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トリックが分かれば芋蔓式に犯人も特定される件

刑事コロンボ「あんたしかいない! この犯行が可能だったのは、この世であんたしかいないんだ!」

犯人「…………」

コロンボ「署まで、ご同行願います」

 流れるテーマ曲とスタッフロール。

 もう何回見たか、このエンディング。




 はい、昔エラリー・クイーンの『十日間の不思議』を読んだ直後に、二階堂黎人『○○○』(ネタバレのため自粛)を読むという事故を起こしたアヒル探偵です。

 同じテーマを扱っているため、『○○○』の最初の1ページで作者のやりたいことが分かったという。

 本当に偶然だったけど、そんなことってある?


 閑話休題。


 今回のお題は『犯人を特定する決め手』についてです。

 推理小説といえば、『どのようなトリックか』と『犯人は誰か』が見せ場です。

 そして非常によくあるのが、『トリックを解明すれば、芋蔓式に犯人が分かる』という構造。

 例えば密室殺人が起こったとして、トリックより先に犯人が分かれば、探偵が密室トリックを暴く必要がなくなってしまいます。推理小説に出てくる刑事がよく言うように「犯人を尋問して聞き出せばいい」というやつです。

 そうなるとぶっちゃけ話がつまらない。

 探偵の見せ場を出せよ、ということで、探偵がトリックを解明→新たな手がかりが出てくる→犯人特定、という流れになりがちです。

 ちなみにこのエッセイで言う『トリック』は、犯人が行う工作だけでなく、事件の真相が分からなくなる要因全部を指しております。

 犯人でない他の人が(偶然にしろ意図的にしろ)隠蔽になる行動をしたとか、自然現象で証拠が消えたとか。


 で、ですよ。


 私、今までに出てきたヒントが、実は「この犯行が可能だったのは、あんたしかいない」とまで断定できる決め手だったというのが大好きです。もうね、事件の真相に次ぐ見せ場ですね。

 特に古畑任三郎のような倒叙もの(犯人の視点で進む話)だと、クライマックスは探偵による「犯人はどんなミスをして、どのような決定的証拠を残したのか」の指摘になります。

 犯人はもちろん、犯行の手口もたいてい序盤に描写されてますから、それくらいしか見せ場がないとも言う。


 それでは、どういう情報が犯人確定の証拠になるのか、張り切ってまいりましょう。




・指紋など


 指紋、掌紋、耳紋唇紋DNAなどの、個人特定が可能な身体の一部ないし痕跡。言わずと知れた強力な証拠になります。

 普通に(?)現場やら凶器やらにべたべた指紋が付いていると、普通に任意同行からの取り調べ経由の完落ちで終了です。

 そこでトリック登場。

 例えば密室殺人。現場に怪しい指紋のたぐいはない。

 実は、犯人は密室構築のために意外な場所で工作しており、そこを調べると指紋が検出された、とか。ああ具体的な作品名を言いたい。

 このように、事件の構造を明らかにすることで、新たに鑑識に調べてもらうところが出てくるのが基本です。

 犯人の指紋etc.以外のパターンも。例えば、犯人の持ち物や自宅から被害者の指紋が検出され、犯行のタイミングでしか指紋が付かないと立証されるとか。

 刑事コロンボの某作品だと、被害者宅から盗まれた品に、犯人でも被害者でもない、ある人物の指紋が。……あれは衝撃でした。私が推理好きになった理由のひとつです。


 とはいえ、凶器に容疑者の指紋が付いていたとしても、それ自体は「容疑者は凶器に触ったことがある」ということしか意味しません。

 それで容疑者が犯行を行ったかどうかは別問題であり、他の証拠も揃える必要があるようです。

 冤罪にはご注意を。




・その他の物的証拠


 これは本当に色々あります。

 現場に犯人の遺留品があった、犯人の身体や持ち物に被害者の遺留品が付いていた、監視カメラに犯人を特定する情報が写り込んでいた、など。前項と被るところもあります。

 このカテゴリは多岐に渡り過ぎて、分類とか難しそうですね。早々に諦めました(おい)。 




・知っている、知らなかった


刑事「Aさんが、先日何者かに殺害されました」

Bさん「何ですって!? Aさんが、リビングにあったピンクの延長コードで首を絞められて殺害だなんて!」

刑事「なんでそこまで知ってんの?」

 はい、Bさんアウト。


 このように、犯人(と警察)しか知らないことを言ってしまうやつ、いわゆる秘密の暴露ですね。

 例文だとBさんが頭悪すぎますが、現場の描写からBさんの失言まで100ページくらい間があると、結構ごまかされます。

 作者は、情報の初出しと失言のシーンを別々にする、失言を間接的な言い回しにして分かりにくくする、など工夫に励みます。

 おかげさまで、ミステリの読者は「どのキャラが何の情報を把握しているか」をがっちり頭に入れながら読む癖がつくんですけどね。


 知らなかったパターン。

 現場に、「知らなかった」ことが反映されている。

 例えばこのエッセイだと、3話の「閉鎖空間になっていることに気づかず事件を起こす」が相当します。

 積雪で建物の周囲に足跡のない状態。しかし現場には、外部犯と思わせる工作がされていた。つまり犯人は、積雪を知らなかった人物。

 探偵は、関係者の証言や状況によって降雪を知っていた人物を容疑者から外していき、残った1人を犯人と特定するのです。

 例えのために作った設定ですので、なんで知らなかったかは適当に考えておいて下さい(雑)。


 あるいは、犯人が「知らなかった」ことが問題になる場合。

 例えばアリバイトリック。

 犯行時に、盗聴器や隠しカメラなどを駆使して別の場所の出来事を把握しておき、後でそこにいたと主張する。

 ところが、盗聴器やカメラの範囲の外で何かハプニングなり別の事件なりが起こっていて、それが何か言えなかった。

 ということは、事件当時実際にはそこにいなかったという結論になって犯人確定。

 失言によって犯人が分かるパターンは、推理小説に限らず、意味怖などでも使われるテクニックです。




・その他犯人の条件を満たしている


 これも多岐に渡ります。

 刺し傷の角度からして左利きであるとか、100キロある死体を抱えてあっちからこっちまで移動したから力持ちとか、この時間帯に配電室に行ってブレーカーを落とせた人とか、なんでもありです。

 たいていの場合、単体では決定的な証拠にならないので、複数の条件を挙げて、全て満たす人が犯人となります。

 容疑者の少ないクローズドサークルで有効な手法です。



 

 ミステリに限らず最近あるのが、ユニークスキルや異能力など、その個人しか所有しない特殊能力が存在する設定。

 異能力を持つ生徒が集まる学校。特別な魔法を1つずつ与えられた魔法少女たち。能力=個性でもあるからか、キャラ同士で能力が被っていることはまずありません。そこで起こる事件。

 実はユニークスキルを応用的に使用して、トリックを生んでいた。というのが多いです。多いというほど作品数があるわけでもありませんが。

 どういうスキルの使い方をしたのかが分かれば、自動的に該当する能力者が犯人だと確定します。

 うれま庄司『マジカルデスゲーム』、遠藤浅蜊『魔法少女育成計画』、原作るーすぼーい・作画古屋庵『無能なナナ』など(前者2作は小説、後者は漫画)。

 推理メインの物語ではありませんが、一部エピソードに能力を利用したトリックがあります。


 なろうのハイファンにある「ハズレスキルが、使い方によってチートになる」のバリエーションというかミステリ版。

 異能力を使った殺人事件て楽しいですよね(強要)。

 なろうでも何作か確認しておりますが、もっと書いてください(直球でお願い)。




 犯人がラスボス、トリックがそのHPなら、決定的証拠はHPを0になるまで削り切るフィニッシュブローです。

 その思わぬ方向から飛んでくる美しい決定打で、是非読者を痺れさせて欲しい。

 無理矢理ラスボス戦に例えるのやめろや自分。


 

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