第21話
「今日から二週間お世話になります。駒井です。よろしくお願いします。織田先生とは大学の先輩後輩です。」
今日からやってくると聞いていた教育自習の先生
女の先生なのは気にしない。
でも、まさか、先生と知り合いだなんて・・・
「えーぇ、怪しいぃ~」
「もしかして彼女ですか?」
クラス中がどよめきだした。
「どう思う?」
生徒達の反応に楽しそうに話に乗る駒井先生
「お前らに関係ない」
スパッと肯定も否定もせずに先生は言った。
「駒井も話にのるな。
ここは大学じゃない、学生じゃないんだ。」
キッと睨み付け駒井先生を黙らせた。
「あの人、本当に彼女かな?」
「否定はしなかったしね。」
HRが終わり、先生達がいなくなった途端、先生ファンが集まり話し合いを始めた。
「由姫どうしたのぼぉーとして」
もちろん、美夜子もそのメンバーの一人であって私は強制的に参加させられていた。
「なんでもない。」
美夜子は私の答えにそう気にすることなく周りと話に集中した。
「ってゆーかべたべたしすぎだし」
美夜子を筆頭にブツブツとみんなが文句を言いだした。
なんでもないと言ったものの私は、先生と駒井先生のことで頭がいっぱいだったりする。
私とのことの記憶をなくしている先生にこのことがどう影響するのかかなり不安が大きい。
先生が私のことをどう思っていたかは知らないけれど、多少は好意を持っていてくれた。
そう思いたい。
でも今はそんなことは関係なかった。
そのことすら、先生の心には残っていないのだから・・・
「斎藤、あとで資料室に来てくれ」
先生の授業が終わり考え込んでいた私に近付いてきた。
「はい。」
いきなりでびっくりしたもののばれないように一置きし答えた。
「失礼します。」
昼休み、職員室に入るなり目の前に広がる男子の群れ・・・
なに?
私は驚きその場に固まってしまった。
「おっ、斎藤悪いな。隣にいこうか。」
男子の群れを苦笑いしながら隣にある進路指導室にと促す先生。
「なんなんですか、あれ?」
指導室に入るなりいすに座り何やら資料を探すようにファイルの中をがさごそしている先生
「あーぁ、4月の俺の逆バージョンだよ。」
4月・・・?
「もしかして駒井先生?」
確かに、赴任してきたばかりのころ女生徒に囲まれていた先生。
「そう。で、斎藤お前の推薦についてなんだが・・」
短大に進学する私は推薦の手続きを行っていた。
先生によると推薦はOKだそうで、担任からはもう少しランクをあげないか?との話を頂いていた。
「このままでかまいません。両親は私の意志を尊重して頂いているので先生方には申し訳ありませんが進路を変えるつもりはありません。」
はっきりと自分の意見を言い先生はわかったと納得してくれた。
「駒井先生ってきれいな人ですよね。」
指導室からでるなり男子の中心で楽しそうに話をしている先生に視線を送り言った。
「そうか?ほら、もうすぐ授業始まるぞ。お前等もいい加減に教室に帰れ」
なんか話をはぐらかされた気がする・・・
まぁ、いち生徒に真剣に答えるわけないか。
もし、信一さんだったら・・・同じ答えでも笑いながらそうか?って安心させるように頭を撫でてくれるんだろうな・・・
「斎藤?どうかしたのか?」
はっと気が付くと心配そうに私の顔を覗き込む先生がいた。
「だ・・・大丈夫です。失礼しました。」
久しぶりの先生のアップを見て私は慌てて職員室から逃げ出した。
あーびっくりした・・・授業が始まるのはわかっているが私は真直ぐに教室へは行かなかった。
行けなかったが相応しいかもしれない。
どうせ、いま教室に戻っても授業内容なんて頭に入らない・・・
私は、空き教室に入るなり美夜子にさぼることをメールした。
そして、心を落ち着けた。
まだ先生のアップが頭から離れず胸がドキドキいってる・・・
信一さんの顔だった。
一緒に楽しく暮らしていた時の・・・そう思うと涙が出てきてしまった。
なんでこんなことになっちゃったんだろう。
信一さんは優しかった。
一緒にいて幸せだった。
あのままでも十分・・・
欲張りに信一さんの気持ちが知りたいばかりに・・・私のわがままでこうなったんだ・・
記憶をなくされたほうもかなりつらい。
自分の中ではある思い出が信一さんの中には残っていない。
それに、向こうは忘れていることすら知らない。
いや、知らせないでほしいといったのは自分だ。
だって、記憶をなくしていることで信一さんが苦しむくらいなら知らないほうがいい。
ただ一人、私が苦しめば十分なのだから。
これは私に下されたバツなのだから。




