表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくの猫は破壊神 〜魔法学園の落ちこぼれ、最強の使い魔を復活させて成り上がる〜  作者: 芹沢政信
四章 ぼくが君を助けるために、王都の上空でドラゴンと戦う話
40/44

4-7 空中決戦

 オーサの言葉はどこまでも冷静で、だからこそぼくの胸を残酷なまでに締めつけてくる。そのうえ普段は横暴なくせに、こんなときにかぎって優しくて、


「すまぬ。オーサはまた、お前に与えることができなんだ」

「なんで……君が謝るのさ!!」

「しかし今は、迷っている時間さえなかろう。あの娘については自らの行動が招いた結果とも言えるが、王都の民にかぎってはただ巻き込まれただけ。失うものの大きさを考えても、地上の被害を食い止めるべきにゃ」

「待って、待ってよ!! それが正しい選択だっていうのは……」


 あんまりじゃないか。

 守りたくて、救いたくて、そのための力があるのに。

 ベル先輩を、見捨てなくちゃいけないなんて。

 エーヴドゥルカめがけて箒を飛ばしながら、ぼくが非情な決断を迫られる中――ふいに横から、馴染みのある声が響く。


「ちょっと目を離した隙にまた泣いていやがるし。お前も成長したなと感心したのによ」

「……ガードナー!?」


 漆黒の絨毯が颯爽と飛んできて、ぼくの真横につけてくる。

 ガードナーは遠くに見えるエーヴドゥルカをあごでしゃくると、


「王都の魔法使いたちに知らせておいたから、じきに大編成を組んで討伐に乗りだすぞ。それまでの間、地上の被害を食い止めるのが俺のお役目さ」

「じゃあ君まで……ベル先輩のことを見捨てるの?」

「そりゃあ俺はあの女がどうなろうと知ったことじゃないからな。ただお前はそのかぎりじゃないだろうし、助けたいのなら好きにすりゃいい」


 そして親友は、誰よりも頼りになる天才は、シュレーターを駆っていたころのハクラム師みたいな顔で、ぼくにこう言った。


「ちょうどいい機会じゃないか。空で暴れているドラゴンを退治して、ついでにお姫さまを救ってやれば――俺たちがドブネズミじゃないってことを、あいつらだって認めるしかない」


 ガードナーは眼下に広がる街並みを、そこにいるはずの群衆をちらりと見たあと、笑いながら同意を求めてくる。

 ぼくとオーサだけじゃ手が足りないけど、


「君がいるなら、両方とも救えるよね」

「ふん、せいぜいオーサのうしろ足を引っぱらぬことにゃ」

「言ってろ、デブ猫」 


 物騒きわまりない言葉を吐いたあと、ガードナーはシュレーターをぐんと加速させる。オーサがムッとしたように毛を逆立てるものの、一応は我慢してくれたらしい。

 はるか先を見すえると、深紅の朽竜が再び無数の火の玉を生みだそうとしていた。 

 だからぼくも親友の背中を追いかけて、最後の戦いに向かう。

 


 ◇



『緊急事態発生! 王都上空に突如、野生のドラゴンが出現! 暁の魔女団カヴンによる破壊工作の可能性あり! 現在は解説のヒルズバック卿含め、王都の魔法使いが編成を組んで対処に向かっています! レース観戦中の皆さまはただちに安全な場所まで避難してください! くり返します! 緊急事態――』


 混乱によって中断していたレースの実況が、避難勧告となって響き渡る。

 ドラゴン討伐となると準備に時間がかかるのか、ほかの魔法使いが飛んでくる気配はないものの――地上の避難態勢が整ったのなら、間もなく討伐部隊がやってくるだろう。

 彼らはきっと容赦がない。

 ベル先輩を助けるなら、ぼくらしかいない今が最後のチャンスだ。  


「王都を統べる母なる川よ! 不浄なる炎を流麗たる衣で包みたまえ! ――架水陣!!」


 矢のような速さで滑空したガードナーが、市街区の川から水を汲んで魔法の幕を作る。上空から降りそそぐ火の玉はぶ厚い水と衝突して霧と化し、間近でその雄姿を見ていた群衆から歓声があがる。

 一方のぼくらは迫りくる火の玉をオーサの障壁で消し飛ばしながら、加速したままの勢いで強化した魔法を放つ。


「――唸れ!! 飛石弾!!」

「グ……グオオオオオオオオオオッ!!」


 今度の衝撃波は右翼に命中し、エーヴドゥルカの絶叫が響きわたる。

 しかし朽ちた亡骸のわりに表皮が硬いのか、動きが鈍るほどの傷を負った様子はない。


「仕方ない、この調子で追撃にゃ!!」

「わかった……って、ガードナー!?」

「お前に手柄をひとり占めされたくないからな、隙あらば俺も参加するぜ!!」


 そう宣言した親友はシュレーターをくるりと旋回させて、衝撃波を受けたばかりのエーヴドゥルカの翼に漆黒の杭を打ちこんでいく。

 あれはハクラム師もよく使っていたという、鈍化の効果が込められた魔法道具だ。

 ぼくらと合流するまでの間にそんなものまで用意してきたなんて、いちいち抜けめのない親友だ。

 

「おっと悪い、やりすぎたかな!! いやいやこれは……」

「余裕をかましておる場合か!! あやつ、また火の玉をぶちこんできおるぞ!!」

「グオオオオオッ!! オオオオオオオッッ!!!!!」


 追いつめられた朽竜は空を真っ赤に染めるほどの苛烈さで、今までとは比べようもないほど膨大な数の火の玉を解き放とうとしている。

 さすがのガードナーも焦った様子で、地上の被害を食い止めるべく川のほうに戻っていく。

 それでも優秀な親友のことだから、あっちは任せておいて大丈夫だろうし――エーヴドゥルカが全力を出した今だからこそ、狙い撃つ隙だってあるはずだ。


「ちょっ……ちょっ……お前にゃあ!! 防御を担うとは言ったが!!」

「信じているから、君のこと!!」

「うにゃああ!! マカロンだけでは割にあわぬっ!!!」


 わたわたしながら障壁を作ろうとするオーサの文句を聞き流しつつ、ぼくは無謀にも嵐みたいな火の玉の群れに突っ込んでいく。

 予想どおり全力で攻撃した直後、さらにはガードナーが打ちこんだ杭の効果もあってか、エーヴドゥルカの動きが鈍くなっている。

 朽ちた表皮が見ためよりずっと硬いのもわかったし、ベル先輩が囚われているであろう胸の部分を狙っても貫通することはないはずだ。


「我が身に満ちる創世の力、世界を変える波紋となりて万物を貫く――っ!!」


 腰に引っかけていた封珠の杖を手に持ち替えて、ここぞとばかりに充填した魔力を解放する。

 そして最大に強化した魔法を、真っ赤に燃える朽竜めがけてぶっぱなす。


「唸れ!! ――秘石弾ッッ!!!」

「グオオオオオオアアアアアオオオォオンッ!!!」


 エーヴドゥルカが轟くほどの苦悶の叫びをあげ、朽ちた表皮が衝撃波によって穿たれる。砕け散った破片がパラパラと空を舞い、露出した胸部の間から茨のような筋に埋もれた少女がちらりとのぞく。

 その姿に気づいた瞬間、たまらず声を張りあげて叫ぶ。


「ベル先輩ッ!! ぼくが今、助けるから!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ