Where Do We Come From? What Are We? Where Are We Going?
「はぁ……」
何度目のため息だろうか。
手元にあるのは、手中の刀と不思議な形のチャームのみ。二つとも、孤児院で親から遺された物として譲り受けた物だ。
そう、私こと邦美祷は天涯孤独の身だ。持っている物はこの着物や刀のみなので、お金を稼ごうにも身分証もなく、日銭を稼ぐのがやっとだ。
行くあてもなく彷徨い、気づけば山奥の廃電車が目についた。今夜の寝れる場所としては悪くない。
ごろん、と座席に横になる。虫の音がうるさいし、蜘蛛の巣だって張っている。それでも私は病気にもならないし、虫にも刺されない。そういう体質なのだ。
私は、昔から騙されてきた。
子供の頃から、孤独だった。
死のうと考えたこともあった。
だけれども、その度に死ななかった。死ねなかった。
体が死ぬことを拒否したのだ。
「はぁ……」
寝返りを打つと、刀に付けたチャームがチャリン、と音を立てた。そして何故か今までに起きた色々なことを思い出した。
裏切られた記憶、死のうとした記憶、そして……朧げながらもある両親の記憶。
その声が聞こえたのは、そんな時だった。
「廃線「ぶらり廃駅下車の旅」出発でえす♪」
その声とともに、日本のとある山奥にあった廃電車は
消失した
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ガタン…ゴトン…と廃電車が動き出す、キィ…とくたびれたエンジンが響く、それは郷愁の幻想へと誘う魔笛のように聴こえた。
夜中なのも相まって祷はこれは奇妙な夢ではないか…と思い頬っぺたを強くつねる。
「…痛…い…」頰からはしっかりとした痛みを感じる、この夢の如き廃電車は夢ではないのだ、しかしそれを知ったところでどうなる事でもない、祷は人生に生きる意味も見出せていなかった為に、どこに連れて行かれようがどうでも良い事であったのでそのまま乗ることにしてみた。トンネルのように暗い何かを通り抜ける、国境を越えるとそこは幻想の国である、
しかしそのような事を彼女が知る由もあるまい。
しばらく席にうなだれていた彼女がトンネルから抜け出した一筋の光を感じ取り、そして薄汚れた車窓から外の景色を覗く、そこは…
「神社…?」どことなく不可思議な場所である…日差しはどこか明るく、どこか寂しく感じた。幻想的と言う言葉を言葉ではなく目で感じる…そうか、遂に命尽きて浄土に来てしまったのか…そう彼女は一瞬思ったが自分は浄土に行けるほど立派なこともしてないなと卑屈に思想の歯車を回していた。そして神社の手前で廃電車がシュー…っとボロボロのエンジンをオルガンのように鳴らし、電車はその神社の前で止まる、そして無愛想にゴー…っと寂れたドアが開く、取り敢えずこの場に降りる事にした。
来る前はすっかり夜中だったと言うのに今はもう朝である。そんなに移動したのだろうか…そしてこの神社は一体…そんな事を思っていると電車から車掌…いや車掌にしては胡散くさ過ぎる雰囲気の女が出てきた。金髪にどこから取り出したのか日傘、そして全体的に服も眼も紫がかっている…胡散臭いが美しい…この世ならざる者のようだと祷は思った。そしてその女が口を開く。
「終点、博麗神社でございます♪」…と。