師匠
霊夢と別れた後も祷は人里を散策した。
蕎麦屋や団子屋のような美味しそうな食べ物を売っているお店もあれば『霧雨店』という道具屋もあった。
祷の興味を特に掻き立てたのは寺子屋で、遠目から見ているだけでも、懐かしいような苦しいような……
そしてちょっと切ないような気持ちになるのだった。
その後も祷は持ち前の明るさで、人里に少しずつ溶け込んでゆくのだった。
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「……やっと見つけた」
霊夢の視線の先には明らかに不自然な木箱があった。人がちょうど一人入れる大きさだ。
「動けば殺すわ、私の質問に答えなさい」
「……」
「さあ、変質者さん。あんたは何が目的で祷を付け回しているのかしら?」
「わ…私は…」
「ん?その声……あんたまさかっ!?」
霊夢が箱をどかすと、中には白髪の半人半霊の庭師、魂魄妖夢が非常に不味いという顔をして入っていた。
「。。。」
「。。。」
「驚いたわ、あんた辻斬りだけじゃなく変質者にもなったのね……」
「ちちちちちがいます!私は変質者じゃないです!」
「でもやましいことがあるから、こんなバレバレの箱の中に入って祷を監視していたんじゃないの?」
「いえ、違います。あれは昨日のことでした……」
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「……というわけだ。どうだ?頼まれてくれるか?」
「いえ、私は幽々子様の剣術指南役兼庭師ですので」
いつも通りの魔理沙と、頑として後に引かない妖夢。話が終わったかと思われたその時。
「あら?もう死んだのかしら?随分と早かったわねえ」
そう言ってやって来たのはここ、白玉楼の主人。西行寺幽々子だ。
「まだ死んではないがな。タチの悪い冗談だぜ」
「幽々子様、すみません……間もなく帰らせますので……」
「いや、別に良いのよ。というより……私は魔理沙の意見には賛成よ」
「ほっ!本当かっ!?」
魔理沙は顔を輝かせたが、妖夢は「えっ!?」という顔をしている。
「な、何故……?」
「人に教える。ということは自分を見直し、基礎をまた学び直すということにも繋がるわ。ほら、漬物だって二度漬けをする事でより味が染みるじゃない。」
「そ、そういうもになのですか?」
「ええ」
そう言うと、幽々子はふらふらと別の場所へと向かったのだった。
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「……で?なんでそれがコソコソと祷の後を付ける理由になるのよ」
「弟子はよく観察しなさいと言われたので……」
妖夢が弁明すると霊夢は
「そう意味じゃないわよっ!」
と、盛大に突っ込むのだった。当たり前である
そして数時間後。祷が博麗神社に帰って来た際には正座で反省している妖夢と、お茶を啜る霊夢。そしてそれを面白そうに見つめている魔理沙がいるのだった。