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財閥令嬢と伯爵令嬢の魂の入れ替わり  作者: ヴァンドール


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17話(すれ違う想い)

 自分の気持ちに気づいてしまった私はどうしても美優にその気持ちを伝えたくて会おうしたが、いくら美優を誘ってもなんだかんだと理由を付けられては断られてしまう。だったら今日は美優にラインで『寮の出入り口に六時に迎えに行くから待っていて欲しい』と聞くのではなく、決定事項のように送った。

 少々強引だとは思ったが、そうでもしないと中々会ってくれない。

 そしてその後は返信がきても既読はつけないでおけば必ずや、来るはずだ。

 よし、今日こそはやっと会えると思っていたのに、よりにもよって大和も一緒に連れて来た。大和だけ帰すわけにもいかないので、仕方なく三人での食事会となってしまった。

 何も知らない大和は

「一馬さん、お久しぶりです。今日はお招き頂き、ありがとうございます」

 と言っている。『お前など招いたつもりはないのだが』と思いつつも

「やあ、暫く。元気そうだな」

 と返すと、今度は美優が

「お兄様、一人でも多い方が賑やかでいいと思ったので大和さんにも声をお掛けしました」

 と言っている。私は心にも無く

「そうだな」

 と一言だけ返した。

 車で目的地に向かい、店へと入り

「すまない、もう一人追加で頼む」

 と店の者に言って席につくと、二人は並んで私の前の席に座った。そして

「大学の方はどうだ? 楽しく過ごせているか?」

 と尋ねると、大和が

「はい、思っていた以上に快適にやってます」

 と答えた。『別にお前に聞いてないのだが』とは言わずにおいたが。

 何だか美優がよそよそしく感じるのは気のせいか? すると美優が

「そういえばお兄様、香苗さんはお元気ですか?」

 と聞かれ

「何故ここで香苗の名前が出てくるのだ?」

 と少し腹立たしい思いで聞いた。すると

「先日女子寮の方に訪ねて下さってお兄様が心配しているのでたまには会ってあげなさいと言われました」

 と告げられ、心の中で『余計なことを』と思っていると美優から意外なことを聞かされた。

 それは訪ねてきた香苗のことが誰だか分からなかったが、余りに親しげに話しかけられたので記憶を無くしてしまったことを話すと『一馬さんから聞いてはいたけれど私のことも思い出せないのね』

 と言われ、そして香苗さんはお兄様や私とお友達だと教えて下さいました。と言ってから

「もしかして香苗さんはお兄様のことお好きなのではありませんか?」

 と聞かれた。驚いた私は

「そんなことあるわけないだろう! ただの取引先の娘だ」

 と返すと

「何で怒るのですか? でも香苗さんはお兄様のことをお慕いしている気がしました」

 と言われてしまった。思わず私は何に腹を立てているのだろうと考えていた。

 そしてあまり中身の無い話で終始してしまい、三人での食事会も終わり、私はまず大和を先に男子寮へと送り、その後美優を女子寮に送りながらやっと二人きりになれたと思い美優に

「なんか、最近私を避けていないか?」

 と尋ねると

「そんなことはありません、ただお友達とのお付き合いや勉強が忙しかっただけです」

 と返された。それならと

「では今度の休みはまだこの街で行ったことのない場所を案内しよう」 

 と言うと

「では大和さんの都合も聞いておきます」

 と言うので思わず怒った口調で

「そんなに大和と一緒にいたいのか?」

 と言ってしまった。すると

「別にそういうわけではないのですが」

 と困ったような表情をさせてしまった。

『そんな顔させたいわけではないのに』

 と後悔しながら

「分かった。だったら美優が気が向いたら連絡してくれ」

 とだけ告げてその場を後にした。結局何ひとつ伝えることも出来ないままで。

 『本当に私は何をやっているのか』と溜息が出た。



 お兄様に送って頂いた後、可愛げのない自分が嫌で涙が頬を伝わった。

 『何故もっと素直になれないの?』と自問自答をした。

 先日訪ねて来られた香苗さんのことも気になっていて、せっかく私のために用意して下さった食事会を気まずい雰囲気にしたくないので大和さんを誘ってしまった。


 いつでも私のことを一番に考えて下さるお兄様、それなのに私はなんてひどい態度を取ってしまったのかしら。

 今度会った時にどんなふうに接したらいいの? 今の私にはわからない。

 だからといって私の本心を伝えることは、生涯許される関係ではない。思わず『あー私は本当はステーシアなのに』と叫びたかった。

 だったら気持ちを伝えることも許される。そして断られたなら諦めもつくのに。それさえも出来ない自分が悲しすぎる。 

 その時私は神様を恨んでしまった。



《この時の美優は一馬とは血の繋がりが無いことをまだ知らない。だから神様を恨まないでほしいと願う神様だった》


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