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財閥令嬢と伯爵令嬢の魂の入れ替わり  作者: ヴァンドール


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23/47

23話(成果)

 半月ほどかけてようやく目的地、隣国の王妃様の祖国へと到着した。

 こちらに着くといきなり気温が低くなった気がして、聞いていた以上に寒く感じた。

 港では王妃様に指示されたのか多くの出迎えを受けた。

 そして大きな馬車に乗り王宮へと着くと王妃様のお兄様である、この国の国王陛下が出迎えてくれた。

 殿下は慣れた様子で難なく挨拶を終え、わたくしのことも紹介してくださった。

 すると王妃様から聞いていた商品が気になるのか

「早速だが、商品を見たいのだが」

 と仰った。わたくしは心の中で『なんて性急な方かしら』と思いながらアンに指示をして持ってきた商品を並べてこちらの言葉で説明させていただいた。

 すると色々と質問をされ、製造方法まで聞かれたが、それに関しては企業秘密とも、機密情報とも取れる言葉を使いやんわりとかわした。

 すると殿下もこちらの言葉は難しかったと言っていたが、少し分かるようで

「その受け答えで正解だ」

 と褒めて下さった。こちらの国王陛下はなかなか策士な方のようで、残念なお顔をなさっていた。

 わたくしは早速陛下に持ってきたトリートメントと固形スープの素をお渡しして

「まずは女性の方たちに使って頂き、その後、感想をお聞かせ願えればと存じます」

 と言ってからアンに使い方の説明をお願いた。

 アンには前もってこちらの言葉での説明の仕方を勉強してもらっていた。

 そしてわたくしはその間、国王陛下に付箋の使い方を説明させていただいた。

 陛下は

「これは気に入った確かに便利だな」

 と仰りつつ、何度も付けたり剥がしたりを繰り返していた。

 それからしばらくすると陛下に言われてトリートメントと固形スープの素を使った女性たちが戻られて陛下に

「これは本当にすごいです。まるで髪の毛に栄養が入ったようで触り心地がとてもいいです」

 と言って下さり他の女性の方たちも

「このスープの素は本当に手軽なのにとても美味しく便利な物でした」

 と、この方も満足して下さった。

 それをお聞きになられた陛下は

「それでは全て、我が国に輸出して欲しい」

 と言って下さった。そこでわたくしはそのお礼として、ひとつのアイデアを披露させていただくことにした。

 それはこちらの国に来て気づいたことなのですが、外が寒いせいなのか部屋の中で読書をする方たちが多いように感じられた。だからなのだろう、本棚がとても多く見受けられた。

 わたくしたちの国では王宮内の本は全て図書室にあるが、こちらの国では休憩スペースには必ず本棚があり、たくさんの本が揃えられていた。

 それを見てわたくしは前の世界では当たり前にあった棚の高さを自由に変えられる本棚を提案させていただいた。

 本には色々なジャンルがあってそれにより本の厚さはもちろん、高さもそれぞれだ。だから本の種類に応じて高さが変えられれば便利ではないかと思った。  

 すると陛下は

「自分で自由に高さを変えることなど出来るのか?」

 と仰ったのでわたくしは

「はいこれからご説明させていただきますので、どうぞ本棚を作る職人さんたちをお呼びいただけないでしょうか」

 とお願いした。すると陛下はすぐに側にいる従者に職人たちを集めさせた。そして揃ったところでわたくしは皆さんに

「まずは左右の板に穴をいくつか開けてそこにきちんとハマる大きさのピンのような物を作り差し込みます。

 そして好きな高さの位置の穴にピンを四箇所指してその上に棚を載せれば完成です」

 と言いながら実際に穴を開ける位置と個数を示した。そして棚のピン位置に同じ大きさの窪みをつければ安定します。それを聞いていた方たちは

「なるほどこれなら簡単に高さを変えることが出来る。これは名案だ」

 と口々に言っていただいた。それからわたくしは

「これは本棚だけではなく食器棚でも同じです。是非試してみて下さい」

 と言うとみなさん

「なるほど、棚という棚に同じことが出来るというわけか」

 と言って、驚かれていた。

 陛下も側でとても感心なさって聞いていらした。

 すると殿下がわたくしの耳元で

「こんな名案を易々と」

 と仰ったので、わたくしはこれは一度見たらいくらでも真似できますからと言うと

「それはそうだな」

 と納得していらっしゃった。

 それよりもこちらの陛下に感謝いただければ、これからの親善に役立つのではと進言させていただいた。

 こうしてわたくしたちはこちらに来た目的を果たすことができて束の間ホッとしていると陛下が

「本日は色々と興味深い品々を感謝する」

 と仰った。そして今夜は宮殿で歓迎として晩餐会を用意させたので楽しんで欲しいとも仰った。


 わたくしは晩餐会に参加するためアンに支度を整えてもらい殿下にエスコートしていただきながら会場に入った。

 わたくしたちが会場に入ると大勢の人たちが歓迎の拍手で迎えてくださり、彼方此方で感嘆の声が聞こえる。そんな中、殿下はわたくしの手を取りいきなりダンスを踊り出したのでわたくしは内心焦ったが、顔には出さずになんとか乗り切れた。

 そんなわたくしたちに陛下は

「とてもお似合いですな」

 と言われ、微笑みかけて下さり

「今度は是非、そちらの国にもお邪魔したいものですな」

 と仰った。それに対して殿下は

「それは光栄なことでございます。是非、お越し下さい。心より歓迎させていただきます」

 と返していた。

 その夜、従者やアンも一緒に皆で晩餐会に参加させていただき夜遅くまで楽しんだ。

 そして次の日はこちらの国を色々と案内してもらいながら親善を深めた。

 こうして一通りの日程をこなしてわたくしたちはまた長い帰路につくことになった。帰り際、陛下は

「名残惜しいですな」

 と仰った。そのお言葉が今回の目的の成功を意味しているようで嬉しく感じた。

 最後に殿下は陛下と固い握手を交わしてまたの再会を約束してこちらの国を後にした。

 帰りの船で殿下はわたくしに

「今回は本当によくやってくれた」

 と感謝の言葉を仰って下さった。わたくしはそんな殿下に

「殿下がいたからこそ、なんの不安も感じることなく乗り切れたのです」

 と本心からわたくしの感謝の気持ちをお伝えさせていただいた。

 すると殿下は何故かわたくしのことを抱きしめてきて

「そう言ってもらえて嬉しい限りだ」

 と仰った。わたくしはこの行動は前の世界でいうところの挨拶のハグと同じ意味合いよね、と思い黙って応じていた。

 そして長い長い旅は終わりを告げた。


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