愛の涙は美しい
初めて書いたのでとても拙い文章ですが読んでいただけると嬉しいです。
キャラ設定や時代なんかは適当です。好きに妄想して読んでください。
これは後の世まで名をはせた英雄、アルナと無自覚な凄腕魔術師である知りたがりの少女ヴィアインのお話です。
私は「知らない」というほど心を揺さぶられる事象は無いと思います。世界には神秘や不思議が満ちていて、それらは今息をするこの瞬間も増え続けています。無限の事象と有限の私。つまり、永遠に全てを知るということは無いのです。だからこそ効率よく多くの事象を知るために私は今日も通い続けます。この世で一番事象を知る彼のもとへ。
朱桜の月、十二の日
「ねえ、アルナ。なぜ太陽は昇るのですか?」
「アァ、そんなことも知らねえのかよ。太陽の神アスルウスが_ 」
「それは違いました。昨日、アスルウスを殺しましたが、それでも今日、太陽は昇りました。」
「バッ、てんめぇ神屠りの禁忌をおかしたのかよ!?」
神屠りの禁忌とは、ヒトの身でありながら神を殺める儀である。殺められた神は再生することも無く、輪廻の輪へと戻れないという残虐にして絶対なる罪だ。
「やだなぁ、アルナ。私がそんな面倒くさいことするわけ無いじゃなないですか。不効率ですよ、そんなこと。」
「やっぱヴィアって、反則だな。」
そう言ってハハッと笑ったアルナは愉快そうでその笑顔をみているとなぜか胸がキュッとなりました。
そして半年がたった。
蒼雪の月、三十の日
「ねえ、アルナ。私、もう貴方に会えません。理由は知ってますよね?」
「帝国、だろ。アスルウスを殺してないとはいえ、ヴィアは神に勝った。その事実が帝国の奴らは気にくわない、そうなんだろ。」
「はい、あんな屑国一月もあれば滅ぼせますが時間の無駄、不効率の極みです。だからサヨウナラ、です。」
「何かあったら、呼べ。助けてやるから。」
アルナはそう二言だけ言ってくれました。このようにして、私達の不思議な関係は終焉を迎えました。
何でこんなに胸が痛いのでしょう?アルナと別れてこの痛みは日に日に強くなってゆきます。病気かと思い最上級の回復魔術を何度も何度もかけているのに全然治りません。回復魔術は病気は治せても、疲れは取れないので、疲労がたまったのかと思い、早々に仕事を片付けるとベッドに入りました。
夢を見ました。私はアルナの持っている本を読み漁っていて、アルナはそんな私を見て穏やか笑っている。当たり前のように過ごしていたいつもの日々です。
だが、瞬きをすると一瞬で視界いっぱいに黒で塗りつぶされている。
「いやああぁぁあぁぁあああ!!」
私は泣きながら飛び起きました。
「ゆ……め…?こわ…い…ゆ……め。」
「助けて、アルナ。」と言おうとしてやめました。帝国に追われているから、と別れたのは私からなのです。怖いから助けて、などそんな都合のいいことはしたくないんです。いいえ、できないのです。
アルナを捨てたのは私で、置いてきたのも私で、なのにアルナは「助けてやる」と、そう言ってくれたのです。そんなアルナにこれ以上迷惑をかけたくないのです。
ひとつ、またひとつとこぼれ落ちた涙が私の服にシミを作ってゆくのをぼんやりと眺めながら、私は理解しました。
私は、アルナのことが好きなのだと。凄腕魔術師としてではなく、一人の少女として愛しているのだと。そう自覚するともう涙はとまりません。二度と会えない訳ではありません、会おうと思えば好きなだけ会うことができます。だけど一度アルナを捨てた私はもう愛されない。そのはずなのです。
その事実は私を、私の心をズタズタに切り裂いて、締め上げて、それで終わりでした。慰めてはくれませんでした。
アルナから貰った深い海色のリボンを、茶色い髪から外し、窓を開けました。そして、夜風に流しました。
「ばいばい、アルナ。私の初恋の人。」
天高く舞い上がったリボンは、夜風にふわりふわりと流され、彼方へと此方へと飛び去っていきました。
『これヴィアにやる。』
飛び去るリボンを眺めていると、リボンを貰った日のことを思い出してまた、涙を流しました。月明かりに反射してキラキラと輝く涙はとても美しかったです。
「この後お婆ちゃんはどうなったの?」
それはご想像にお任せします。ただひとつ言えることは、何もかもを知ろうとして一番大切な《愛》を知らなかった私は、素敵な旦那様と可愛い子供、孫達と幸せに暮らしてるってことですね。
拙い文章を読んでいただきありがとうございました。新参者ですので感想等いただけると喜ばしいです。
頑張りますのでよろしくお願い致します。