グローバリズムは必ず崩壊する
今日の世界を語る上で、グローバリズムを抜きにすることが出来ないのは誰もが認めるところだと思います。
そして、ごく一部を除き、グローバリズムの理想と現実があまりにも食い違っていたことを認めざるを得ない人も多いと思います。
以下が、グローバリズムが本来目指した理想です。
・経済的な繁栄
国境を越えた自由な貿易や投資によって、経済成長を促進し、人々の生活水準を向上させる。
・文化交流の促進
多様な文化が互いに触れ合い、理解を深めることで、より豊かな社会を築く。
・平和と安定
経済的な相互依存関係を深めることで、紛争のリスクを減らし、平和な世界を実現する。
・国際協力の強化
国際機関や多国間協定を通じて、地球規模の課題に共同で取り組み、より良い世界を築く。
・技術革新の加速
知識や技術の自由な交流を促進し、イノベーションを加速させる。
これがどうなったでしょうか?
・経済的な繁栄
一部の大企業と国際金融資本、株主が儲かっただけで労働者や一般市民は置き去り。コスト削減のため安い発展途上国に製造業を移管。それにより先進国の労働者が失業。格差拡大。不満の増加。
・文化交流の促進
負の側面ばかりではないが、そもそも文化が違うとは生活習慣と価値観が違うという事にも直結する。結果、衝突が発生。多文化共生どころか一部では移民が受入国に一方的に自分たちの価値観を押し付ける異文化強制状態に。それに反発すると差別として攻撃される。結果、異文化への理解が進むどころか嫌悪感情が増大。
・平和と安定
相互依存の結果平和が訪れると思ったら、それを理由に政治的武器として使われることに。
中国の日本へのレアアース輸出禁止や、放射能汚染を理由とした海産物の輸入禁止。
最大の例がロシアによるウクライナ侵攻。プーチンはEUはロシアのガスに頼っているため強く出られないとふんだ。仮にウクライナが数日で陥落していた場合、政治的に非難はしても経済的繋がりは再開していた可能性が極めて高い。実際、ロシアのガスを頼れなくなったために欧州市民は高いガス代により生活が苦しくなった。
・国際協力の強化
上記のロシアによるウクライナ侵攻によりおじゃん。移民や異文化への嫌悪から移民の輸出国への悪感情増加。ヘイト犯罪増加。それによる国家間の関係悪化。協力以前の問題に。
・技術革新の加速
技術が加速したのは一部の国家のみ 例)アメリカ、中国。アメリカが各国の優秀な頭脳を集めてそれ以外の国は特別技術が発展したわけではない。中国はグローバリズムを理由に各国に自国民を輸出。現地の技術を奪って労力をかけることなく最短最速で技術を習得。 例)AIのDeepSeek。ChatGPTの技術を丸コピして作ったとも言われる※確実な根拠無し。ただ何もないところからいきなり作成可能か甚だ疑問。使っているとchatGPTと答えたとの報告あり。
理想と現実は違うとは言いますが、これほどの差異が生まれてしまいました。
そして今、コロナの流行とトランプ大統領の関税政策。各国の保守傾向の高まりと共に現代グローバリズムは終焉を迎えようとしています。少なくとも、かつてのように活発になる事はないのではないでしょうか。
では、こうしたグローバリズムの終焉は現代に起きた特有の現象なのでしょうか? 実はそうではありません。過去に何度も起こっていたのです。
1. 青銅器時代の崩壊 (紀元前1200年頃)
2. ローマ帝国の衰退と崩壊 (3世紀〜5世紀)
3. モンゴル帝国とペスト(黒死病)の世界的流行 (14世紀)
4. 1929年の世界恐慌
5. 1997年 アジア通貨危機
一つ一つ見ていきましょう。
1.青銅器時代の崩壊 (紀元前1200年頃)
古代における「グローバル経済圏」の崩壊として最も劇的な例の一つです。
紀元前13世紀頃の東地中海世界(現在のギリシャ、トルコ、シリア、エジプトなど)では、ヒッタイト、エジプト新王国、ミケーネ文明などの大国が非常に緊密な交易ネットワークを築いていました。
キプロス産の銅、アフガニスタン方面からの錫(青銅の製造に不可欠)、エジプトの穀物、ミケーネの陶器やオリーブオイルなどが、海路を通じて活発に取引されていました。
各国は自国で産出しない資源(特に青銅の原料となる銅と錫)を輸入に頼っており、高度に専門化・分業化された経済システムが成立していました。これは一種の「青銅器時代版サプライチェーン」と言えます。
弊害と崩壊のプロセス
この緊密な相互依存の繋がりが、逆にシステム全体の脆弱性を生み出しました。
気候変動による不作、地震などの天災、そして「海の民」の襲来など、何らかの要因で一国の機能が停止すると、ドミノ倒しのように連鎖的に全体の交易網が麻痺しました。
例えば、錫の供給が止まれば、青銅器(武器や農具)が作れなくなり、軍事力も生産力も低下します。一つの部品が欠けるだけで、システム全体が機能不全に陥ったのです。
この後、東地中海世界の主要な文明は次々と崩壊衰退し、文字さえ失われる「暗黒時代」を迎えました。
正に現代の国際社会と一緒だと思いませんか?
グローバリズムだ国際分業で効率化だを叫んだ結果、一つ歯車が欠けたら全体が動かなくなる。国際分業が天災も戦争も起きない事を前提とした、如何に机上の空論かが分かります。
2.ローマ帝国の衰退と崩壊 (3世紀〜5世紀)
ローマ帝国は、地中海世界を一つの巨大な経済圏として統一した「古代のグローバル国家」でした。
「すべての道はローマに通ず」の言葉通り、道路網、海路が整備され、統一された通貨(デナリウス銀貨など)、法制度によって帝国全土が巨大な単一市場として機能していました。
エジプトや北アフリカからは穀物、ヒスパニア(スペイン)からはオリーブオイルや鉱物資源、ガリア(フランス)からはワインや陶器がローマ本土に供給され、首都ローマの100万人の人口を支えました。
弊害と崩壊のプロセス
整備された交通網は、同時に疫病の感染ルートにもなりました。「アントニヌスの疫病」(2世紀)や「キプリアヌスの疫病」(3世紀)は、交易路を通じて帝国全土に広まり、人口を激減させ、経済と軍事力を著しく低下させました。
首都ローマやイタリア本土が、属州からの食料供給(特に穀物)に依存しすぎていたため、属州の反乱や蛮族の侵入で供給が途絶えると、中心部が直接的な打撃を受けました。
属州の経済が発展するにつれ、イタリア本土の産業が競争力を失い、経済的な空洞化が進みました。これにより、帝国の税収基盤が揺らぎ、軍隊の維持が困難になりました。
3世紀の危機以降、帝国は政治的・軍事的な混乱と経済の停滞に苦しみ、最終的に東西に分裂し、西ローマ帝国は崩壊しました。繋がりの深化が、疫病の伝播を加速させ、経済的な脆弱性を生んだ例です。
残った東ローマ帝国でもユスティニアヌス帝の時代にペストが大流行し、甚大としか表現のしようがないほどの被害を出します。首都コンスタンティノープルでは毎日5千人から1万人が亡くなり、首都人口の4割を失ったと言います。
皮肉な事に、このユスティニアヌス帝は軍事的功績によりかつてのローマ帝国の領土を取り戻していました。最大時には及びませんが、イタリア半島全域、現チュニジア付近、さらにはイベリア半島(現在のスペイン)の一部を奪還していました。
それゆえに、ペストは東ローマ帝国に留まらず、イタリア半島、ブリテン島(アイルランドを除く現イギリス)とフランスにも広がってしまいました。
ところが、ローマ帝国の支配下に置かれず、交通網が未発達で自給自足だったドイツより東の地域(かつての東側陣営、ワルシャワ条約機構)はペストの災禍が相対的に軽くすみ、それ以降の発展が可能になったという説があります。
ローマに征服され、ローマの豊かさの恩恵を享受できたことと、それ故にペストという災害にも見舞われたこと。ローマに征服されず、豊かさから外れたもののペストの災禍から免れた事。果たしてどちらが幸せだったのでしょうね。皆さんはどう思いますか?
3.モンゴル帝国とペスト(黒死病)の世界的流行 (14世紀)
モンゴル帝国は、ユーラシア大陸に広がる巨大な交易ネットワーク「パクス・モンゴリカ(モンゴルの平和)」を現出させました。
マルコ・ポーロが旅したように、モンゴル帝国は駅伝制を整備し、シルクロードの安全を確保しました。これにより、東西の文物、技術、人の交流が空前の規模で活発化しました。
中国の絹や陶磁器、中央アジアの馬、ヨーロッパの毛織物などが取引され、ジェノヴァやヴェネツィアの商人が黒海沿岸の交易拠点に進出しました。
この活性化した交易路が、ペスト菌を運ぶルートとなりました。ペスト菌を持つクマネズミやノミが、隊商の荷物と共に移動し、ヨーロッパ全土に広まりました。
14世紀半ばのペストの大流行は、ヨーロッパの人口の3分の1から2分の1を死に至らしめました。労働力不足による農村の崩壊、物価の混乱、社会不安の増大を引き起こし、封建制度の崩壊を加速させる一因となりました。
モンゴル帝国自体もペストの打撃を受け、また後継者争いも相まって、14世紀後半には各地で反乱が起き、帝国は急速に瓦解していきました。
ローマとモンゴル帝国時代のペスト。あれ? つい最近どこかで嫌というほど、それこそ2020年から2023年までニュースで毎日報道されてい何かと酷似していますね。
4.1929年の世界恐慌
第一次世界大戦後の「第一次グローバリズム」の崩壊を決定づけた出来事です。
第一次大戦後、アメリカは世界最大の債権国となり、ドイツの賠償金支払いをアメリカの民間資本が支える「ドーズ案」など、国際金融が複雑に絡み合っていました。
各国は金本位制に復帰し、国際貿易も回復しつつありました。
1929年、ウォール街の株価大暴落をきっかけにアメリカ経済が破綻すると、アメリカの銀行は欧州(特にドイツやオーストリア)に投じていた資金を一斉に引き揚げました。これにより、1931年にオーストリア最大の銀行が破綻し、金融危機はヨーロッパ全土に伝播しました。
経済危機に対応するため、各国は自国産業を守ろうと次々と保護主義的な政策(関税の引き上げなど)を導入しました。特にアメリカの1930年関税法、通称スムート・ホーリー関税法は高率な関税を課し、各国の報復関税を招きました。
このブロック経済化により、世界の貿易額はわずか数年で3分の1にまで激減。経済的な繋がりが断絶されたことで、不況は世界規模でさらに深刻化し、長期化しました。
世界恐慌はドイツや日本などでファシズムや軍国主義が台頭する土壌を作り、第二次世界大戦の遠因となりました。金融のグローバル化が生んだ危機の連鎖と、その後のナショナリズムによる繋がり(協調)の崩壊が、破滅的な結果を招いた例です。
グローバル化したがゆえに株価暴落の影響を受けて各国が自国保護に走り、アメリカが高関税を課して報復関税を招き、ブロック経済化した国々では恐慌のあおりを食った人々がナショナリズムやファシズムに走る。
これもなんだが、つい最近ニュースで聞く単語が多い気がしますね。
5.1997年 アジア通貨危機
現代のグローバル資本主義の脆弱性を示した事件です。
1990年代、タイやインドネシア、韓国などのアジア諸国は経済成長を背景に金融市場を自由化し、海外から短期的な投機資金が大量に流入しました。これらの国々は、自国通貨を米ドルに連動させる「ドルペッグ制」を採用している場合が多くありました。
タイの経済不安をきっかけに、海外投資家が一斉に資金を引き揚げ始めると、タイの通貨バーツは暴落。この動きは、同様の経済構造を持つインドネシア、マレーシア、韓国へと瞬く間に伝播しました(コンテイジョン効果)。
ドル建てで多額の借金をしていた企業は、自国通貨の暴落によって債務が膨れ上がり、次々と経営破綻しました。
結果、 IMF(国際通貨基金)による支援と引き換えに厳しい緊縮財政が課され、各国は深刻な不況と社会不安に見舞われました。資本移動の自由化というグローバリズムの恩恵が、一転して経済を破壊する凶器となった例です。
私は元々歴史好きではありますが、こうした歴史を振り返った時、この二つの言葉を思い出さずにはいられませんでした。
「歴史から学べるのは、人が決して歴史から学ばないということである」
ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル 1770年8月27日 - 1831年11月14日 ドイツの哲学者
「歴史は繰り返さないが韻を踏む」
ことわざ。同じ出来事が全く同じように再現されることはないが、似たようなパターンや状況が繰り返されることがあるという意味。
もうお分かりですね。グローバリズムは歴史上、必ず崩壊するシステムなんです。
厄介な事に、戦争と違って短期的には一部の人間に確かに大きな利益をもたらすことから、求める声が絶えず出続ける事にあります。
まさに、人々がその負の側面を忘れたころに再びグローバリズムが始まり、広まり、広まりきったところで災害や戦争で前提が崩れて全てが連鎖的に崩壊する。
これを人類は繰り返してきたのです。
青銅器時代の国際分業化による連鎖崩壊。
ローマとモンゴルのペスト。
1929年の世界恐慌と1997年の通貨危機はリーマンショック。
どれもこれも、実は過去に人類が体験してきたことなんです。そして、性懲りも無く繰り返す。
まとめ
効率性と脆弱性は表裏一体。経済的な繋がりと分業は効率性を高めますが、同時に特定の資源や地域への依存度を高め、システム全体の脆弱性を生む。(青銅器時代、ローマ帝国)。
繋がりは「負」の要素も拡散させる。交易路や交通網は商品や資本だけでなく、疫病や金融危機も高速で広げます(ペスト、世界恐慌、コロナ禍)。
経済合理性は政治・ナショナリズムに勝てない。経済的に相互依存していても、国家間の対立やナショナリズムが高まれば、繋がりは容易に断ち切られる。(第一次世界大戦、世界恐慌後のブロック経済化)。
グローバル化は格差を助長し、内側から崩壊を招くことがある。グローバル化の恩恵が一部の国や階層に偏ると、国内で不満が高まり、保護主義や排外主義的な政治勢力が支持を得て、システム自体を内側から破壊する動きに繋がる。
よくこれからの時代に保護主義は現実的ではないと最もらしいことを言う人もいますが、私から言わせれば最後は確実に崩壊する事が確定しているシステムを、金科玉条にように信奉しているほうが理解できません。
「同じことを繰り返して異なる結果を期待することは狂気だ。」 byアインシュタイン
困難でも自国で調達可能、作成できるものは可能な限り自国で製造し、どうしても無理な物だけはやむなく海外から輸入する。これのほうが余程現実的でしょう。経済的合理性が戦争を抑止する理由にならないのであれば、割高でも自国で揃えた方がマシです。自国の産業育成、雇用にも繋がるでしょう。
無論、自国で全て賄おうと思ったら資源確保のため拡張主義(侵略)しかありません。これでは本末転倒ですので、外国との友好関係維持自体は必要です。
その上で、経済的圧迫(ロシアのガスや中国のレアアース、今ならトランプ政権下のアメリカ)を仕掛けてくる敵対的国家に対抗するためにも、自国で賄えるものは自国で賄う。特に生活必需品の自国生産(コロナ渦のトイレットペーパー。中国だよりではなかったため比較的早く騒動が収まった&外交的圧力の種にならずに済んだ)は今後必須になると考えています。
皆さんはどう思いますか?