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第十七話 スレイブ・プリズン


 一学期最終日、崇が夏休みにロサンゼルス旅行に行こうと言い出した。

時子さんは神宮の仕事で残ると言ったし、輝さんは仕事があるといって奈緒美さんと恵麻がついてきた。

僕と崇、桃、絵里奈、葵、奈緒美、恵麻の7人でアメリカへ行くことになった。


 世界一周できる飛行機があるみたいで日本からアメリカまで直行でいけるらしい。

この世界のアメリカ西海岸は日本の領土で北城大公家が支配している。

北城大公家の経済基盤である金山の街サンフランシスコと並ぶ油田の街ロサンゼルスに僕たちは向かった。

例のごとく崇の権力で貸し切りの贅沢な機内だった。


 崇は桃に着せるつもりで水着を山ほど用意していたので到着前から機内で水着ショーをやっていた。

5人は調子に乗って着替えた。

奈緒美さんは大人の魅力を発揮する黒いビキニで大胆に決めていた。

恵麻は「私は一年間これしか着られないから」と言って天使のレオタードだった。

桃は無難にニット生地のセパレートの水着を着ていた。

崇は思ったほど大胆じゃなくても嬉しそうだった。


絵里奈はハイレグのワンピースでお尻がかなり細く食い込んでいた、なんか見られて嬉しそう…

葵はフリルのついたTバックビキニでお尻が丸出し…

僕が「葵、尻出しすぎ」と注意すると「尻毛奉行さま、尻毛検分してくだせえ」とふざけて僕の方に尻を突き出してフリフリしてきた。

絵里奈は合いの手を入れるように「若様から頂いたエステ券で葵の尻毛は処理済みですよ」

僕は頭を抱えて崇に振ってみた「若様、どうぞ馬鹿どもの尻毛をご検分ください」

崇は僕の言葉にえっと驚いた顔をして「じゃあ、名取さんの尻毛から検分さ、さ、ぇ…」と混乱状態に陥っていた。

桃がいつもの調子でツッコミをいれるかと反応を見ているとすぐに動かなかった。

崇も言葉がバグってる。

桃はしょうがないなという顔で「若様、どうぞ尻毛をご検分ください」と言って崇に尻を向けると、セパレート水着の下に手をかけた。

僕は「まて、桃、おちつけぇ、」と叫んで桃の手をつかんで引き上げた。

僕が上に引っ張ったせいで水着が上に引っ張られて食い込んだ、その時、崇が「尻毛検分を邪魔するな!」と叫んで桃の手をつかんでいる僕の手をつかんだ。

お互いの手が上下逆方向に力を込めて拮抗状態になって動けなくなったその時、桃が「いい加減にしなさい!」と叫んで両手を全力で高くつき上げた。

僕と崇は勢いに負けて手を放してひっくり返った。

「二人とも、ナニ冗談にマジになってんのよ」

「本当に脱いで尻毛なんか見せるわけないでしょ」

「常識で考えなさいよ」


 僕たち二人は桃の冗談にマジになって争ったことを反省した。

「ところで桃さん、その手に持っている物は…」と桃が手に持っている破けた布を指さした。

桃が両手を高くつき上げた時、水着が破けて下半身丸出しになっていた…

崇は尻毛検分を果たしていた。


 水着ショーを諦めてから数時間後、アメリカ大陸に到着すると、アメリカ上空を遊覧飛行しながら崇がこの世界のアメリカを解説していた。

「あのコロラド川から向こうがアメリカ領で、あれが高祖北城大公様が建設を提唱され、五代目北城大公様の時に完成した大公ダムだよ」

「広大な人造湖に蓄えられた水資源はロサンゼルスを始め北米大陸南西地域の水源になってるんだ」

「大公ダムなくしてロサンゼルスの発展はなかったといわれる世界最大のダムだよ」

「国境線近くに農場が広がっているだろ、工場も並んでてすごいだろ」

「あれが日米共同統治領のラスベガスだよ」

「日本の高い生産力から生まれた富をアメリカと分け合っている日米友好の象徴なんだ、」

崇の自慢の解説が続く途中でなにか大きな音がして飛行機が傾いた。

乗務員の人が座ってシートベルトをしめてくださいと叫んでいる。

窓の外を見ると右側のエンジンが火を噴いていた。

なんとか片方のエンジンだけで旋回して飛行場に向かおうとした時、左側のエンジンも火を噴いて止まった。

機長が緊急着陸しますとアナウンスしている。

僕は恐怖でキンタマが縮みあがった、度胸の塊みたいな桃なら大丈夫と思って見たら真っ青になって、崇が冷静に隣で桃の手を握っていた。

絵里奈は失禁して白目をむいているし、葵は「うひゃひょほぅ」と意味不明な叫びをあげていた。

恵麻と奈緒美さんは平然としていた。

僕たちの乗った飛行機は突然のトラブルでダムの西にある広大な農場の真ん中に胴体着陸した。

パイロットの腕が良かったのか大破せずに怪我人もなく止まってくれた。


 外に出ると農場で大勢の人が働いているのが見える、その中の一人が恵麻を見てこっちへ走ってくる、恵麻もその人を見て走り出したけど奈緒美さんが抱きついて止めた。

農場の人もすぐに後ろから追いつかれて倒された、倒した人がこっちへ来るなと身振りしているように見える。

恵麻はあの人たちを見つめながら涙を流していた。

崇が「恵麻さん、大丈夫ですか」と声をかけると恵麻は「飛行機が墜落して死ぬかと思って泣いちゃいました」と答えた。

あの人達は何なんだろう?


 周囲の農場では大勢の人達がやせ細った汚い姿で農作業に従事していた。

すぐに救助隊が来て僕たちはホテルへ案内された。

途中の道路で工場へ出入りするゾンビみたいな生気の無い人たちの群れを見た。

これが大公家が作った物…

恵麻は外をじっと見つめ、崇は窓の外から目をそらしていた。


 奈緒美さんはホテルに到着すると「お風呂入りたい、広いジャグジーがいいです」とわがままを言い出して、ホテルの人に案内してもらって入ることにした。

ただし、女性5人と僕1人で、崇だけ「童貞君じゃないと犯されそうで怖いです」と言われてのけ者にされた、崇も童貞なのにかわいそう…

奈緒美さんは僕が見ているのも気にせずに脱いだ、恵麻は恥ずかしそうにバスタオルで隠しているので、僕は見ないようにして下半身にバスタオルをまいた。

桃と絵里奈と葵の三人は微塵も気にせずに全裸である、コイツら慎みとか貞操が行方不明になってないか?

奈緒美さんは裸を隠さずにふざけた調子で僕に振ってきた「童貞のフリしたヤリチン君、恵麻さんの初体験の相手もお願いしましょうか?」「親子丼食べますか?」

恵麻は奈緒美さんの言葉を聞いて黙ってバスタオルを捨てて全裸になって先に入っていった。

僕もバスタオルで隠して押さえながら続いたけど、奈緒美さんと恵麻の裸を見た僕の股間が困ったこととになっていた。

恵麻は全裸で僕の股間を見つめると「おねがいします」とだけ小さくつぶやいた。

僕がうっかり両手を放してしまい起き上がると、桃が僕をつかんで、きっぱりと言い放った。

「コレ、私のだから貸しません」

僕は思わず叫んだ「桃、痛い、もげる、放して!」

奈緒美さんはふざけた調子で「冗談ですよ、冗談」「男に犯される汚い仕事は私の役目ですから、恵麻さんは奇麗な体でいなさい」

奈緒美さんは恵麻にバスタオルを渡して隠させた。

恵麻は小さな声で「いつも母さんにさせてるから私も…」

奈緒美さんは元気づけるように「この男なら寝なくても落とせるから大丈夫です」「安売りしちゃダメですよ」と僕をさりげなくディスってきた…

「僕に失礼ですけど、僕は奈緒美さんとは関係していませんからね」そう言った瞬間「「「パアン」」」と大きな音がして桃と絵里奈と葵が僕の裸の背中を全力で平手打ちした。

「痛い、いたいよ、」と抗議したら三人は「「「本当に奈緒美さんと寝てたらこんなもんじゃすまない!!!」」」と怒った。


桃は僕のアレが小さくなったのを確認すると

「だいたいアンタね、奈緒美さんにからかわれてるんじゃなくて、試されてるのよ」

「アンタが私たちの目の前で平気で女を犯すヤリチンか試されてるの、バカじゃないの!」


「さすが、桃さん本当に恵麻さんに挿入したら切り落としていました」と言って全裸なのにどこからか隠し刃物を出した。

桃が止めてくれなかったらマジでヤバかった…


奈緒美さんは僕たちをジャグジーの中に集めて話し始めた。

「飛行機のエンジンが爆発したの旦那様の仕込みです、狙った通りピッタリ不時着しました」


「「「「えぇぇぇっ、!!!!」」」」


奈緒美さんはさらっと重大な告白をした。そういえば、この人も伝説のスパイの一人なんだよな…


奈緒美さんは話を続けた

「日米共同統治領ラスベガスをアメリカ人は奴隷監獄(スレイブ・プリズン)と呼んでいます」

「共同統治は建前で、アメリカ政府は犯罪者と多重債務者(カイジ)を日本の奴隷に提供しています」

「そして、アメリカ南西部の砂漠地帯で暮らす人達は日本から高額な水を買わなければ生きていけません、払えなければ奴隷として売られます」

「あれが、ゴールドと石油に続く北城大公家の財布、ラスベガスの奴隷と水売りですよ」


僕たちは衝撃の事実に真っ青になった。

恵麻は少しだけ希望のある暗い表情で「兄ちゃん達、生きてた」とつぶやいた。

奈緒美さんは優しく「大丈夫、お兄さんたちは絶望せずに頑張ってます、もう少しですよ」と諭した。


恵麻は静かに身の上話を始めた

「私は8人兄弟の末っ子です、兄弟と言っても同じ孤児院にいただけで血は繋がっていません」

「上のチャールズ兄ちゃんとアレクサンダー兄ちゃんが電気装置を発明して、エマソン先生はすごく褒めてくれて借金して会社を作ってくれました」

「兄ちゃんたちが作った製品はすごく売れて、会社は順調で、私が飛び級して上の学校に通えることになったら兄ちゃんたちは苦労して学費を用意してくれました」

「みんなが幸せになれると思った時に、秘伝管理庁の役人がやってきて、コレは大公様の秘伝だから使用料を払えと言って全部持って行ったんです」

「兄ちゃんが俺たちが考えたものだ証拠を見せろと言っても秘伝だから見せられないと言われ、先生も兄ちゃんたちも賠償金を払うために奴隷監獄につれていかれました」

「まだ6歳だった私だけが孤児院に残されて、一人でお腹を空かせて泣いている所に父さんがやって来て私を引き取ってくれたんです」

「兄ちゃん達、みんな、生きててくれた、10年も私を待っててくれた…」

「私がスパイになった理由は兄ちゃんたちを解放するためです」


桃と絵里奈と葵は真っ青になっていた、特に葵は涙を流して震えていた。

奈緒美さんは葵を抱きしめると「この機会にお姫様には大公家が何をしていたのか知ってほしかったです」

奈緒美さんは壁の一点を見つめると大きな声で叫んだ「桃さんの入浴を覗いている大公家の若様にも知って頂きたいです!」

僕たちは盛大にズッコケた。たぶん、壁の向こうで崇もズッコケている気がした。

奈緒美さんは崇が覗いていることまで織り込み済みだった。


 僕たちが気を取り直して、いや、元気なふりをして脱衣所に戻ると桃がパンツを見て不信がっていた。

「いつのまにか新品とすり替えられてる」

僕たちは部屋に入ると、全員で若様の査問会を開いて、桃は二枚のパンツを取り返した。

パンツの話が一番最初になったせいで、大公家の酷い話とか、タイムマシーンで未来から来た話が話しやすくなった気がするけど、奈緒美さんがそこまで考えていたなら完璧な流れじゃないか?

一流のスパイは空気を作り話の流れを征する事ができてこそなんだと今頃になって悟った。


三人の姫と崇は大公家がやっていることに深く傷つき悩んでいた。僕たちが未来から来たことをカミングアウトして崇に衝撃の事実を伝えた。

そして、桃は自分が崇の実の娘であることを告げた。崇は実の娘のパンツを盗んで嗅いでいた変態だったショックより、感じていた愛情が親子の愛だったことに気づいて、むしろこじらせた気がする…


 僕は大公ダムが元の世界ではフーバーダムと呼ばれたアメリカ大統領が作った物だと、北城がチートによってフーバー大統領の功績を横取りした上でアメリカ人に高く売りつけ続けている事を話した。

久保田と北城がやった無双チートは人類すべてからの搾取であり冒涜だった。


僕たちは翌日には日本へ戻った、真実を知った崇がどうするのか気になるけど、僕たちは崇を信じて待つことにした。


奈緒美さんはダメなら若様を暗殺して皆さんをお守りしますと、さらっと怖いことを言っていた…


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