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三人組

やっと入学です…やっと…!!(むしろ入学一年後になりました大汗)

メインヒーローもやっと登場です滝汗



「ーーッ!!もう一回…ッ!!」


弾かれた木剣を掴み、コルガーを睨み付けながら剣先を向ける。


「終いだ、ルフェ」


「ッ、乗るな重い…!!」


しまった、気付かなかった…!

背後から両肩に体重を掛けられ動きを封じられる。


「戻るぞ、コルガーも」


「ンだよ~、これからだってのに」


「自主練も程々にせよとの閣下直々の御言葉を忘れたのか?」



ディートに冷ややかな目で見下ろされ、心中で口煩い巨人め!と毒突く。


ルジは深々と溜め息を吐き、腰を落としながら身を反転させて立ち上がる。ディートの腕を払い、下から見据える。



「…お前は私の母親か?」


「ブッ…!!」


「女になった覚えはない」


「ッハ~!!やめてくれ腹痛ぇ…!!」



カラカラと笑い転げるコルガー。


自分に言われたら洒落にならないな、と少し冷静さを取り戻す。

…自分がこのように皮肉を言うような性分だったとは、士官学校に入るまで知らなかった。



「コルガー、いい加減にしろ」


「ひーッ、ちょっと待てよ…んで俺だけ笑ってンだよっ!」



コルガーの言葉に周囲へ目を向ければ、遠巻きに私達を見ていた同期生達が顔を引き攣らせている。


ああ、これは見覚えのある顔だな…確か…そう、入学式典の時だ。

後から知ったのだけれど、コルガーと私が自己紹介をした時に緊張が走ったのは、十数年振りに辺境国より入学して来たという事実と私達の顔色が原因だったらしい。


本当に…あれは…もう二度と馬に乗りたくないと音を上げてしまいたくなる程、酷であった。その所為で顔が歪んでいたのであって、威嚇していた訳ではないと弁解したい。


まあ…今更である。あれから一年経ち、すっかり私とコルガー、そして別の意味で浮いているディートの三人は距離を取られている。



「はあ~、っと、今日の飯は?」



自室で身を清めた後、食堂で合流する。


肉!と喜ぶコルガー。ルジは肉か…と心中で嘆息する。

魚はまだ増しなのだけれど…肉は本当に酷い。只の肉なのである。自室にある調味料を掛けてしまいたいと何度思ったことか…



「ルフェ、手が止まっている」


「…チッ」


「令息が舌打ちをするな」


「…ブブッ、」


「コルガーも食事中だ」



……やはりディートは私達の母親である。

チラリとコルガーを見遣れば口を押さえながら頷いている。



「其のような有様だから小柄だと?」


「私は何も言っていない」


「顔がそう言っている」


「ック、……おいッやめろって…!!」



ルジとディートが真顔で言い合う様に耐え切れず笑うコルガー。

ザワザワと食堂が騒がしくなる。


ああ、上級生が入って来たのか。随分と、苛ついているな。演習後なのだろうか。



「予科生が何故座っている!!」



怒鳴り声と共に、椅子ごと蹴り飛ばした音が鳴り響く。

床に転がった予科生と共に食事をしていた予科生達が、瞬時に立ち上がり頭を下げる。



「もッ…申し訳ありませんでした…ッ!!」



そう言って平伏する予科生。


嗚呼、胸糞が悪い。斯様な言葉を知ったのは、最近である。

席を立ち、騒ぎの中心へ向かう。



「何だ、御令息様。何用だ?」



ニヤニヤと、貴人らしからぬ笑みを浮かべる。


御令息様、か。其のように裏で呼ばれているのか。であるならば。

この場にそぐわない穏やかな微笑みを上級生に向ける。



「何故座っているのかとお聞きになっていたので、応えに参りました」


「ほお?」


「食事を取る為にございます」


「…ッハ!!何を口答えるかと思えば!」


食事を取るためだあ?と、ゲラゲラ笑い出す上級生達。


「ええ、其れ故、お引き取り願えますか?」


ピタリと笑い声が止む。


「…ンだと下級生が!!」


「下級生ですが、食堂は食事を取る場所にございまーー」


ーー拳が飛んで来る。

重心をずらしそれを避け、素早く背後に回り腕を拘束する。


「ッ!?」


更に締め上げる。


「申し訳ありませんが、正当防衛であります」


「ッ…クソがッ!!おいお前らッ…!?」


喚く上級生に、取り巻きの上級生達は視線を外す。


おそらく、理由があって取り巻きをしているのであろう。全く、貴族というのは厄介なようだ。辺境国には疾うに居なくなった存在である。



「……ッチ、貴様…!覚えていろよ」



拘束を緩めれば、上級生は腕を振り払いルジを睨み付ける。


士官学校で知ったことは、他にもある。

未だに下級生、特に予科生に対して理不尽な鉄拳制裁を加える者がいること。いつの時代かと問いたくなる。教官による体罰さえ禁じられているというのに。

そして、上級生であっても小柄な私が遣り返すことのできる程度の生徒がいる、ということも。



「ルフェ、見事だった」



逃げ去る上級生たちを眺めていると、珍しく笑っているディートに声を掛けられた。



「胸糞悪いが」


「ハッ!そりゃあ肉のせぇだな!」


「言葉遣いが悪い。肉の所為にするな」


「ハイハイ申し訳ございませーんっ!」



再び真顔に戻ったディートを盗み見る。


これで、平民出身というのは無理がある。初日の自己紹介で誰もが思っただろう。隠すつもりのないお育ちの良い態度に、貴族の者達は何故か怯えている。


まあ、其れも何れ分かることだろう。

小さく息を漏らし、冷めた肉料理に手を付けた。



ヒーローがオカン気質になってしまった…!!

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