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クローズドサークルで死亡フラグを立てること、ホラー映画のごとし

 外に出られない、警察も来ないクローズドサークル内で殺人が起こる。

 ミステリとホラーには、往々にしてこの状況が発生します。そして犠牲者には共通点が。


 クローズドサークルというテーマは非常に奥深うございます。

 ツッコミどころ、いや語るに値する興味深い観点が色々ございまして、このエッセイはまだこのテンプレについて語らざるを得ないのです。




 今回テーマとしたいのは、死亡フラグ。


 皆様、クローズドサークル系の推理小説やドラマをご覧になって「またか」と思われたことはありませんでしょうか?


「殺人事件が起こっているのに、何故こいつらは単独行動を取るんだ……」


 あるある〜。


 例えば、吹雪の中の山荘で殺人事件発生。警察が来るまで一ヶ所に固まって相互監視だ! というところで、 


「人殺しと一緒にいたくない! もうやだ、わたし帰る!」


 とか言って外へ逃げようとする。それで止められたら自分の部屋に引きこもる。

 あるいは、


「この中に犯人がいるんだろう? 俺は自分1人の生き残りを考えて、部屋に引きこもらせてもらう」


 などと言って食糧を抱えて自分の部屋に引きこもる。

 だいたい次の犠牲者はこういう人。そうじゃなかったらその次くらいに順番が回ってくる。

 あれですよ。引きこもった部屋の中で密室で殺されたりするんですよ(偏見)。


 それで終盤で観念した犯人に経緯を聞いたら、犯人を怪しまずに鍵を開けて部屋に入れたりしてるんですよ、そいつ。犯人が1人だからとか、弱そうとかそんな理由で。

 合鍵で押し入られたとか、閉じこもる前に毒とか仕掛けられたなら仕方ないけど、自室に籠城するなら徹底しようよ。


 流れとしては、


「事件発生」

→「(大抵探偵が)次の事件が起きないよう集団行動からの相互監視を提案」

→「一部の人が反発して単独行動」

→「それにつられて他の人たちも別行動をとりだして、グダグダになって皆勝手に行動」


というのが基本中の基本。


 とはいえ、書きながら思ったんですけど、このシチュエーションで単独行動をとりたがるのも分からんではないかな、と。


 自分もクローズドサークルもののトリックを考えてるんですけど、やっぱり単独行動をとってくれないと上手いこと殺せません(言い方)。

 被害者はもちろん、犯人も1人になれなければ犯行不可能です。大抵推理小説の犯人って単独犯なので。

 でもって、犯行当時に被害者と犯人の2人しか単独行動をとった人がいなかったら、一発で犯人がバレます。

 従って、全員がそれなりにバラバラに行動していただきたい。

 ついでに程よく数人で一緒になったりバラけたりしてくれると、一部でアリバイができたり証人が出たり、それでいて肝心なところは分からないという、作者的にはいい感じに情報を操作できます。


 それに実際のところ、正常性バイアスってありますよね。殺人が起ころうが、単独行動だと狙われる確率がアップしようが、やっぱり1人でトイレに行って風呂入ってベッドでごろごろする時間欲しいよね。

 そんな絶対危ないって決まったわけじゃなし。推理小説とホラーの界隈では絶対危ないんですけど、作中人物に分かる訳もなし。

 あからさまに犯人がいるところで固まって神経をすり減らすよりは、1人でリラックスしたいっていうのはリアルなんだろうな。

 なんかツッコむよりも擁護してしまった。

 鍵のかかる個室でちゃんと籠城してくれたら許す(偉そう)。

 



 他の有力な死亡フラグとしては、「嫌な奴」というものもあります。


 先の単独行動フラグで言えば、「わたし帰る!」的な感情的かつわがままかつ頭悪い言動。帰れんっちゅーとるやろ。

 ありがちな台詞ですけど、複数のムカつく要素を押さえていて優秀です、このキャラ。


「俺は1人で行動するぜ」的な奴の場合。

 一同の中に犯人がいることを推理する、そこそこの賢さ。それをはっきり指摘して、部屋にこもっちゃう和を乱す(日本人的発想)行動。そして賢いくせに次の犠牲者になってしまい、犯人が一枚上手である演出をしてくれる引き立て役っぷり。

 実に有能な立ち回りです。


 あとはパワハラにセクハラなど、嫌われ要素は様々ですが、そういう人は危ない。

 まあ、嫌われるというか憎まれてるから殺されるわけで、理にかなった展開ではありますが。


 そして、ただでさえナーバスになっている一同の神経を逆撫でする行為によって、次の犠牲者になっても、登場人物も読者もそんなに悲しくない。

 悲しくないので、ストレスなく誰が犯人なのか推理に集中できます。

 こう書くとひどいけど、推理小説ってそういうところありますよね。




 ホラーにはないタイプの死亡フラグとしては、富豪であること。

 個人的にツボだったのは、エラリー・クイーンの何か長編で『老後を豪華ヨットに乗って過ごす、体が不自由な富豪の死亡率は高い』みたいな文章で、大笑いしました。

 推理小説界隈でそれは死ぬ! 係累の多い金持ちはヤバい! 海とか行くな! 親戚を集めて誕生パーティーすんな! 他の死亡フラグとのコンボで死亡率は鰻のぼりだよ!




 ミステリにせよホラーにせよ、これらの物語には人の死を娯楽として楽しむという業の深さがございます(除く日常の謎系)。

 それゆえ、キャラの人間性に深く立ち入らない、死亡フラグによってあらかじめ読者に注意喚起をしておく、犠牲者が嫌な奴でざまぁ感を出すといった、死の生々しい痛ましさを薄める仕掛けを行います(個人の感想です)。

 そしていざ殺人が起これば、死という強力なモチベーションを元に推理を行うのです(個人の感想です)。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 今際の国のアリスでこういうワガママ行動をとった子がたった一人生き残って、ミステリーだと思ってたストーリーを一気にパニックものに舵切った回を思い出しました。 テンプレをうまいこと使ってどんでん…
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