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財閥令嬢と伯爵令嬢の魂の入れ替わり  作者: ヴァンドール


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12話(新生美優)


 いよいよ大学の寮に移る日が決まり、お兄様の住まいでお世話になるのは今日で最後になる。明日からは大学の寮へ移り、そちらから大学へと向かう。今日はお兄様と大学生活に必要な物を買うために出かける約束をしていた。

 だいたいの物は彼方からも送ったし、こちらに着いてからも少しずつ買い揃えていたので私としてはもう充分なのにお兄様は

「大学に通うにはもう少し洋服を買っておこう」

 と言って譲らない。私は

「これだけあればもう充分です」

 と返しても全く受け付けてもくれない。そういうわけで今、一緒にブティックというところで洋服を選んでいるところですが、お兄様の選んで下さる洋服はとても目立つ物ばかりで私としては少々引き気味だった。

 そんな様子を察してくれたのか

「今度は美優の好きな服を選んでごらん」

 と言って下さったので私は

「こちらの服など好みです」

 と言って、指差した服を見たお兄様は

「随分と地味だな。本当にこれでいいのか? まあ、これはこれで清楚なのかもしれないがな」

 と言われたので、すかさず私は

「それではこちらでお願いします」

 と返した。そしてその後も色々な物を買って下さり、今は近くのカフェというところで休憩を取っている。

 しばらくたわいのない会話をしているとお兄様は

「そういえば、大和は来週にはこちらに来るそうだよ」

 と言われたので私は

「お婆様はもう大丈夫なのですか?」

 と聞くと

「大分元気になられたそうだ」

 と教えてくれた。そしてお兄様から

「大和から連絡はないのか?」

 と聞かれたので私は

「連絡ですか?」

 と聞き返すとお兄様は

「もしかして携帯は確認してないのか?」

 と言われたので、そのままバックに入れたままのスマホという物を手渡すとお兄様は

「ロックを解除してくれ」

 と言われたので私は鈴さんに教えてもらった暗証番号とやらを入れてお兄様に渡した。

 すると

「美優、こんなにLINEや着信がきているではないか」

 と呆れた様に言われた。そこで私は音が出ないようにしたままバックに入れっぱなしにしていたことを思い出した。

 お兄様からは

「大和も可哀想に、後できちんと返信しておきなさい」

 と言われてしまった。私はこのスマホとやらは辞書代わりにしか使っていなかったので連絡手段でもあることを忘れていた。

 その後はお兄様に言われた通り大和さんに事情を説明した文を送って謝まりの言葉も入れた。するとすぐに返信がきて安心したと書かれていた。

 悪い事をしてしまったなと反省をしながら、このスマホは常にチェックするものだとお兄様に教えられた。そして、お父様とお母様からも着信が入っていたので連絡をしたら『だいたい検討はついていたので一馬に連絡して元気な様子を聞いていたから大丈夫よ』と返されてしまった。思わず私は『スマホって便利なようで不便な物だわ』と思ってしまった。


 そして翌日、お兄様に車で大学の寮まで送っていただいた。

 私はこれから始まる大学生活というものに期待で胸を膨らませながらもお兄様と別々に暮らすことに一抹の寂しさを感じた。 

 別れ際、お兄様は

「美優、買いたい物があったらこのカードで買うんだよ。使い方は何度も説明した通りだ。遠慮などしなくていいからな。それからスマホは定期的に確認するように」

 と言われ去って行かれた。

 その後、私は所定の手続きを終え、これから暮らすことになる部屋へと入った。

 そこはとても明るく思っていたよりもずっと広いお部屋だった。 

 私は持って来た物の収納やら片付けをしながら部屋で過ごしていたが、部屋の周りに何があるのか把握するために部屋を出てあちこちと見て回った。

 するとやはりこちらの学生であろう女性達何人かとも遭遇したのでお互い挨拶を交わし合った。

 皆さん色々な国からの方たちで基本言語は同じだったが、早口になるとそれぞれ、自分の国の言語が飛び出していた。

 その時は私の方からその国の言語で話しかけると、とても驚かれたが、その後はとても親しみを持って接してくれた。

 その時ようやく私は自分の持っているこの能力はこちらの世界に来たことによって与えられた能力だと理解した。

『きっとこの能力は神様から与えられたギフトのようなものなのだわ』と。


《その能力は神様からのギフトというよりも本当は償いだということをこの時の美優こと元ステーシアはまだ知らなかった》


 その後、週が明けいよいよ大和さんもこちらの国へとやって来た。

 あれ以来、私はきちんとスマホをチェックする癖もつけていたのでお父様やお母様、それにお兄様と大和さんからの連絡は定期的に取っていた。

 久しぶりに会う大和さんはとてもお元気そうで、やはりお婆様が快復なさったことが何より安心感を与えたのだと思った。

「美優、久しぶりだね。こちらでの生活はどう? 少しは慣れた?」

 と聞かれたので私は

「はい、何人かお友達もできました」

 と答えると

「そうか、もう友達もできたのかそれは良かった。安心したよ」

 と仰ってくれた。なんでも大和さんはあの高熱以来変わってしまった私がすっかり人見知りになったように感じて心配してくれていたそうだ。

 そんな大和さんに私は

「色々とご心配下さりありがとうございました。まだ記憶は戻りませんが私なりに楽しく過ごしていますのでもう大丈夫です」

 と伝えると

「そうか、それなら良かった。僕は今の美優も好きだよ」 

 と言われ、私はその好きがどういう意味の好きかは分からなかったが 

「ありがとうございます。そしてこれからも宜しくお願いします」 

 と返した。すると

「嫌だな、そんな改まって」 

 と言われたので

「ですが前の私がどんなふうに大和さんと接していたかが分かりませんので」

 と答えた。すると大和さんは

「そうだなこれからは前の美優とは比べない。新生美優として付き合っていくよ」

 と仰ってくれた。そしてそんな大和さんに私は

「ありがとうございます。その方が私も気が楽です」

 と返したのだった。


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