表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方絆祷旅  作者: 長野笑兎
1/38

Where Do We Come From? What Are We? Where Are We Going?


「はぁ……」


 何度目のため息だろうか。

手元にあるのは、手中の刀と不思議な形のチャームのみ。二つとも、孤児院で親から遺された物として譲り受けた物だ。


 そう、私こと邦美祷(ほうび いのり)は天涯孤独の身だ。持っている物はこの着物や刀のみなので、お金を稼ごうにも身分証もなく、日銭を稼ぐのがやっとだ。


 行くあてもなく彷徨い、気づけば山奥の廃電車が目についた。今夜の寝れる場所としては悪くない。


 ごろん、と座席に横になる。虫の音がうるさいし、蜘蛛の巣だって張っている。それでも私は病気にもならないし、虫にも刺されない。そういう体質なのだ。


 私は、昔から騙されてきた。

 子供の頃から、孤独だった。

 死のうと考えたこともあった。


 だけれども、その度に死ななかった。死ねなかった。


体が死ぬことを拒否したのだ。


「はぁ……」


 寝返りを打つと、刀に付けたチャームがチャリン、と音を立てた。そして何故か今までに起きた色々なことを思い出した。


 裏切られた記憶、死のうとした記憶、そして……朧げながらもある両親の記憶。


 その声が聞こえたのは、そんな時だった。


「廃線「ぶらり廃駅下車の旅」出発でえす♪」


 その声とともに、日本のとある山奥にあった廃電車は


     消失した


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 ガタン…ゴトン…と廃電車が動き出す、キィ…とくたびれたエンジンが響く、それは郷愁の幻想へと誘う魔笛のように聴こえた。


夜中なのも相まって祷はこれは奇妙な夢ではないか…と思い頬っぺたを強くつねる。

「…痛…い…」頰からはしっかりとした痛みを感じる、この夢の如き廃電車は夢ではないのだ、しかしそれを知ったところでどうなる事でもない、祷は人生に生きる意味も見出せていなかった為に、どこに連れて行かれようがどうでも良い事であったのでそのまま乗ることにしてみた。トンネルのように暗い何かを通り抜ける、国境を越えるとそこは幻想の国である、

しかしそのような事を彼女が知る由もあるまい。


 しばらく席にうなだれていた彼女がトンネルから抜け出した一筋の光を感じ取り、そして薄汚れた車窓から外の景色を覗く、そこは…

「神社…?」どことなく不可思議な場所である…日差しはどこか明るく、どこか寂しく感じた。幻想的と言う言葉を言葉ではなく目で感じる…そうか、遂に命尽きて浄土に来てしまったのか…そう彼女は一瞬思ったが自分は浄土に行けるほど立派なこともしてないなと卑屈に思想の歯車を回していた。そして神社の手前で廃電車がシュー…っとボロボロのエンジンをオルガンのように鳴らし、電車はその神社の前で止まる、そして無愛想にゴー…っと寂れたドアが開く、取り敢えずこの場に降りる事にした。


来る前はすっかり夜中だったと言うのに今はもう朝である。そんなに移動したのだろうか…そしてこの神社は一体…そんな事を思っていると電車から車掌…いや車掌にしては胡散くさ過ぎる雰囲気の女が出てきた。金髪にどこから取り出したのか日傘、そして全体的に服も眼も紫がかっている…胡散臭いが美しい…この世ならざる者のようだと祷は思った。そしてその女が口を開く。

「終点、博麗神社でございます♪」…と。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ