2話(神様の手違い)
神様は少々焦っていた。何故ならそれは魂を戻す相手を間違えてしまったから。
綺麗な川のほとりに辿り着いた若い女性の魂がふたつ、それは光り輝き、閃光を放っていた。
そんな光り輝いている魂を川の向こう側へは送れない。
よって、その川を渡るには未だ早すぎると判断した神様はその魂を元に戻すはずだったのですが、なぜかそのふたつの魂は川のほとりで弧を描き、それぞれ来た道をまるで交換でもしたかのように戻って行った。それを止めようとした神様は片方の魂を追いかけながら、もう片方の魂も気にしていたせいで結局、両方とも見失ってしまいました。
そうなるとその魂は、元の本人の身体ではなく、別の身体に入ってしまうことになる。つまりは記憶はそのままで、自分が別の誰かの身体を持つことになってしまう。
その上その二つの魂は、全く逆の方向へ向かって行ったので、今までいた次元の過去と未来が真逆の世界となってしまう。
さてどうしたものかと神様は悩んだ。しかし、今となってはもう遅い。せめて二人が残りの人生を幸せに暮らせるよう祈ることしかできません。しかし、普通は神様に祈るものだが神様は誰に祈りを捧げたのでしょうか? と疑問に思ったが、今は考えるのはやめておきましょう。
そしていつかその二つの魂が同時期に幸せを感じることができたなら、その時お互いに交信を取ることができるのですが、それはかなり確率が低い。そしてその交信でお互いが望めば本来の自分の身体に戻ることも可能なのですが、そればかりはその時にならなければ分からない。それに、二人が共に不幸になることだって十分に有り得るのだから。
それ故、神様はせめて二人に言葉の自由を与えた。かつてのバベルの塔による言葉の壁を取り払うことくらいしか出来ない神様は、二人がどこへ行ってもその国の言語でコミュニケーションが取れるように計らった。
そう、二人はこれから何処の国に行こうとも、その国の言葉が話せるし、理解もできるのだった。それは勿論、読み書きも出来るということだ。
これが神様からのせめてもの償いでした。
そしてそんな二人はお互い
『自分がこちらの世界にいるという事は、前の世界での自分は死んでしまっているのだろう』
と思い込んでいるのでした。




