開け閉めできる真夏
息抜きのつもりで久しぶりに短編を書いてみました。最後まで読んでもらえると嬉しいです。
地球が出来た頃、色々作りたがる男女の神様がおりました。男の神様は自然を作り、女の神様は生き物を作り、そして二人で力を合わせて世界を生み出しました。生み出した世界は自分達が手を加えずとも、生き物たちによってどんどん発展していきました。しかし、自然だけは発展しませんでした。
世界の様子を見て、ある時、男の神様が言い出しました。
「自由にコントロールできる気候の扉を作りたい」
女神様は突然言い出したことに疑問を持ちました。
「そんな扉作ってどうするんですか?」
女の神様の問いかけに、男の神様は自信満々に言います。
「コントロールできたら楽しいだろう」
「わけが分かりません。もう少し分かりやすく言ってください」
「ただ自然を作っても成長しない。ならば、気候があれば自然が発展するのでは、と思い立ったのだよ」
女の神様は不機嫌そうにため息を吐きました。
「なるほど。それなら分かります。そうなら最初からそう言ってください」
さすがにまずいと思ったようで、男の神様は頭を下げます。
「すまない。ただ君をからかってみたくなった。ただそれだけだ」
「もういいです。それで、気候の扉をどうやって作るんですか」
「だから手始めに『開け閉めできる真夏』を作るんだ」
「真夏、ですか……暑そうですけど、いきなり真夏を作るんですか」
「あぁ。そうだ、コントロールできれば植物たちも喜ぶ。生き物もさらに発展を遂げるだろう」
「それを一人で作るのですか? かなり膨大ですよ?」
「だから君にも手伝ってもらいたい。君の力がどうしても必要なんだ」
「はぁ、仕方がありませんね……」
こうして、二人の神様は暑さを自由にコントロールできる巨大な扉『開け閉めできる真夏』を作り出しました。作ってみたところ、男の神様の思惑通り、自然がみるみる成長し、世界を豊かにしていきます。さらに生き物たちが暑さに適応し、発展させていったのです。
それを見た女の神様は羨ましく思います。なんて素晴らしい扉! これさえあれば、世界が思う通りに動いてくれる。
「その扉、素晴らしいですね」
女の神様の手のひら返しに、男の神様は疑問を抱きます。
「君は先程まで気乗りしなそうな表情をしていたじゃないか。急にどうしたというんだい」
「それさえあれば、改良して思うように世界を作れると思ったのです。だから、ください」
「今は駄目だ。細心の注意を払わないと壊れる可能性がある」
男の神様はそれだけ言えば彼女なら理解してくれるだろうと予想しました。ところが、女の神様は頭の中は『開け閉めできる真夏』のことでいっぱいで理解出来ませんでした。
「二人で作ったものなのに、独り占めする気ですか。ずるいですよ」
「いや、そういうことではなくて……」
「いいから、私に渡してください……!」
女の神様は、男の神様が持っているコントロールパネルを奪おうとします。男の神様はパネルを取られまいと守ります。
「今は駄目なんだ! 今は……!」
「いいから、私に…………!!」
男の神様は渡せない理由を何度も言おうとしますが、女の神様は聞く耳を持ちません。
「私は世界を作った創造神ですよ! なのに世界をコントロールできないなんてもどかしいのに……! でもそれがあれば、世界は思うがままなんですよ!!」
「それでも駄目なんだ、今は無理やり使おうとすると後戻り出来なくなってしまう……!!」
二人は言い争い、お互いの意見を主張しますが平行線をたどって終わりませんでした。
「コントロールパネルを渡して!!」
と、女の神様が叫び声を上げ、コントロールパネルを奪った瞬間。開け閉めできる真夏が轟音を鳴らし崩れていきました。崩壊していく様子を見た二人は「あっ…………」と同時に声を漏らします。二人が言い争っている間、お互い無意識に力を放出していたようで、その力が扉にあたっていたのです。
なぜ壊れたのか、二人が原因に気がついたときには、跡形もなく壊れてしまった後でした。
「…………どうするんですか、これ」
「どうもこうもないよ。せっかく作った扉が壊れてしまった。あれ以上のものをつくるなんて無理だ」
「あぁ、せっかくの世界征服が……」
こうして、二人の神様が作り出した扉は幻の装置となりました。けれど、その後。真夏が地球に定着、各地の砂漠にオアシスを生み出し、様々な生態系が誕生。数々の歴史が生まれたことはまだ先の話。
おわり
初めて神視点というものに挑戦しました。三人視点とは違った視点で難しいなと感じましたが、こんな視点もあるんだなと勉強になりました。
久しぶりに短編小説書けて楽しかったです。気が向いたらまた短編を書いてみたいなと思ってます。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。