第27話
「なんだ、斉藤か。どうした?もうすぐ式が始まるぞ。」
タイミングがいいのか、教室には彼一人だった。
平然を装っているが、一瞬驚いた表情を私は見逃さなかった。
が、そのことには触れなかった。
何かを、飲んでいたらしく彼の手にはマグカップが・・・
「どうかしたのか?」
いきなり訪問してきた私を心配してか手にあるカップを机におき私との距離を縮める信一さん。
「あの・・・ちょっと、言っておきたいことがあって・・・」
私はこれから言うであろう事を考えると、真直ぐに信一さんの顔を見ることが出来なかった・・・
なにも言わない信一さん・・・涙が出そう・・・でも 今言わなきゃ!!
私は覚悟を決めて顔をあげ真直ぐと信一さんを見据えて口を開いた。
「覚えていないかもしれないけれど、同じ時間を過ごせたことが短い時間だったけど、なによりも大切な思い出になりました。ずっと、好きでした。」
信一さんから目を離さずに言った。
目の前にいる信一さんは信じられないといった風にかなり驚いていた。
私は、そんな信一さんに軽く満足し教室から出て行こうとした。
「斉藤!」
信一さんの呼び掛けに、ドアの前で私は立ち止まった。
でも何を言われるかわかっているだけに、怖くて振り向くことは出来なかった・・・
振り向いてしまうときっとまた泣いてしまう。
もう、そんな姿は見せたくない。
「ゴメンな」
予想通りの信一さんの一言
私は何も言えずその場を後にした。
このまま式をサボりたい気持ちにもなったがさすがにそれは出来ないと美夜子が待つ教室に帰ることにした。
しかし、真直ぐに教室へと向かわずに、近くのトイレに入った。
涙を洗い流すために・・・
「由姫・・・」
顔を上げると鏡越しに美夜子が見えた。
「気持ち伝えられた?すっきり出来そう?」
優しい、美夜子の言葉・・・
せっかく引いていた涙がまた出てきた。
私は、美夜子にすがりつくように泣いた。
声を押し殺しながら・・・
美夜子はなにも言わずただ頭を撫でてくれた。
「きっと、いいこともあるわ。」
美夜子はそう呟いたが泣いていた私には聞こえてなかった。




