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殺人アザラシ人  作者: にん
1/1

上(完結)

某県某所、ある秋晴れの日のことだった。私は場末のマンションに、小学5年生の甥を迎えに来ていた。甥の誕生日プレゼントをねだられに来たのである。彼は車が大好きで、道を走る車の名前をほとんどすべて言い当ててしまう。なんのめぐり合わせか私も車が好きなもので、三つ子の魂百まで、いっそ自動車の開発で飯を食ってくれたらいいなと思っている。マンションの5階、廊下に吹き抜ける薄く紅色を纏ったような秋風は、標高のせいか少し肌寒い。

505号室まで、あと十数メートル。

501

502


「おぉっ、久しぶり」

インターホンを押して数秒、玄関が開いたと思ったら勢いよく飛び出してきた。森野秋伊(もりのしゅうい)という名前の、私の甥ということ。

「おじさん、俺欲しい物決まったよ!トミカプレミアムの、フェアレディZ」


「わかったわかった、とりあえずちょっと入れてくれよ」


「コーヒー飲む?」

「もらおうかな」

秋伊の母であり、私の妹である森野素粒子(旧姓:志村)の入れるコーヒーは、どういうわけか私の作るそれより数段美味い。

ふと、テレビの横の棚においてある写真に目をやる。そこには、県外の動物園でトミカを握りしめ笑顔の秋伊を抱っこする素粒子、その右には、一昨年白血病で亡くなった夫が写っている。彼の左肩にはおもっくそ真っ白い老婆の顔が乗っかっている心霊写真なのだが、秋伊と素粒子は全く気に留めていないようである。

「うめえ」

「うまいやつを買ってるからね」

「フェアレディZ」

「はいはい」


「じゃあ、秋伊くんお預かりしますねー」

「いってらっしゃい、見送るね」


『警察はきょう、○○動物園からゴマフアザラシのミスターゴマーティ教授がいなくなった事件について、何者かが連れ去った可能性があるとの見解を示し…』




車に乗りこみ、車のスタートボタンを押し込む。ふとサイドミラーに目をやると、およそ50メートル後方に、人ほどの大きさの、自立した、ただ人では無い何かがいる。

「おじさん、アレ、なに…?」

怯える秋伊を横目に、シフトレバーをDに入れ、心なしか少し早めに車を出した。

すると、あろうことかあのunknownはこちらに向かって急に走り出した。

「・・・ッ!」ヤバい、そう思った。ひとまず秋伊とともに家に戻ろうかと考えたが、ソレは事実上時速30キロ以上で、少しずつこちらへ、じりじりと擦り寄ってくる。無理だ、車を止めたらどうなるかわからない。

私は、あの化け物から逃げ切り、秋伊と必ず生きて帰ることを決意した。


なんとか信号に引っかかることなく、〇〇市の中心地まで来ることができた。相変わらず、奴は追走を続けている。

「おじさん!あいつがなんか言ってる!」

秋伊がそう言ったので、パワーウインドウを下げアイツの言葉に耳を傾けることにした。

すると、ほとんどが風と群衆の悲鳴で遮られて聞こえないなかで、少しだけ聞き取れた。

「トミカ、ホシイ・・・エルグランド、エクストレイル、アリア…」

ヤツ、日産推しなのか!?というかなぜ、あの生き物がトミカを欲しがっているのだ!?

「アレ、逃げたっていうアザラシじゃないか!?」

「うわ、ダガーナイフとスタンガン持ってない!?」

通りを走って逃げていく人たちが、そんなことを口にしていた。窓から吹き抜ける強い風が、薄くなってきた頭皮を乱雑に撫で回していく。

「おじさん、俺持ってるよ!エルグランドとエクストレイルとアリアのトミカ!!」

彼の手元を見ると、たしかにトミカが3,4つ握られている。

「シュー、試しにそれ、アイツに投げてみてくれ!」

「えぇ、嫌だろ!」

「また全部買ってやるから!」

「ほんとか!」

彼も現金なやつで、すぐに窓を開けてトミカを一気に、アザラシに向かって投げた!

するとアザラシは、空中でトミカを余さずキャッチし、その場に立ち止まり、トミカで遊びはじめた。


その後、この騒動は新聞の一面を飾り、アザラシは以降見つかっていない。

秋伊は、新品のトミカ5台をもって、公園へ出かけた。








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