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裸の王子様シリーズ

俺達の城にはときどき全裸の変態王子が出没する。でも意外にモテているらしい

作者: 仲仁へび



「全裸だ!」

「全裸が出たぞ!」

「捕まえろ!」


 俺はとある城に勤める兵士だ。

 いまは仕事の合間で、一休みしていたのだが。


 休憩中だったのに、城内が慌ただしくなった。


 もしかしてまたあの大変な王子が、大変な状態で出没したのだろうか。


 俺が勤めている城の王子は少々、いやかなり頭がおかしい。


 昼間でも夜中でも人がいてもいなくてもおかまいなしに、まっぱだかで城内を闊歩している。


 勤め始めた頃は、そりゃもうわが目を疑ったさ。


 だって、国を担う重要人物だろ。

 そんな人物がそんな大変な状態で、そこら辺を歩いていていいのかよって。


 忘れもできないファーストコンタクト。視界の隅に奇怪な肌色を見かけた際には、二度見ならぬ三度見してしまった。


 そんな変態王子、止められるヤツがかなりすくないのが問題だ。


 ほうっておくと、変態状態のまま城外に出て行ってしまうから、なんとか止めなくちゃいけないんだろうけど。


 ほら、相手の方が身分上だし。

 失礼がないようにって思うと、つい手が緩んでしまうだろ。


 それに王子はおかしな所で頭がいい。

 弱みを握った人間に目撃証言を偽らせたり、自分の分身人形をおとりに使ったりしでかす。


 おまけに、みょうちくりんな事をしては追手の兵士達をまいてしまうのだ。


 言ってるそばから、小麦粉をまいた王子が追手の囲いから脱出、逃走。


 捕縛を試みた兵士達はげほげほとせき込んでいる。


 王子はそのまま、門の所にいって、苦労症の門番の女性を困らせながら脱走していくのだろうけれど、今日は幸いにも誰かがとめてくれたらしい。


 カエルがつぶれたような王子の悲鳴が聞こえてきた。


 ややあって、やってきたのは隣国から帰って来た第二王子。


 つまり変態王子の弟だ。


 国交に関するお仕事を終えてきたのだろう。


 すぐれた魔法使いである第二王子は、変態と違って常識を持っているから。


 その第二王子は魔法で、雷かなにかでも落としたのだろう。


 変態王子は髪の毛がちりちりになった状態で、兵士達に運ばれていた。


 今日は第二王子が活躍したのかと思う。


 日によっては、厳しい女家庭教師が説教をしていたり、顔を赤らめた門番にビンタされて気絶させられていたりする。


 我が国は、この三人が働いてくれているから、たいへんな王子が世に放たれる事が少なくなっているのだった。


 あ、あと食堂のおばちゃんに叱られるのも弱かったか。

 変態王子、「オカンみたいだ」っていって、苦手にしてたんだよな。


 だが、たまに三人とも城にいない時があるので、その時はもう絶望的だ。


 王子の父、現王は体が弱くてベッドの上から起きられないし、母である妃はその看病でつきっきり。


 へんたい王子は見てくれは結構良いので、お見合い話がばんばん来ているらしいが。やはり全裸になりたがる所が致命的だった。面倒をみてくれる人間は現れていない。


 誰でもいいから誰か、早くあのへんたいの癖をなおしてくれないだろうか。


 けれど、救世主は存在した。


 変態王子は妙な所でもてる。


 いとこの女の子が遊んでとせがめば、脱出を中断して遊んであげているし。


 門番の堅物女性が通せんぼすれば、ちょっかい合戦をして無駄な時間を使っている。


 どこかの道で助けた貴族令嬢が甘味の差し入れをもってくれば、律義に全部たべているしで。


 見た目変態なのになんでそんなにモテるんだろうな。


 ああ、また変態が脱走しようとしている。


 その変態にマナーの教師である女性がちかよって、おしりにケリを入れていた。


 そして、ずるずる引きずられる変態王子。


 変態王子が何か文句を言えば、そのマナーの教師は叱りながらも、どこか楽しそうに会話に応じている。


 うん、本当になんでモテてるんだろう。






 疑問に思っていた俺は、ほどなくそれを理解した。


 任務が遅くなったため、夜中に城に報告しにきた俺は、厨房で何かを作っている王子と遭遇してしまった。


 思わず相手が王子なのに「げっ」と言ってしまう位には衝撃的だった。


 王子は、日ごろ迷惑をかけている女性達に、お詫びのスイーツを作っているようだった。


 驚くことに全員の好きな食べ物や色、模様なども把握しているらしい。


 俺が理由を尋ねれば。


「俺は王子だからな。下々の事を把握するのは当然のことなのだ!」


 とのことだ。


「自らの下で働く者達に支えられている事を自覚できなければ、その王は孤独と化すだろう。そうなれば、重要な時に手を貸してもらえないボッチ王子の誕生だ!」


 意外にしっかり王子としての自分を意識している。


「だから、王子は忘れないぞ! 汗水ながして働く部下達の事をな!」


 にかっと笑う王子は、本当にそう思っているようだった。


 ご機嫌取りの嘘ではないようだ。


 変態だけど、王子はちゃんとした王子だったのだ。






 でも、これだけは言わせてほしい。


「日ごろの脱走がなければ、あの彼女達も苦労しなかったのではないでしょうか」


 自分がまいた苦労もあると言う事を。







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