1話 初めての異世界転移
時はさかのぼる。
本条拓真は大学から家に帰る途中だった。日は沈み、電車の窓からは電気の光が流星群のように過ぎていく。一緒に乗っている乗客は様々。でも、そのほとんどがスマホを見つめている。最寄り駅につき拓真は電車を降りたその時、電話がかかってきた。
「XX総合病院の桜井ですが、本条拓真さんのお電話でよろしいでしょうか。」
知らない番号の声の主はどこか無機質に、しかしどこか慌てていた。拓真は病院から電話がかかってくる意味も分からないまま声の主に返事する。
「はい、その通りですが、何かありましたか?」
「至急おいでください。あなたの母親さくらさんが交通事故にあい運ばれました。意識がない状態です。」
あまりに突然で、拓真はスマホを落としてしまった。スマホが床に向かって吸い寄せられるように落ちるさまはスローモーションで見え、画面が割れたことも直感した。あたりは何もなかったように階段に向かって歩く人だかりの中、彼の存在は少し浮いていた。
そんな、母さんが…どうして。俺には母さんしかいない。父は俺が生まれる前にもうなくなってしまったらしい。俺はしばらく立ちすくんでいたが、スマホを拾い駆け出した。『ホームでは走らないでください』そんなことは知らない。幸い病院は駅近くにある走っていけば1分程度でつくだろう。俺はごちゃごちゃした頭の中を整理できないまま走り出した。
病院につくとすぐに手術室へ案内された。
「さくらさん、拓真君が会いに来てくれましたよ。」
看護師さんの呼びかけに返事はない。
「お母さん、どうして、返事してよ。」「今日の夜ご飯はハンバーグなんでしょ、今日は珍しく仕事が休みだから、冷凍食品じゃなくて、手作りだってい行ってたじゃん。どうして…」
気づいたら泣いていた。訳も分からずこえをかけるも、その声は宙に消え壁に吸われていく。
そんな俺を支えるようにしながら、看護師さんが説明してくれた。母はどうやら買い物帰りだったこと、家のすぐそばでトラックと乗用車の事故が起こったこと。トラックの運ちゃんがすぐに救急車を呼んだこと。母は全身を乗用車につぶされ、望みも薄いことを。
母の周りに何人かの医者がついて、その一人は賢明に心臓マッサージをしていた。しかし母につながれた心電図がほとんど動いてないことは、素人の俺にもすぐにわかってしまった。俺には天罰が下ったのだろう。もっと母との時間を大切にすればよかった。でももう遅いんだろう。
「ご臨終です。」
その声は、静かに、しかし、部屋全体に響いた。
俺は膝から崩れ、泣き喚いた。そんな中だった。
「痛い、イタイイタイ、いたいいいーーー」
俺に急に痛みがオソウ。
視界がクラム。
奥でなにが起きたと医者がかけよるのがミエル。
俺は意識を失った。突然に。
暗い、暗い。手足の感覚もない。ここは―――
どれくらい時間がたっただろうか。俺は恐る恐る、ゆっくりと目を開けた。病室の天井が見えると思っていたが違った。青い、青い空が広がっている。手足の感覚も復活し、ゆっくりと体を起こす。
「ここは……どこだ」
視界には一面の白い大地、雪ではない。白い大地からは草が生え、ところどころ、木や花もある。しかしそのどれも、今まで見たものとは違う。葉は青く、幹は緑、花はカラフルだ。遠くには町のようなものがみえる。
どうやら俺は、うわさに聞く異世界転移とやらをしたらしい。