2-1 追試
「クラウンくん、その子が噂の猫妖精ってわけ?」
あれから数日後の朝。
ぼくの膝の上で丸まっているオーサを見つけて、ハニービーが話しかけてくる。
だけど当の猫サマは不機嫌そうな顔をひょこりと上げると、
「忌々しい話であるにゃあ。お前らなんぞ前足のさきっちょでひねり潰せるというのに、従属扱いとは」
「あら、なんだか変わった子ね」
使い魔らしからぬ態度に面食らったのか、ハニービーは首をかしげる。
あのあとオーサに新しくケープを織ってあげたので、最初にプレゼントしたやつはぼくがスカーフみたいに巻いている。
お揃いの格好でいると、まさにペットと飼い主いう感じ。しかし正体を秘密にするよう頼んではいるのだけど、はたして守る気があるのやら。
『使い魔になることだって認めたわけではにゃいぞっ!』
なんて心の声をぶつけてくるあたり、早くも頭が痛くなってくる。
まあ本物の破壊神だと告げたところで真に受ける人がいるとは思えないし、そこまで神経質にならなくていいかもしれない。
そこに今度はカイトとガードナーもやってきて、
「クラウンは期待を裏切らないよなあ。使い魔まで可愛い猫ちゃんとは」
「お前、そいつをどこで捕まえてきた。俺に内緒なんて珍しいじゃないか」
「実は色々あって……いや、ほんとに大変で」
うっかり殺されかけたくらいだし。
襲ってきたほうは今、ハニービーにくすぐられてうにゃうにゃ暴れているけど。
やがてへろへろになったオーサが戻ってきて、ぼくの膝にちょこんと収まる。
その姿を見たカイトが羨ましそうな声で、
「クラウンは学園に入って一年くらいだろ。なのにもう使い魔を見つけてくるとはね」
「魔法使いを志すものにとっては憧れの存在だもんねえ。私も休日になったら王都の外に出て、懐いてくれそうな魔物ちゃんを探しにいこうかしら」
「運がよければ、底意地の悪い女に騙されるゴブリンを見つけられるかもしれないな」
「ん? 今なにか言いまして?」
「まあまあ、ケンカはやめてよ。つかなんでガードナーはすぐ煽るのさ」
そこでカイトが思いだしたように、ぼくに言ってくる。
「ていうか君、呑気に猫とじゃれついていて大丈夫なのかい」
「なにが?」
「まさか、忘れたわけじゃ――」
すこし考えてから、ぼくの血の気がさあっと引いていく。
思いだした。
追試。
〈物体操作〉の課題。
水を粘土みたくコネコネするやつ。
やばい……。
キデック先生の追試に合格しないと、ぼくは学園を去ることになってしまうのだ。




