deus ex māchinā
「……そんなことが白玉楼であったのね。」
博麗神社へと戻ってきた祷は白玉楼で起きたあらましを簡単に話した。
「……それで?どうしてアンタ達まで居るのかしら?」
そう、祷は“妖夢と古鶴も”引き連れて帰ってきた。
「あ!そうそう!人生で初めてのお友達が出来たので!」
「はぁ〜!?」
霊夢は顔に手を当てて項垂れ、古鶴は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をし、妖夢は状況を理解出来てないようだった。
「アンタねえ!一度は殺されかけた相手なのよ!?自分で何を言っているのか理解しているの?」
「え?だってもう古鶴ちゃんは私を襲わないって言ってたし……」
「そー言う問題じゃなくて……」
と、霊夢と口論になりかけたその時。
「いいじゃないか、昨日の敵は今日の友……ってやつだろ?」
空から飛行して降りてきたのは魔理沙だった。
「魔理沙までそんなことを……」
「おいおい、昔私と戦ったことを忘れたとは言わせないが?」
「うっ……」
確かにかつて魔理沙とは幾度か戦ったことはある……のだが
「それはそれ、これはこれなんて言わないよな?」
「うぅ……、解ったわよ……もう敵だろうがなんだろうが好きにすれば良いわ!」
そう言って霊夢は部屋を出て行ってしまった。
「ちょっ、霊夢さん!待ってください!」
霊夢の後を妖夢は慌てて追いかけるが、祷は古鶴と友達になれたことを素直に喜んでいた。
「良かったな、それじゃあ私は帰るぜ」
魔理沙はそう言い残し、帰って行った。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「よお、調子はどうだ?」
魔法の森、霧雨店に夕日が差し込む。橙色の夕日が魔理沙をバックとして沈みゆく。魔理沙の視線の先には、鎖で繋がれた『霧雨魔理沙』がいた。
「あれ?おかしいなあ……ああ、そうか『遮音解除』」
「……調子なんかいいわけないだろ!さっさと私を解放しやがれ!」
そう言って鎖に繋がれた方の『霧雨魔理沙』は今にも掴みかかりそうな具合で目の前にいる霧雨魔理沙の元へ掴みかかろうとするが、手枷のせいで掴みかかれない。
「やだなあ、解放しろと言われてボクが解放するわけないじゃない、それに……」
そういって魔理沙は霧雨魔理沙を蹴飛ばした。
「いっ……!」
「タダで解放するわけないじゃない、ボクはまだまだ退屈だし」
おっ、いい反応するねえと言いつつ何度かサッカーボールのように蹴飛ばされる霧雨魔理沙。「ぐぅぅぅ……」と言う霧雨魔理沙に魔理沙は「それじゃあ、交換条件をあげるよ」
そういって魔理沙はしゃがみこむ
「じゃあさ、ボクを楽しませてよ」
ケラケラと魔理沙……いや、魔理沙の姿をした何者かは嗤った。
「くっそ……!お前の目的はなんなんだ!」
「おお、怖い怖い。目的なんかないぞ?」
そう言って、ソファにどさりと座る。いつの間にか姿は霧雨魔理沙のそれではなくなっていた。濃い紫色の髪をしており、頭には小さなシルクハットが1つ、頬には星の形をした傷跡のようなものがあり、どこか中性的な女性に見えた。徐にどこからか携帯ゲーム機を取り出し、ゲームに熱中し始める。しかし、なにかを思い出したかのように顔を上げ、唐突に喋り始めた。
「ああ、そうそう。なんかね、ボク演じるの苦手だったのかあの……なんだっけ。キミと同じ金髪の……」
「アリス!?お前!アリスに何をしたんだ!」
「ああ、あの子アリスとやら?面倒臭かったですね、相手するの。でもいい収穫があったんですよ〜!」
「……収穫?」
魔理沙は嫌な不安を覚えた。
「い、いちいち口調を変えやがって気色悪いやつだな!アリスが簡単に負けるわけ……」
しかし、魔理沙が見たのは残酷な真実だった。
「このお人形ちゃん達と〜、あとアリスちゃん!でもアリスちゃんの方は要らないなあ……、あげるよ」
そう言ってどさりと魔理沙の前に投げられたのは、魔理沙と同じく手枷で繋がれたアリスだった。
「アリスっ!?」
「あらあら、そんなに喜んでくれたのね〜嬉しいわ」
そいつは全く感情のこもってない声でそう言う。不気味でイヤな感じのする声だ。
「アリス!アリス!目を覚ませ!」
魔理沙は、アリスの元に駆け寄ろうとしたが、手枷を繋ぐ鎖の長さが足りずに近寄ることすらままならない。
「はぁぁ、五月蝿いなあ。」
奴はそう言って、魔理沙を蹴飛ばしたあと、ひょいひょいと魔理沙とアリスのいるエリアに結界のようなものを張り巡らせた。
「まあ……まだ利用価値がありそうだし殺しはしないぜ。お人形さん達に任せることにするのだ〜、キャー、ボクってば乙女〜♪」
そう言って、人形を動かし始める。
紅い月の元。霧雨魔法店には、紅い月光のみが照らしていた。