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財閥令嬢と伯爵令嬢の魂の入れ替わり  作者: ヴァンドール


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19話(付箋)

 わたくしは王宮から戻り、早速伯父様と伯母様、従兄のお兄様に王妃様からのお話を伝えた。

「王妃様は隣国やまた、そのお隣の国への商品の輸出を希望されていますが、そうなるとかなりの量になります」

 と言ってから付箋の話も含めての説明をした。そして

「王妃様は生産場所を拡大するか新しく作るのなら、そのための資金提供もなさって下さるそうです」

 と伝えてから改めて

「わたくしの考えなのですがせっかくなので新しく、カンパニーを興し、そこで生産をしたら利益はそのまま新しいカンパニーの物になるのではありませんか?」

 と提案すると、皆さんはとても驚いていた。そしてお兄様に

「いつの間にそんな付箋という新しい物を作っていたのだ?」

 と聞かれたので、わたくしは

「いえ、別に隠すつもりはなかったのですが、まさか殿下が仰るような使い道があるとも思っていなかったので、自分専用に使っていただけです」

 と答えながら、本に挟んであった付箋を三人に、剥がしてから貼り直す様子をお見せした。

 すると三人共不思議そうな顔をなさったので、わたくしは簡単に作り方を説明すると、お兄様が

「よく思いついたな」

 と、とても感心してくれた。わたくしは心の中で『わたくしの前の世界では普通に売っていた物です』と呟いた。

 そして、伯父様は

「そうは言っても貴族が直接商売をするのは世間的にはうるさい。やはり投資という形をとって別の者にカンパニーをやらせてはどうか?」

 と仰ったので、わたくしは

「それでは今まで同様、利益の大部分を持っていかれます。それに今回のカンパニーの立ち上げ資金は王妃様が直接お出しくださるのですから、他の貴族達も納得なさるのでは?」

 と言わせてもらった。すると伯父様は

「確かに王妃様肝いりということならば納得するか」

 と不安気に仰った。そこでわたくしは畳み掛けるように伯父様に

「産業革命後、時代は大量生産に動いているのです。貴族だからといってそれを看過していたら、あっという間に時代の波に乗り遅れてしまいます」

 と捲し立ててから

「現に没落貴族が増えているではありませんか」

 と言うと、伯父様は観念したように

「まあ、王妃様に頼まれたということで会社兼工場を建てることにするか」

 とついに折れてくださった。その様子をずっと黙ったまま聞いていた伯母様は一言

「貴女は本当にあのステーシアなの?」

 と不思議そうに呟いたので

「はい、間違いなくわたくしはステーシアです。高熱のお陰で本来のステーシアに戻ったとお考えください」 

 と言わせてもらった。すると伯母様は 

「まあ、確かに今の貴女はとても逞しいから安心して見ていられるわ」

 と仰ってくださった。


 こうして遂に会社兼工場のことは全てわたくしに一任された。

 その後わたくしには少し考えがあったので、それを伯父様達に伝えようとすると

「今回の件はステーシアが持ってきた話だ。だから好きなようにするとよい」

 と仰っていただいたので、早速元のカンパニーに行ってわたくしの考えを会社の方々に伝えた。

 やはりよくよく考えるとわたくしは一から会社を作り、工場を建てるには時間がかかり過ぎてしまうので、今まで使っていた工場を拡大して、利益はわたくし達が新しく作る会社を子会社としてもらい、その新しい子会社と元々のカンパニーとでお互いが納得する数字で配分をすることにした。これなら商品を作りながら工場を大きくできる。その上、伯父様が気になさっていた表向きに貴族の名前は出ずに済む。もし叩かれたら、その時は王妃様のお名前をお借りすれば良いと考えた。 

 カンパニーの方は

「元々のアイデアはステーシア様の物なのでこちらはそれで何の異存もございません。配分比率も其方に従います」

 と言ってくれた。

 こうして全ての契約を取り決め、後は伯父様の方の弁護士に目を通してもらい承認されればひとまず安心だ。


 わたくしは侯爵家に戻り、皆さんに、やはり一からの立ち上げは時間がかかり過ぎてしまうので今回は子会社という形をとったこと、そして配分率を説明した。

 すると、伯父様は

「直接我が家の名前が表に出ることなくできたことは正直安心した」

 と仰った。わたくしは

『そんなに貴族が商売したらいけないのかしら?』

 と思ったが口にはしなかった。 

 やはりこの時代はまだまだ閉鎖的なんだと納得するしかなかった。そしてその中で生きてきた人達の意見も尊重しなければと思ったからこその提案だった。ここはわたくしが前にいた世界ではないのだから。


 数日後、わたくしは王妃様にお手紙を書いた。その内容は、時間短縮のため、新たな工場建設はやめて今まで製造していた工場を、作業を中断することなく拡大することとして、利益は今までのカンパニーの新しい子会社が元々のカンパニーと話し合いのもと配分することになったと伝えた。そしてそれによって発生する拡大のための資金の調達をお願いしたいと書き添えた。 

 それからまもなく王妃様からのお返事が届き、先日の件は陛下も了承しているとのことだった。そしてそれとは別に頼みたいことがあるので、都合の良い最短の日に王宮に出向いて欲しいと書かれていた。それを読み終えたわたくしは早い方が良いと思い、早速王宮へと向かい王妃様への謁見を願い出た。すると何故か其処には王弟殿下がいらして

「思ったより早かったな」

 と仰った。わたくしは心の中で『近々とはこのことかしら?』と思いながら

「王妃様のご用件とは何でしょうか?」

 と尋ねると

「今から案内するが、君には私と一緒に隣国の王妃様の祖国へと行ってもらいたい」

 と言われた。わたくしは驚きながら

「何故わたくしが?」

 と尋ねると、殿下は

「君は彼方の国の言葉が分かるからな」

 と言われた。わたくしは心の中で『あの日の舞踏会で思わず口を開いた時』を思い出し、後悔していた。そして殿下はそんなわたくしに

「今回の仕事は陛下より私が頼まれたので君に同行する」

 と仰った。

 その後、わたくしは王妃様から正式に今回の通訳の仕事を依頼されたが、勿論断るという選択肢は与えられるはずもない。思わず『あー往復何日かかるのかしら? 飛行機のまだ存在しない此方の世界では、やはり船旅ということになるのよね』と溜息が出てしまった。そして『わたくし船酔いするから船は苦手なのよね』と呟いていた。

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