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ぼくの猫は破壊神 〜魔法学園の落ちこぼれ、最強の使い魔を復活させて成り上がる〜  作者: 芹沢政信
四章 ぼくが君を助けるために、王都の上空でドラゴンと戦う話
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4-11 エピローグ

「……あれから数百年経た今なお語り継がれているクラウン・ロッドの逸話の多くは、大陸中を飛びまわっていたベルクレアが伝えたものだと言われている。目標に向かって一直線、そして愛嬌たっぷりの人柄も相まってか、彼女は行商人として成功を収めたようだね」


 若きクラウン・ロッドがどのようにして、大魔法使いへの道のりを歩むことになったか――そのきっかけとなる物語を話してくれた司書の先生は、最後にそう結んで口を閉じた。

 気がつけば夜の暗闇が近づいてきており、第三図書室に灯った照明のチカチカとした瞬きが、寮の門限が近いことを私に知らせてくれる。

 司書の先生はだからこそ、区切りのよいところで物語を終わらせてくれたのだ。


 しかし当時の私は親元から離れたばかりの世間知らずな少年で、お伽噺の続きをせがむ幼子のように食いさがった。

 もっと聞かせてほしい。彼について知りたいことがまだまだある。

 たとえば世界を救ったときの話を。

 はたまた世界を滅ぼしかけてしまったときの話を。

 すると司書の先生は困ったような笑みを見せ、それからこう言った。


「勤勉な学生の頼みとあれば、断るわけにはいかないな。門限には遅れると寮に連絡しておくとして、さっきのお話の続きを語るとしよう。しかし喉が渇いてしまったから一度お茶にしたいのだけど、君もいっしょにどうだい」


 私が瞳をきらきらとさせてうなずいたのは、あえて語る必要はないだろう。

 司書の先生はさっそく宙を舞う紙にペンを走らせて寮宛に送ったあと、第三図書室の奥へと招きいれてくれた。

 彼はいかにも魔法使いらしく、紅茶の入ったポッドや陶磁のカップを操ってお茶会の準備をはじめると、ひらひらと踊る茶器に見とれていた私をストンと椅子に座らせる。


「ぼくとしてもひさしぶりのお客さまだから、ぜひとも歓迎したいところなのさ。前に生徒と話したのはいつだったろう? 長く生きていると、時間の感覚がおかしくなるからいけないよ」

 

 その言葉を聞いた私は、ひとつ気になっていたことをたずねてみた。

 もしかして貴方は、クラウン・ロッドの物語に出てきたハーレイ先生なのですか、と。

 すると司書の先生は大きな笑い声をあげて、こう言ったのだ。


「あのひとはずいぶんと前にこの世を去られたよ。ぼくがあとを引き継いだのはまあ、ちょっとした気まぐれのようなものかなあ。……そうだ。お茶うけもどうぞ。実は最近、お菓子作りにハマっていてね」


 司書の先生はそう言うなり魔法で、甘い香りのするバスケットをテーブルのうえにひらひらと漂わせる。

 しかしそこでいきなり黒い影が横切って――中に盛られていたお菓子を奪ってしまった。

 何事かと思って私がまじまじと見つめると、小さな猫がじろりと睨んでくる。


「油断も隙もないにゃ。マカロンを盗もうとするとは、近ごろのガキはなっておらぬ」

「あのねえ、ぼくはこの子にあげようとしていたの!!」


 司書の先生はそう言ったあと、呆気にとられている私を見てため息を吐く。

 それから照れたような笑みを浮かべ、可愛らしい猫の名前を教えてくれた。


 だからもし君がクラウン・ロッドに憧れて、魔法学園の門戸を叩いたのなら――ぜひ一度、校舎のどこかにある図書室に足を運んでみるといい。

 そこでは優しい司書の先生が猫の使い魔と静かに暮らしていて、今や伝説となった少年の物語について話してくれるはずだ。


 まるで実際に見てきたかのように。

 あるいは本当に、そうだったのかもしれない。 



(了)


これにて一旦の完結となります。

 機会があれば物語の続きで、もしくは新作でお会いしましょう。

 最後まで読んでいただき、まことにありがとうございました。


 ※続きを書く場合このエピローグは非公開とし、第四章ラストからあらためてスタートするかたちになりますのでご理解ください。

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