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お嬢様とお坊ちゃん

できれば毎日投稿したいです汗



「お嬢様ぁあぁ!!!!」



早朝から金切り声が城内に響き渡っている。窓の外まで聞こえている。



「おー、今日もすげぇな」


「絶好調だな」


「絶好調~?ひっでぇお嬢様だーーッ!!」



ルジはしゃがみ込んだ男を見下ろす。



「おま…ッんで怪我したとこ知ってんだよッ!!」


「…隠し切れていない」


「ハァ?ったく、信じらんねぇ…」



右肩を摩っているコルガーを無表情のまま見遣る。


怪我、だったのか。少し肩が張っているのかと思っていたのだけれど…強く掴み過ぎてしまったかもしれない。



「…悪かった」


「いや違ぇよ、怪我ってバレてた方の話」


「…そうか。なら、続きは互いに左手一本で」


「へぇ?随分と舐められたもんだなあ?」



コルガーが左肩を回しながら立ち上がる。


舐めているわけではない…けれど、そう言ったところでコルガーには嫌味にしか聞こえないだろう。そもそも、対等でありたいという私の考え自体が不快なのだから。


ルジも左手に木剣を持ち替え、向き合い、剣を構え、一歩踏み込みーーーー鈍い音を立てながら全身でコルガーの剣を受け止める。容赦なく押し込まれる。


……重い…


コルガーが左利きで、同身長でもおそらく体重は私の方が軽く、筋肉量の男女差も無論あるけれど……嗚呼、本当に愈々、



「ハッ!!」


フッと瞬間的に力を抜き、身を低くしながらコルガーの剣を素早く払い切り返す。


「左手でコレかよッ!!」


続け様に肩甲骨を操り渾身の力で打合う。


「クッソ!!」


嗚呼!!クソはこっちの台詞だ!!無駄口を叩く余裕に気が立つーーーー何か、


ルジが突如コルガーに背を向け飛んできた何かを剣で薙ぎ払う。



「何者だッ!!」



地面に転がった石を横目に、それを投げてきたであろう方向を見て叫ぶ。



「お~っと、殺気半端ねぇなあ?ただの石だろ?」



ガサリと音を立て茂みから出てきた男を目にしたルジ達は、ほぼ同時にハッと息を呑む。すぐ様同盟国式の敬礼をする。



「あ~、やめろやめろ。敬礼すんなって。散歩ついでに偶々お前ら見つけてのちょっかいだからよ、領主殿に知られたら俺の方が咎められるわ~」


「………」



ルジ達はなんと返したらいいか分からないといった困惑した顔で、ヘラヘラと笑みを浮かべる同盟国の軍服を着た男を見詰める。



「いやいや、これほんとな?いやあ、ほんと悪かったな!さすが辺境国の剣士!真面目だな!」


「……恐れながら、我々は剣士ではなくーー」


「ーー騎士団長殿!斯様な所にいらっしゃいましたか!」



ルジの声に被さったのは、領主の執事長。


……騎士、団長殿…?


冷や汗が背中を伝う。ちらりとコルガーを窺えば、同じような目をしていた。



「ああ、申し訳ない。ちょっと散歩に出ていてね?」



多分、執事長からは私達の姿は見えていないのだろう。見つかったら絶対にお叱りを受けるところだった。


城内へ足を向けていた騎士団長が一瞬振り返り、ニヤリと笑う。



「……ルゥ、今日、”お嬢様の日”か?」


「そう…だけど、騎士団長様に…私が会う必要、あるかな…」


「…お坊ちゃんに会いに来た、とか」



小さく息を吐きながら、騎士団長の小さくなっていく背からコルガーに視線を移す。


……そうかもしれない。

ルフェは来年十六歳。同盟国の士官学校は、十五歳に入学試験を受けることになっていると領主様に聞いていた。

そして、今までどの代も例外なく、辺境国の令息は士官学校へ行く事となっているという話も。



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