そして私は変われた
処女作なので下手ですが、どうかご勘弁を
第1章:家出
赤いスカーフにどんな意味がある?紺のスカートは何を表す?白きセーラー服はなんの象徴だ?3本の線に込められた誠実・謙虚・努力の3つの意味。しかしもうそんなことは自分にはどうでもいい。
過去のテスト用紙や授業プリントの束を庭に放り出す。茶色い土の上に紙の雪が降る。いい気味だ。年齢を偽って買ったバーボンをその上にかける。赤いインクが滲み血の跡のような線を作るのが月明かりの下に見える。
今夜は両親がいない。
今日だ。
やるチャンスは今日しかないのだ。父の書斎からくすねてきたマッチを擦る。自分が生まれた時の希望の炎もこのような色をしていたのだろう。しかし炎は人を温めることもあれば物を焼き尽くす側面もある。バーボンに濡れたプリントの束にマッチを近づける。目の前が爆発的に明るくなる。全ては終わる。そう、ここに赤と白という自分を縛るセーラー服を投げ込めば。
しかしその前に最期のイタズラをしよう。
バスルームに向かいシャワーのコックを開ける。滝のような雨が頭上から降り注ぐ。髪から雫が垂れ背中とスカートを濡らす。白かったセーラー服は透明な白に、紺かったスカートは黒へと色を変える。そして鏡には肌を透かし体のラインを浮かせたセーラー服に身を包み、ワインレッドへと色を変えたスカーフを身につけ、絶望の淵を覗いた惨めな表情を浮かべた自分が写っている。社会に背を背けた惨めな自分がそこにはいた。
気の済むまでシャワーを浴びると次は湯船に飛び込む。
スカートは水面に浮き、隙間からは白い足がチラついている。湯船から立ち上がると完全に色が変わったセーラー服から下着が透け体のラインが浮き出ている。そして長い髪が顔に張り付いている。
制服を脱ぎ捨て洗濯機の中に投げ込む。どうなっていようとどうなろうと知ったことはない。再度鏡を見つめる。そこには地獄に突き落とされそうな顔をした自分が写っていた。社会から逃げた自分がこれからみる地獄とは如何なる物だろうか?
脱ぎっぱなしにしていた部屋着のロンTに着替え庭へ行く。そこにはただ、後悔ないくらいには炭と化したプリントたちがただ燻るだけであった。もう後悔はない。そう決心させるには十分であった。
さて最期に何を着ようか。クローゼットを開ける。パステルカラーのワンピースやジャージに混じりロゴのないパーカーがあった。これにしよう!彼女が決めたのは白いパーカーに黒のタイトなミニスカートと革ジャン、母親の黒い革のブーツであった。17の小娘のできる最大のおしゃれであり初めての試みであった。親からは過度な期待をかけられ学校では学級委員や部長などを兼任してきた彼女であった。友達と遊ぶときは清楚なワンピース、そんな彼女とは無縁なバンドマンのような服装であった。そして彼女はスーツケースに手当たり次第服を詰める。
クローゼットに残されたのはありし日々に気に入って着ていたワンピースやブラウスであった。それらをゴミ袋に詰めた時彼女の心は揺らいだ。どうせなら最期に背徳感に襲われたい。ゴミ袋に詰められた服たちが連れてこられたのは彼女が惨めさを感じていた風呂場であった。無表情のまま彼女はゴミ袋から服を取り出しては湯船に放り込む。パステルカラーだった服の色は水を吸い原色へと変わっていく。そして彼女はスーツケースを引きながらリビングに向かった。最後に鍵をかけ家を出た。