、四人で楽しく食事をしながら話をしていると、お父様が言いにくそうに

「そういえばこの前、大和君のお父さんに会ったんだが、美優との付き合いは普通の幼馴染としての付き合いになったと聞かされたが」

 と言われ

「実は」

 と私が話そうとしたら、お兄様が

「本当はもう少ししてから話そうと思っていたんですが」

 と言って二人に話を始めた。


「美優のことはずっと妹だと思い接してきたつもりでしたが、こちらに来てからすっかり変わってしまった美優を見ていたら、私が守ってやらなくてはと感じるようになり、自分の気持ちに変化がありました。気づけば妹としてではなく一人の女性として好きになっていたんです」

 と言ってくれた。そしてそれは美優もそうだと言ってもらい、今、私たちは付き合いを始めたところです、と伝えてくれた。私はお兄様の隣でじっと話を聞いていた。

 するとお父様が

「そうか、やはりそんな気がしていたよ」

 と言われた。不思議そうにお父様を見ると

「電話での一馬の話の中心が美優だったからな。前は仕事の話がほとんどだったのにな」

 と言った。そう言いながらお父様は

「美優自身も一馬が好きなら何の問題もないのだが、もしこれから先美優が記憶を取り戻して元の美優になった時に、お互い今の気持ちを持ち続けられるのかが心配なんだが」

 とも仰った。

 確かにそう心配するお父様たちの気持ちは理解できる。ただ私は美優さんではない、だから戻ることはないのだけれど、三人はそれを知らない。だから心配する気持ちは仕方がない。そう考えていたら、お兄様が

「その時はその時です。それを恐れて別れてしまう方が辛いので、それだけはしたくはありません」

 と言ってくれた。そして

「きっとその時には私自身も変わっていて、そんな美優のことも好きになれそうな気がします」

 と言ってから

「でもその時、美優の方からやっぱり無理だと言われたら、その時は潔く諦めます」

 とも言ってくれた。それを聞いていた私は

「絶対そんなことにはなりませんから」

 と口走っていた。

 そんな私たちの様子を見ていたお母様は

「そうよ貴方、二人がこう言ってるのだから、そうさせてあげましょう」

 と言って下さった。私はそれを聞き

「ありがとうお母様」

 と口にした。それを見ていたお父様は

「それもそうだな」

 と同意してくれた。こうして二人への報告を無事終えた私たちは、ホッとしながら顔を見合わせていた。そしてお父様とお母様は、本当はずっと前からこうなったらいいと話していたことを教えて下さった。そんな幸せな気持ちに浸りながら私たちは住まいへと戻り、この日は随分と遅くまで語り合った。



《そんな様子を見ていた神様は『こちらの二人は幸せを掴んだが、問題はもう一人の方だな』と溜息をついていた。そして暫くはもう一人のステーシアこと元美優を見守っていかねばと思っていた》


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